自動車ライター、塩見智さんが軽自動車に約1ヵ月間乗り、東京での軽ライフをリポートする「東京スマート軽ライフ」。高級車が溢れる東京での軽ライフを赤裸々につづっていく。今回はアルトラパン編の第1回。

▲フレンチミントパールメタリックとホワイトの2トーンボディカラーに気恥ずかしさを覚え、受け取って早々と乗り込むリポーター ▲フレンチミントパールメタリックとホワイトの2トーンボディカラーに気恥ずかしさを覚え、受け取って早々と乗り込むリポーター

新しい車を迎えに……待っていたのは淡いブルーのラパン!

新しく東京スマート軽ライフをともにするのは、スズキ アルトラパンだ。ワークスに続いて二度目のアルトとなるが、まるで異なる車だ。新橋のスズキ東京支店へ広報車を借りに行く間、ボディカラーのことを考えていた。考えていたというより心配していた。

スズキはラパンを特に女性専用車だとうたってはいないが、ウサギを意味する車名や姿カタチからして女性を強く意識していることは明らか。ボディカラーも女性が好む色が多い。フレンチミントパールメタリック(CMなどに用いられる、いわゆるコミュ二ケーションカラー)をはじめ、いずれも淡い色合いのグリーン、ピンク、イエローが設定されている。44歳男性として、これらパステル系を乗りこなす自信がない。娘に頼んで貸してもらったようにしか思えない。ボディカラーのラインナップが豊富で、落ち着いた色合いのベージュ、ブラウン、ホワイト、ブルーがかったブラックもあるので、そのどれかだったらうれしいなぁと考えていたのだ。

果たしてスズキのガレージに鎮座していたのは、フレンチミントパールメタリックだった! ルーフはホワイトの2トーンカラー。同行した女性編集者の”オマエガコレニノルノ?”にしか見えない視線が痛い。

▲明るいベージュのインテリアは室内を実際以上に広く見せる効果あり。タント同様ラパンも前席にベンチシートが採用されている。借り出す際にスズキのスタッフから「うちのもシート間に携帯電話を挟むことができると書いておいてください」と言われた。確かにできる。ただタントよりも少し隙間が広いのか、時々落ちた ▲明るいベージュのインテリアは室内を実際以上に広く見せる効果あり。タント同様ラパンも前席にベンチシートが採用されている。借り出す際にスズキのスタッフから「うちのもシート間に携帯電話を挟むことができると書いておいてください」と言われた。確かにできる。ただタントよりも少し隙間が広いのか、時々落ちた

自然吸気エンジンのお手並み拝見

ラパンをテストしようと思ったのは自然吸気エンジンを搭載した軽自動車の実力を知りたかったから。アルトワークス、タントカスタムと150万円級のターボ車を相次いで試乗し、一般道、高速道ともに実用上問題ない動力性能を備えていることがわかったが、自然吸気エンジン搭載モデルはどうか確かめたかった。自然吸気エンジンを搭載するモデルは多数あるが、ラパンは自然吸気エンジン専用で、アルトと同じ軽量プラットフォームが使われていて車重680kgに抑えられているので、限られたエンジンパワー(最高出力52ps、最大トルク6.4kgm)でもそこそこ走ってくれるんじゃないかと期待したからだ。

すでにメディア試乗会に参加したときにそこそこ走るのは確認できているのだが、メーカーが(メディアが好印象をもつよう)設定したルートではなく、いやというほどストップ&ゴーを繰り返し、渋滞がひどく、一方で自動車専用道路での流れは速いという過酷な環境の東京でどういう挙動を見せるのかをチェックしたかった。

それにしても東京は狭いくせに皆せっかちで、あちこちで高価な車同士によるシグナルグランプリが繰り広げられている(ような気がする)。一方で、帰省したときなどに田舎道で車を走らせていると、壊れてんの? と思うほどゆっくり走る軽トラがいてイライラしてしまうが、ふと我に返ると、これでも歩くよりはずいぶん速いし、飛ばせば事故のリスクは増えるし、ガソリンも余計に消費する。飛ばしに飛ばして遅い車を引き離したつもりでも、あっさり次の信号待ちで追いつかれてしまうのに、どうして東京では皆あれほど急ぐんだろうと不思議に思えてくる。

ラパンに話を戻す。車を受け取って1時間ほど走らせてまず感じたのは静かさ。ラパンがアルトより数十キロ重いのは、遮音材が多めに使われているからだという。そのかいあって、アルトよりエンジン音の侵入が明らかに少ない。ロードノイズもしかり。乗り心地はグッド。足回りのセッティングがアルトワークス、タントカスタムよりも明らかにソフトなうえに、シートのクッションもソフトなので、ふわふわと角の取れた乗り心地に終始する。

肝心の、東京をスマートに走らせるのに十分な動力性能があるかどうかについては次回のご報告。

▲奇をてらわないオーソドックスなスタイリング。シックなボディカラーであれば男性が乗っても似合うのではないか。フロントバンパーの下端から前後フェンダーアーチにかけて黒い樹脂パーツが使われ、タイヤを大きく見せる効果を得ている ▲奇をてらわないオーソドックスなスタイリング。シックなボディカラーであれば男性が乗っても似合うのではないか。フロントバンパーの下端から前後フェンダーアーチにかけて黒い樹脂パーツが使われ、タイヤを大きく見せる効果を得ている


【筆者プロフィール】
1972年、岡山県生まれ。自動車雑誌編集部を経て、フリーランスの自動車ライターへ。軽自動車好き。SUV好き。「カーセンサーnet」をはじめ、「GQ Japan」「GOETHE」「webCG」「carview!」「ゴルフダイジェストオンライン」などにて執筆中。

text/塩見智
photo/篠原晃一