▲『ウォールストリートジャーナル』のIT関連特集「CIOジャーナル」によるインタビューの様子。右がグーグルの技術部門を率いるレイ・カーツワイル氏 ▲『ウォールストリートジャーナル』のIT関連特集「CIOジャーナル」によるインタビューの様子。右がグーグルの技術部門を率いるレイ・カーツワイル氏

「自動車」という概念が変わるのも、もう目の前の話!?

「自動運転」という言葉の響きはどことなくSFチックに聞こえるかもしれません。でも、実はもう目の前の技術なんです。先々月開催された「SAE International(自動車技術者協会)」で、グーグルの技術部門を率いるレイ・カーツワイル氏が印象的なスピーチをしました。

カーツワイル氏はアメリカを代表する発明家であり、実業家であり、未来の技術を語るフューチャリストです。人工知能の権威としても知られ、『ウォールストリートジャーナル』のIT関連特集「CIOジャーナル」にもインタビューされるような著名な人物です。

そんな彼が「まだグーグル社としては自動運転車両を製品として投入するには至っていない」と付け加えつつも「自動運転はもはや避けて通れない自動車産業における革命だ」と断言しているんです。ええ、つまりはドライバー要らずの世の中が目の前に差し迫っているのでしょう。

最近では衝突安全ブレーキが普通の乗用車にも普及し始めていますが、一部の高級車では追従型クルーズコントロール、レーンキープアシスト、衝突回避技術に付随するブレーキ制御などがパッケージ化され、すでにほぼ自動運転技術の土台は揃っているんです。センサーやAI(人工知能)技術の進歩、そして部品としての値下がりも目の前、ということです。

まったくもって推奨はしませんが、YouTubeにはM・ベンツ Sクラスで“半”自動運転を試みているユーザーの動画もアップされているほどです。現在、自動運転機能は付与されていませんが、前述した追従型クルーズコントロール、レーンキープアシスト、衝突回避技術に付随するブレーキ制御を用いて高速道路巡航を車に託したユーザーが映し出されています。

▲おもり代わりの缶ジュースでステアリングホイールに負荷をかけ、追従型クルーズコントロールとレーンキープアシストで半自動運転。決して真似をしないようお願いします ▲おもり代わりの缶ジュースでステアリングホイールに負荷をかけ、追従型クルーズコントロールとレーンキープアシストで半自動運転。決して真似をしないようお願いします

またカーツワイル氏は「自動運転車両が製品化されても交通事故はゼロにはならないだろう」とも予測。「稀に発生するであろう自動運転車両の事故はセンセーショナルに取り上げられようが、交通事故の絶対数は大幅に削減される」とも語っています。

気になるのは、カーシェアリング増加の話です。カーツワイル氏によると「自動運転の普及により、自動車は今までとは異なる存在になる」そうです。もはや所有物としての自動車というスタンスから“インフラ”という存在になるのでしょうか? グーグルが本気で参画しようとしているくらいですから、自動車産業に迫りくる大変革は間違いありません。

自動運転は20世紀初頭からSF話に登場している話でしたし、自動車メーカーが開発に乗り出したのは1980年代から、です。最近はほぼ完成形の自動運転車両も公開されてきていますし、開発段階における終盤フェーズと言えるのかもしれません。自分で運転できるうちに、好きな車に乗っておきたいものです……。

text/古賀貴司(自動車王国)