北寺尾の家

パナメーラを眺めるためにリフォーム

築25年の家をリフォームしたK邸は、格子を使った和モダンな外観が特徴その邸内には、パナメーラのために作られた広めのビルトインガレージが収められている

和モダンな作りと欧州車による絶妙な空間演出

EDGE HOUSEの長い連載のなかで、今回は初めてリフォーム物件をご紹介する。施主であるKさんが両親とともに暮らした築25年の住宅を、愛車ポルシェパナメーラと過ごすことを最優先に改築したという家である。

「前の家に愛着がありましたので、思い出は残しつつ、でもガラリと雰囲気は変えたい…」

と、Kさんのオーダーは決して容易ではない。設計を担当したのは藤井伸介さん。Kさんとは、友人の務めている工務店の紹介で知り合ったという。この難しいオーダーを藤井さんは、格子を巧みに用いてイメージを変えることに成功した。またKさんが「わが家のシンボルツリー」という柿の木も残し、外観上のアクセントとしている。Kさんが「趣味や生活の話をしているうちに、プランがどんどん出来上がった」というように、リフォームに対する2人のイメージは早期から合致していたようだ。

正面から観察すると、高級料理店のような雰囲気をもっている。事実、何度かお店と間違えられたこともあるという。玄関を入ると、そこは広い三和土とともに葦(よし)で囲われた円柱状の水場が配置されている。外観も内装も、『和』を意識させるクールな空間であることが特徴だ。左手には大きなガラス扉越しに鎮座するパナメーラを見ることができるのだが、和のテイストとのアンバランスさが、かえって家と車の魅力を際立たせている。ガレージは元洋室。三和土周辺は元和室だったという。奥を覗くと、突き当たりの和室まで広大なワンルームという印象だ。

それにしても、全長5m弱、全幅2m弱のパナメーラが楽に収まるビルトインガレージというのも、そう多くはない。乗り降りの際、無造作にドアを開閉しても問題ないぐらいの余裕がある。

「この車ありきで設計をしてもらいました」とKさん。もともと洋室だったとはいえ、リフォームでこれだけ広い空間を確保するのは難しかったのでは?

「木造住宅は、壁や柱があってこそ耐震性などの強度を確保できるのです。それを取り払ってしまうので、リビングとの仕切りとなっている窓にブレースを設けたり、今は愛犬の居場所となっている玄関横も補強のためのスペースです」と藤井さん。

改めて全体像を観察すると、毎年数百の実をつけるという思い出の柿の木が、新しい外観に溶け込んで佇んでいた。

北寺尾の家

北寺尾の家
建築家:藤井伸介建築設計室

tel.045-211-6640 http://homepage3.nifty.com/kenchikuka/
所在地:神奈川県横浜市 主要用途:専用住宅
構造:木造 規模:2階建 敷地面積:205.97㎡ 延床面積:177.85㎡
設計・監理::藤井伸介建築設計室/藤井伸介

文・菊谷 聡 text / KIKUTANI Satoshi
写真・木村博道 photos / KIMURA Hiromichi

北寺尾の家

お風呂好きでもあるKさんのために、中庭に面した位置に開放的なバスルームを配置。扉を開ければ愛車も眺められる

北寺尾の家

間取りは和室、リビングなどに分けられているが、壁で仕切らずに一つの空間としているのが特徴。そのため、ほぼすべての部屋からガレージを見渡せる

北寺尾の家

玄関からは葦で囲われた水場によって、部屋の奥までは見通せない。まるで、高級料理店のエントランスのような雰囲気だ

北寺尾の家

照明器具にもこだわり、ステアリングのような造作の蛍光管を取り付けている。