タクシーを利用すると、たまに「シートベルトをお締めください」という音声が流れる車がある。たまたま乗る機会があったので、運転手さんに音声の効果を尋ねると、「締めないお客さんも多い」とのこと。ちなみに後部座席のシートベルト着用は2008年から義務付けられている。

義務化されて5年で、着用率はどの程度まで浸透したのか。JAFと警察庁が、10月1日(火)~10月10日(木)までの間に合同で実施した「シートベルト着用状況全国調査」の結果を見てみよう。

全国883箇所で調査した結果によると、後部座席のシートベルト着用率は、一般道路が35.1%、高速道路が68.2%となった。義務化される前までの着用率は、一般道で6.9~8.8%(2003~2007年)、高速道路で9.8~13.5%(2003~2007年)だったので、それに比べれば大幅に上昇している。

義務化された2008年には、一般道で30.8%、高速道路で62.5%に急上昇、その後は、毎年わずかに上昇し続けており、今年が最も高い着用率となった。

とはいえ、運転席の着用率は一般道路では98.0%、高速道路等では99.4%とかなり高い数字。これに比べると大幅に低い着用率と言わざるを得ない。

なかには、事故が起きたときに、運転席よりも後部座席のほうが安全だと思いシートベルトをしていない人がいるかもしれないが、それは大きな間違いだ。JAFでは、後部座席でシートベルトをしていない場合の3つの危険性を警鐘している。

1.車内の構造物(ピラーやシートなど)に激突し、自らが傷害を負う危険性
2.運転者や助手席同乗者へぶつかり、危害を加える危険性
3.窓などから車外に放出される危険性

これら、3つの要因などもあり、後部座席でシートベルトを着用していないときの致死率は、着用時の2.7倍にも上るという(警察庁資料より)。

後部座席のシートベルト未着用は、高速道路では取締りがあり、運転手に違反点数1点が科せられる。一方で一般道での違反には処分はなく、これも一般道での着用率低下の一因になっているのかもしれない。

シートベルト非着用による被害の拡大は被害者の過失とされるため、万が一被害に遭った時、損害賠償等で十分な補償が受けられなくなる可能性もあるとのこと。事故は自分がどんなに気をつけていても避けられないときがある。万が一のことを考えて、後部座席でもシートベルトを着用する習慣を身につけたい。

一般道で着用率が最も高いのは鳥取県の48.7%。最も低いのは青森県の19.3%。高速道路では秋田県が最も高く、沖縄県が最も低い

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衝突の勢いで後席の人が前方に投げ出され前席シートと激突すると、前席の人がシートとエアバッグで挟まれ命を奪われることもある

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