トヨタ ハイラックス

【連載:どんなクルマと、どんな時間を。】
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?

俺のスタイルに合う車は、ハイラックスしかない

2017年9月、約13年ぶりに日本市場での販売が復活した、ピックアップトラックのトヨタ ハイラックス。

ピックアップトラックは日本においてニッチな需要があるのみだが、アメリカやアジア諸国などでは多くの人が選ぶ、人気のカテゴリーだ。

スノーリゾートとして全国的に有名な新潟県湯沢町で出会った、プロスノーボーダーの関口敬さん。

現在の愛車は、1997年にデビューした通算6代目となるハイラックスだ。

ハイラックスには後部座席が用意される「ダブルキャブ」、2シーターで可能な限り荷台を広くした「シングルキャブ」、そして関口さんが乗る2シーターながら前席後方に荷物などがおけるスペースが用意された「エクストラキャブ」が存在。

関口さんは現在33歳。19歳でスノーボードのプロ資格を取得し、数々のコンペテションに参戦。

並行して専門誌や映像でライディングを表現するように。その後、フィールドはバックカントリーへと広がっていった。

関口さんは、車で少し走るだけでいくつものゲレンデがあるという、スノーボーダーにとって恵まれた環境で生まれ育った。

しばらくは実家の車に不満なく乗っていたが、やがて自分の車を手に入れたいと思うように。

「俺はトヨタが好きで、最初はランクルのようなSUVに乗りたいと思っていました。でも、自分のスノーボードでの動きが変わってきて、そこにスノーモービルが加わった。選ぶ車は自然とハイラックスに決まりました」

トヨタ ハイラックス▲プロスノーボーダーとして活躍する関口さんの愛車は、こだわりぬいて見つけたエクストラキャブのハイラックス

関口さんは時に、一般のスノーボーダーだと遭難してしまいそうな雪山へ赴き、そこでしか撮ることができない映像を撮影することがある。

プロスノーボーダーだからこそ、立ち入ることが許されている場所だ。

当然リフトなどあるはずがなく、スノーシューを履き、ボードをかつぎながら数時間かけて山を登っていく。ポイントに着く頃には、体力を著しく消耗していることが多い。

その点、スノーモービルで山の中に入っていければ体力を温存することができ、よりハードなポイントにアタックできるのだという。

「スノーモービルを運ぶ方法は2つ。ハイラックスのようなピックアップトラックの荷台に載せるか、けん引するか。俺はフットワークを考えて前者にしました。その後いろいろなピックアップトラックを見たけれど、アメ車だと大きすぎるし、ハイラックス以外の国産車はデザインがイマイチ。必然的にこの型のハイラックス一択で探すことになりました」

ダブルキャブだと荷台が狭くてスノーモービルが載せられない。シングルキャブだと荷台は広いがウエアをはじめ、スノーモービル以外の荷物が積めない。

だから狙うのはエクストラキャブ。エンジンはディーゼルで色は、絶対に黒。ハードな使い方をするのでコンディションにもこだわりたい。

トヨタ ハイラックス▲濡らしたくない荷物は、室内に積むことができる。この大きさがベストなのだという

関口さんは毎日のようにカーセンサーをチェックしていたが、気づけば欲しいと思ってから手に入れるまで、実に3年もの月日を要していた。

「これだ! と思うやつを見つけたときはテンションがあがりましたよ。『ついにきた!』って。走行距離は約12万km。細かいところを直して、乗り出しは200万円くらいだったかな」

しかし3年も車を探していると、途中で気分が盛り下がったり、他の車で妥協したりもしそうだが……。そのようなことはなかったのだろうか。

「そんなことは一切なかったですね。多分、思い描いているスタイルが明確になっていたからだと思う。妥協すると自分が目指すところに行けない。絶対後悔すると分かっていたのでしょうね」

ダメな部分も含めてかわいいと思える

ハイラックスを手に入れてから、関口さんはスノーモービルが積みやすいように手を加えた。

最初はそのまま積んでみたけれど、タイヤハウスにぶつかってしまうため、荷台を底上げする必要があった。

そして、積み降ろしするときのスロープも必要だったが、関口さんはこれらを全部手作りした。

「YouTubeで検索すると、外国の人が適当に作ったラックとかが出てくるんですよ(笑)。それらを見て、参考にしながら頭の中で設計図を描きました。スロープも長くすれば傾斜は緩やかになるけれど、スノーモービルの重さに耐えられなくなる。短ければ軽いし荷台に積みやすいが、今度は傾斜が急すぎて雪をかけなくなる。ベストなポイントを探すのは苦労しました。今のバランスは完璧です!」

トヨタ ハイラックス▲しっかりとした作りのスロープだが、なんとすべて関口さんの自作なのだという
トヨタ ハイラックス▲スロープを伝って、あっという間にスノーモービルを積み込む

2019-2020のシーズンは雪不足で、拠点にしている湯沢エリアでは満足に滑ることができなかった。

そこで関口さんはスノーモービルを荷台に積み、北海道まで遠征したという。購入後6年間で走行距離は24万kmに達した。

「まだまだ走れると思うけれど、実は買い替えを考えています。探しているのはもちろん同じ型のハイラックスエクストラキャブ。今乗っているのはATで、そこがちょっとネックなんですよね。スノーモービルを積むと重心が高くなるから、一度滑ってしまうと立ち直らせるのは至難の技になると思う。しかも後ろに乗っているのは俺の財産だから、そんなことは絶対に避けたい。そうなると、自分でコントロールしやすいMTの方が、今以上に雪山に負けない車だなと思ったんです」

冬はスノーボード一色だが、オフシーズンはどのように暮らしているのか。

なんと関口さんは、春から秋にかけて、米作りをしているのだという。そして空いた時間は仲間と釣りやバーベキューをしているのだとか。

季節に合わせ、湯沢の豊かな自然を肌で感じながら好きなことを楽しむ。最高に心地いいライフスタイルを、可能な限り続けたいと考えているそうだ。

トヨタ ハイラックス▲季節を感じやすいこ湯沢の地で、自然を感じながら暮らす。それが関口さんのライフスタイルだ

次のハイラックスは、冬は今と同じようにスノーモービルを積む仕様に、そして春~秋はキャンピング仕様にして、いつでも自然の中で過ごせるようにしたいと、すでに構想を膨らませている。

乗り心地は決して良くないし、スピードが出るわけでもない。

「ハイラックスは、普通の人に気軽に勧められる車ではないですね(笑)」と、関口さんは言う。

しかし、そんな出来の悪い部分も含めてかわいく思える。まさに関口さんにとって最高の相棒だ。

これからもハイラックス、そしてスノーモービルを相棒に、関口さんだけが見ることができた景色を、映像を通して我々にシェアしてくれるはずだ。

トヨタ ハイラックス▲関口さんはこれからも2台の相棒とともに、まだ見ぬ絶景を追い求めていくだろう
文/高橋満(ブリッジマン)、写真/柳田由人

トヨタ ハイラックス

関口 敬さんのマイカーレビュー

トヨタ ハイラックス

●購入金額/約200万円
●年間走行距離/約20000㎞
●マイカーの好きなところ/すべて!
●マイカーの愛すべきダメなところ/スピードは出せない……
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/雪山などのハードな所を攻める人

高橋満(たかはしみつる)

自動車ライター

高橋満(BRIDGE MAN)

求人誌編集部、カーセンサー編集部を経てエディター/ライターとして1999年に独立。独立後は自動車の他、 音楽、アウトドアなどをテーマに執筆。得意としているのは人物インタビュー。著名人から一般の方まで、 心の中に深く潜り込んでその人自身も気づいていなかった本音を引き出すことを心がけている。 愛車はフィアット500C by DIESEL