4WDを意識させないスムーズさ。安定性の高いオールラウンドセダン

  • ボルボ S60 走り|ニューモデル試乗
  • ボルボ S60 リアスタイル|ニューモデル試乗
コンセプト

シンプルな作りで重量増はわずか70kg

S60に限らずV70やS40、V40もそうだが、ボルボはFWDモデルでもリアの安定性が極めて高い。だから通常のウエット路面程度ならまず怖い思いをすることはないが、雪国のユーザーや都会派でもそういう地域に行くことが多い場合はやはりAWD(オールホイールドライブ)は威力を発揮する。

S60は基本的には前輪駆動。しかし前輪が空転すると即座に後輪に駆動力を分配するパートタイム4WDだ。AWD化による重量増は、旧型では150kgという途方もないものであったが、現在はハルデックス社と共同開発した湿式多板クラッチによるシンプルなシステムの導入で70kgの増加に抑えられている。FWDと比較しても動きに重さは感じず、電子制御により作動と解除が迅速な点も大きな特徴だ。
室内&荷室空間

4WDを感じさせないクーペティックスタイル

後輪駆動用にセンタートンネル内にプロペラシャフトが通るものの室内への影響は少ない。ただし路面を選ばず走破可能なAWD機能を発揮させるのため、地上高を20mm確保した分だけ全高は高くなっている。シャーシ下面のクリアランスが増えた点は、タイヤとホイールアーチの隙間の広さでもわかるが、いわゆる4WDらしい突っ張ったイメージはない。

同じクラスの輸入セダンの中でS60の室内空間は広いほうだ。まるで4ドアクーペのようなスタイルだが、身長175cm程度までなら、後席乗員の頭部、足元スペースとも十分。パッケージの良さは高く評価できる。乗員それぞれを確実にサポートするシートと、高いウエストラインに囲まれたボディ形状で安心感も高い。
  • ボルボ S60 インパネ|ニューモデル試乗
  • ボルボ S60 フロントシート|ニューモデル試乗
ドライブフィール

サイドブレーキで自在に挙動を制御できる

走りは低回転から利きのいいターボの威力でアクセルレスポンスもよく、5気筒の独特なサウンドとともにスタートから流れをリードできる。70kgの重量増加はほとんど感じさせない。特に圧雪とアイスバーンという極めて滑りやすい状況ではAWDの駆動能力の高さを改めて思い知らされた。

滑るまでは通常のFWDと同じだから当然とも言えるが、基本がFWDだけに曲がることに関しても自在。北欧ではイザという時にサイドブレーキでスピンさせて乗員のダメージを最小限にとどめる方法があるが、このAWDもサイドを引いた瞬間に後輪の駆動をカットして車の挙動を積極的に操れる。もともとの安定性の高さがあればこそだが、北欧らしさを感じさせる部分だ。
こんな人にオススメ
AWDは降雪地に行く機会の多い人に向く。それ以外だったらFWDで全く問題ない。欧州で大雨の中を180km/hオーバーという無謀な走りをしてもFWDは極めて安定していた。ただ、イザという時はドライバーの能力以上のサポートをするのがAWD。プレミアムなチョイスだ。
SPECIFICATIONS
グレード S60 AWD
駆動方式 4WD
トランスミッション 5AT
全長×全幅×全高(mm) 4575 x 1815 x 1450
ホイールベース(mm) 2715
車両重量(kg) 1610
乗車定員 5人
エンジン種類 直5DOHCライトプレッシャーターボ
総排気量(cc) 2434
最高出力 147kW(200ps)/6000rpm
最大トルク 285N・m(29.1kg-m)/1800~5000rpm
車両本体価格 495万円
写真:芳賀元昌 文:桂 伸一