キャデラック ATS|ニューモデル試乗

キャデラックは、ドイツプレミアム勢やレクサスは巷にあふれ過ぎていて嫌だ、という感覚のある人にとって大いに満足できるブランドでもある。今後の展開に期待したい

さらなる熟成に期待大

“プレミアムD”は甘くない

「ヨーロッパ車みたいで驚いた」なんてコメントはキャデラックに対して失礼だ。2代目のCTS(現行型)で、キャデラックは既にその領域にあった。一方で、その見当違いの驚きが大方の目を曇らせたのだろうか。「同クラスのジャーマンプレミアムと肩を並べた」という評価は少々過分である。

いくら米自動車史そのものというべき老舗でも、初の挑戦(Dセグ用FR車)で上手くいくほど、“プレミアムD”は甘くない。ベンツ、ビーエムは30年以上の歴史をかけて今に至った。

逆にいうと、わずか2世代でドイツ勢のしっぽを踏んだCTSは異例のデキであったというべきで、それこそ、「さすが、ホンマもんの高級車メーカー」と褒めたい。

美点はデザインとパワー

そう、キャデラックというブランドは本来、「プレミアムのさらにその上」といった存在で、それゆえ、新型ATSの仕上がりは、現状では、ボクの期待値を下回る。客観的にみて、乗り味はDセグの及第点レベルだが、同じFR車のCクラスや3シリーズに比べると、パワートレインやメカニズム、テクノロジーに何ら目新しさがなく、運転感覚も悪くはないが個性に乏しかった。手足にしっとりと馴染む感じとか、何でもいいのだけれど、キャデラックらしい深みが欲しいところ。

美点はパワーとデザイン。今となっては追いかける立場のGMとしては、効果の出しやすいところに資源を集中するほかなかったのかもしれない。

素性の「ダメ」なクルマでは決してない。初代→2代目のCTSと同様に、さらなる熟成が待たれる、というだけだ。左ハンドルのみということもあって、今のままでは、「古き良き時代のガイシャを懐かしんで」という昔からリッチな高齢層のダウンサイジングか、デザインの新しさに目を奪われた層にしかアピールしない。もっとも、販売ボリューム的には、それで十分というヨミかもしれないが…。

縦型フロントヘッドライトとテールランプ、V字型モチーフなどブランド伝統のデザインスタイルを継承しつつ、斬新さや先進性も表現した

縦型フロントヘッドライトとテールランプ、V字型モチーフなどブランド伝統のデザインスタイルを継承しつつ、斬新さや先進性も表現した

各種情報やオーディオなどを統合制御するCUEを採用。8インチタッチディスプレイが備わる

各種情報やオーディオなどを統合制御するCUEを採用。8インチタッチディスプレイが備わる

高効率の新型2L直噴ターボエンジンを搭載。フリクション低減(最大16%)なども高効率化に貢献した

高効率の新型2L直噴ターボエンジンを搭載。フリクション低減(最大16%)なども高効率化に貢献した

SPECIFICATIONS

グレード Luxury
駆動方式 FR
トランスミッション 6AT
全長×全幅×全高(mm) 4680×1805×1415
ホイールベース(mm) 2775
車両重量(kg) 1580
乗車定員(人) 5
エンジン種類 直4DOHCターボ
総排気量(cc) 1998
最高出力[ps/rpm] 203/5500
最大トルク[N・m/rpm] 353/1700-5500
車両本体価格(万円) 439
Tester/西川淳 Photo/向後一宏