▲支払総額245万円の94年式ランチア デルタHFインテグラーレ エボルツィオーネⅡがわが家にやってきた。「宇宙でいちばん壊れる車」といううわさもあるが、実際のところは? ▲支払総額245万円の94年式ランチア デルタHFインテグラーレ エボルツィオーネⅡがわが家にやってきた。「宇宙でいちばん壊れる車」といううわさもあるが、実際のところは?

最初の1年、故障したのは前輪ブレーキホースだけ

ランチア デルタHFインテグラーレという車は「とにかく死ぬほど壊れる」といううわさによって世界的に有名だ。しかし、そのうわさって本当なのだろうか? ここに、その真相を確かめるため捨て身で94年式ランチア デルタHFインテグラーレ エボルツィオーネⅡ(以下、デルタEVOⅡ)を買った男がいる。まぁわたしのことなのだが。以下、2年間に及ぶわたしとデルタEVOⅡの「真実」を、皆さんにお伝えしたいと思う。

脚色や誇張は一切抜きで事実のみを語ることをここに誓うが、あいにくズボラな性格なため日誌もつけていないし領収書も保管していない。それゆえ日時や金額はある程度アバウトであることだけ、あらかじめご了承いただきたい。

さて、わたしが94年式ランチア デルタHFインテグラーレEVOⅡを都内の専門店で購入したのは2012年6月のことだ。購入時の走行距離は約6万1800kmで、支払総額は245万円。今となっては希少なフルノーマル車で、ボディの色艶などは非常に良好。ただ走行6.2万kmと、当時のデルタ事情からするとやや多めの走行距離であったため、車両価格はデルタEVOⅡとしては比較的安かった。

▲改造された個体が多いデルタですが、筆者が買ったのは希少なフルノーマルでした ▲改造された個体が多いデルタですが、筆者が買ったのは希少なフルノーマルでした

で、納車となった。

最初のうちは「いつ壊れるんだ?」とビビりながら乗っていた。が、いつまでたっても壊れない。いや、一つだけあったか。電圧計の針が指す数字が妙に低いのである。「すわっ、電気系の故障!」と思った筆者はその足で販売店に駆け込んだが、調査の結果、電気系の故障ではなく「電圧計の誤表示」であることが判明した。古めのイタリア車にはよくあることだ。販売店にその確認をしてもらった際の技術料は0円、つまり無料であった。

その後、納車から4000kmほど走行したため初のエンジンオイル交換を行った。費用は(記憶によれば)フィルター込みで1万円ぐらいだ。

さらに乗る。デルタで取材に行き、デルタで買い物に行った。が、壊れない。全然壊れない。

いや一つだけあったか。壊れたわけではないのだが、下りのタイトコーナーをややハイスピードでクリアしようとすると、タイヤがハウス内側に当たってしまうのだ。スポーツ走行などほとんどしないわたしゆえ、そのまま純正ショックアブソーバーで走り続けることも可能だったが、「せっかくだから」ということで2012年7月、前後4本のショックアブソーバーを純正形状の社外新品に交換した。その費用が、記憶によれば工賃込みで約30万円だ。

その際、前輪ブレーキホースのカバーに亀裂が入っていることと、ブレーキディスクがそろそろ要交換タイミングであることが発覚。結局、ブレーキホースはステンレスメッシュの社外新品に交換し、これが工賃込みで約3万円。前輪ブレーキディスクは研磨済みの中古品に交換し、後輪ディスクは新品のOEM部品に交換した。領収書を紛失したためアバウトな記憶で申し訳ないが、ディスク関係でかかった費用が7万円ほどだ。要するに、オイル交換以外のメンテナンスで初めてかかった費用が約10万円で、「替えなくても良かったけど、いちおう替えといた」というショックアブソーバー代が約30万円、ということだ。

▲純正ショックアブソーバーは致命的な劣化はしていなかったが、スポーティな走行に対応できるよう社外新品に交換。作業はラリー車のスペシャリスト「ストリートライフ」に依頼しました ▲純正ショックアブソーバーは致命的な劣化はしていなかったが、スポーティな走行に対応できるよう社外新品に交換。作業はラリー車のスペシャリスト「ストリートライフ」に依頼しました

車検整備で約30万円。そして180万円にて売却

さらに乗る。相変わらずデルタで取材に行き、なぜかデルタで引越まで行ったが、とにかく壊れない。真夏や残暑の時期でもエアコンはフツーに利く(ややヌルいですけど)。最高気温34℃の日にあえて渋滞に特攻するという実験も行ったが、特に問題は発生しなかった。このあたりの模様はネット通販で買えるDVD「伊達軍曹&MJ参謀長の壊れないぜ!ランチアデルタインテグラーレ」に詳しい。さりげなく宣伝である。

以降、モロモロの季節が足早に過ぎ去った。相変わらずわたしはデルタで取材に行き、買い物に行き、時には当てのないドライブなどもした。気がつけば納車から1年半が経過していた。が、足回りとブレーキ関係の整備を行って以降、やったことといえば「エンジンオイル交換」だけである。それが1回約1万円×4回で、おおむね4万円だ。「路上で止まってしまい救援を呼んだ」というようなことは一度もない。

しかし、2014年1月に車検整備を行った際にはさすがに少々お金がかかった。例によって領収書を紛失しているためアバウトで大変恐縮だが、イタリア車の泣き所であるタイミングベルトと関連部品を交換し、自分では気づいていなかった左後輪ブレーキキャリパーからのオイル漏れを修理し、その他モロモロを合わせての整備費用は合計約30万円であった。

▲車検整備明細の原本は紛失しましたが、当時フェイスブックに上げた画像が残ってました。タイミングベルト交換とキャリパー修理の他は、お約束のドライブシャフトブーツ切れですね ▲車検整備明細の原本は紛失しましたが、当時フェイスブックに上げた画像が残ってました。タイミングベルト交換とキャリパー修理の他は、お約束のドライブシャフトブーツ切れですね

そして今年5月、長く乗ろうと思って車検を通したEVOⅡだが、考えるところあって売却した。売却時の走行距離は約7.8万km、売却額は180万円であった。

2年間の金銭的事実を、今一度サマライズしてみよう。

【支出】
・購入価格:245万円(支払総額)
・エンジンオイル交換:約5万円(約1万円×5回)
・壊れた箇所の整備費用:約40万円(ブレーキ関係約10万円+車検整備約30万円)
・壊れてはいないが交換した部品の費用:約30万円(新品ショックアブソーバー×4本)

【収入】
・車両売却額:180万円

【差し引き】
▲約140万円

この金銭的事実を「安い!」と思うか「やっぱデルタは金がかかるな……」と思うかは人それぞれだろう。また、幸いにしてわたしのデルタEVOⅡは故障らしい故障は一度もせずに2年間という時間と1.6万kmの距離を走ったが、「すべてのデルタがこうである。大丈夫である!」とは言えまい。中にはやはり壊れまくって仕方ないデルタだってあるのだろう。

しかし、すべてのデルタが「1年の大半は入院してるらしいよ」という無責任なうわさに当てはまるわけでは決してないのだ。そのことを踏まえて今後、カーセンサーnetに掲載されている、デルタを含むややレアな輸入車をチェックしていただけたなら幸いだ。

▲「たまたま」という可能性もあるが、結論として大したお金をかけずに2年間フツーに乗ることができた筆者の94年式デルタEVOⅡ。素晴らしい車でありました! ▲「たまたま」という可能性もあるが、結論として大したお金をかけずに2年間フツーに乗ることができた筆者の94年式デルタEVOⅡ。素晴らしい車でありました!

text/伊達軍曹 photo/向後一宏・編集部