A邸・箱入り猛牛の棲む家+城南建設 設計管理課|EDGE HOUSE

おもてなし感満載のA邸はファイティングブルがホスト役

竹林に造られたジャグジー、庭に常設されたバーベキューガーデン…。A邸には、愛車のためのガレージだけではなく大切な友人と楽しい時間を過ごすためのこだわりが施されていた

大切なゲストを迎えるためのホスピタリティを充実

訪れたA邸は東京都下、静かな住宅街に位置し豊かな自然に恵まれている。家の前には幹線道路が通り交通の便も良好だ。交通量が多い道路ゆえ、勢い多くの人の目に入る。それでなくとも人目を引くこのA邸は、周囲ではかなり有名な存在らしい。

街道に面して設けられた門には猛牛のイラストが。侵入者を拒むための抑止効果を見込んでのものではなく、これはAさんがこよなく愛するランボルギーニのシンボルマーク。これだけで、街道を行く人から「ほう…」という存在となっているようだ。

門から建物までは約30mセットバックしているので、街道の騒音は気になるレベルではない。また、このスペースには6台の駐車が可能だから、来客の多いAさんにとっては一石二鳥というわけだ。

建物を正面から見ると、赤を中心に黒と白のカラーリングで構成されている。赤は愛車ランボルギーニ・カウンタック・アニバーサリーを意識してのもの。黒と白は、その赤を本来の色以上に際立たせるためのコントラストとなっている。とくにカウンタックが格納されるガレージ周辺は赤が強調され、訪れる人の興味をいやが上にもそそるデザインである。

1階はガレージとホビールーム、さらにA夫人の仕事場としての音楽レッスンルーム、約60畳という広大なリビングルームで構成。2階は主にゲストルームが占めている。

設計は、城南建設という建築会社。知り合いである黒羽社長が設計部を率い担当した。今回は、いわゆる建築家がデザインした家ではないが、もともとAさんが自宅を建てるための土地を探す際に依頼。ロケーションをはじめとする条件に合致した土地が見つかり、同時に設計も依頼したという経緯だ。

間取りに関しては、Aさんが方眼紙に自分のイメージを書いて伝えたという。その具体的なオーダーを受けて提案したファーストプランは、ほぼ希望を満たしており一発でOKとなった。さらにAさんは、「このサイズの住宅で総檜造りに挑戦したい」という設計者の熱意やセンスにも共感し、全面的に任せる事になったそうだ。

そんなエピソードをもつA邸、なかでもAさんがこだわり抜いたガレージには、「死ぬまで手放さない」と惚れ込んでいるランボルギーニ・カウンタック・アニバーサリーが収められている。Aさんがこれまでに所有した車は60台以上。最初の輸入車はロータス・ヨーロッパというから、まさにスーパーカー世代。

その後「スーパーカーの頂点」というカウンタックを今から20年前に入手してからは、他のスーパースポーツにはまったく魅力を感じなくなってしまったという。もちろんガレージ自体は、カウンタックのための空間として設計を依頼。

「狭すぎず広すぎず。カウンタックがいちばん美しく見える空間を演出してほしい」というのがAさんの希望。さらに、ガレージの機能として、オイル交換などのメンテナンスをするためにピットも設けられるなど本格的だ。

実はこのガレージ、カウンタックのコンディションを保つために24時間365日、除湿が行われている。そのため内外装はまさにコンクールコンディション。イベントなどの展示依頼が多いというのもうなずける。

そのガレージをガラス越しに眺めるホビールームも、Aさんの希望のひとつ。4~5人が過ごせる空間で、気の許せる仲間たちとの車談義は、Aさんにとって格別の時間だという。

内装については、インテリア施工の専門家であるAさんが自ら全面的に行った。ユニークなのは、壁に床材であるタイルを使用しているという点。これは、Aさんの愛猫が引っ掻いてしまうことを考慮しての処置とのこと。

また、木造のため室内の梁や柱は通常の5倍のサイズの特注木材を使用している。これにダークミラーを貼ることにより室内の統一感を演出、A邸の外観も内装も、これが木造住宅であるとわかるところが一切見当たらないのが特徴だ。

すでに4年が経過しているが、内外ともに竣工直後のような美しさを保っている。外壁に光触媒塗料を使用していることなどもその理由だろうが、それよりもAさんの細かいメンテナンスによるところが大きいようだ。

たとえば庭に設けられたバーベキューガーデンでは、取材前日もパーティが催されたという。しかし、それをうかがわせる跡は隅々まで目をやってもどこにもなく、丁寧に整えられていた。

今後、5年10年経っても、A邸はいつまでも変わらず威風堂々とした佇まいを保っていくことだろう。もちろん、一生手放すことのない愛車のコンディションも。

間取り図|EDGE HOUSE

「A邸・箱入り猛牛の棲む家」
建築家:城南建設 設計管理課

tel.042-704-7333
構造:木造 敷地面積:540.88㎡
建築面積:204.63㎡ 延床面積:342.38㎡
設計・監理:城南建設株式会社

文・菊谷 聡 text / KIKUTANI Satoshi
写真・高木博史 photos / TAKAGI Hiroshi

ガレージ1|EDGE HOUSE

カウンタックのために設計されたジャストサイズの空間と、寝板を使用することを前提とした約40cmという深さのピットを備える

ガレージ2|EDGE HOUSE

整備もしているとは思えないほど美しく整えられたガレージ。オレンジの部分はサンシェード。開放すれば十分な自然光が注ぎ込む

正面玄関ホール|EDGE HOUSE

正面玄関を入ると右手にガレージ、その後方にホビールームを備える。すべての動線で、視界にカウンタックが入る

リビングルーム|EDGE HOUSE

正面玄関を入り左手にリビングルーム。もちろん、この空間からもガラス越しに愛車を眺めることができる