▲嗅覚で呼び起こされる記憶は、視覚や触覚で呼び起こされる記憶よりも感情を伴うことが多いといわれている ▲嗅覚で呼び起こされる記憶は、視覚や触覚で呼び起こされる記憶よりも感情を伴うことが多いといわれている

記憶を呼び戻すプルースト効果とは

久しぶりに実家の車に乗ったら、なんだか懐かしいニオイが鼻孔をくすぐった。その瞬間にまざまざと甦る子供の頃の懐かしい思い出。そういえば、当時は車に乗るたびにワクワクしていたな~。

実はこの現象には「プルースト効果」という名前があることを知っているだろうか。香りがきっかけになり幼少時の記憶が甦る描写のある小説『失われた時を求めて』の作者、マルセル・プルーストの名から名付けられたという。

心理カウンセラーの五百田達成氏によると「五感の中でも嗅覚は原始的な感覚で、感情を強く揺さぶる」とのこと。

実は、脳の中でニオイを司る大脳皮質辺縁系は、人として脳が高度に進化する前である猿の時代からある原始的な部位。ニオイによって敵や味方を判別したり、食料が腐っていないか、毒ではないかなどを判断したりする、生死にかかわる重要な器官だったのだろう。

▲乳児は視覚や聴覚よりも早い段階で嗅覚が発達しており、大人よりもニオイを嗅ぎ取ることに優れている ▲乳児は視覚や聴覚よりも早い段階で嗅覚が発達しており、大人よりもニオイを嗅ぎ取ることに優れている

そして、この大脳皮質辺縁系は嗅覚だけでなく、記憶や情動・感情も司っている。これらが近い場所に存在することで、ニオイには記憶や感情を強く呼び起こす作用があるといわれているのだ。

ちなみに、視覚や聴覚などを処理するのは、脳の進化によって生まれた大脳皮質。視床を経て、整理された情報となり大脳皮質の知覚野に到達する。一方、嗅覚は大脳皮質辺縁系に直接届く。このことも、感情を伴って記憶を呼び起こすことに関係しているという説もある。

女子ウケを狙うなら、森林のようなグリーン系の香り

そんな効果のあるニオイだが、記憶を甦らせるだけでなく、集中力を高めたり、リラックスさせたりする効果もあるのはよく知られていること。これを車にも上手く活用したいなぁ。車用の芳香剤を上手く使えば、彼女や奥さんからの評価も上がるかも。

「女性ウケがいい香りなら、森林の香りなどのグリーン系がオススメです。リラックス効果もあるので、運転中の自分も落ち着くことができます。逆に男性が好むムスクなどの強い香りは、女性ウケはあまりよくありません。最も悪いのは、いかにも女性が使っているような香水の香り。他の女性の影を感じさせてしまっては台無しです(笑)」

もちろん、いくら良い香りでも過ぎたるは及ばざるが如し。香りで飾りすぎると、女々しい印象を与えてしまうこともあるので注意が必要だ。

【取材協力】
五百田達成(いおた たつなり)
作家・心理カウンセラー。「コミュニケーション心理」「社会変化と男女関係」を主なテーマに、「情報の翻訳家」として執筆・講演。「スッキリ!!」(日本テレビ系)レギュラーコメンテーターをはじめテレビ出演多数。最新刊は「『察しない男』と『説明しない女』のモメない会話術」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

▲こちらが五百田達成先生。モットーは「大人でも知らないことを、子どもでもわかる言葉で」。25万部を超える「察しない男 説明しない女」シリーズ他、著書多数 ▲こちらが五百田達成先生。モットーは「大人でも知らないことを、子どもでもわかる言葉で」。25万部を超える「察しない男 説明しない女」シリーズ他、著書多数
text/コージー林田