アストンマーティン V12ヴァンテージS|ニューモデル試乗

婦女子が喜びそうな快適性やら何やらには目もくれず、動力性能の向上と走りの刺激だけを徹底的に追求したこんな車を選ぶ事が我儘でないわけがない。でも乗る人は、あくまでスタイリッシュであることを忘れないように。だってアストンマーティンなんだから。

本気で攻めたくなる英国流リアルスポーツカー

走りが刺激的でないワケがない

本来はV8エンジンの搭載を前提とした車体に、半ばムリヤリV12を押し込んだV12ヴァンテージSの走りが刺激的でないワケがない。

先代に対して5psと50N・mを上乗せした6L自然吸気エンジンの、例によって反時計回りの回転計の針が4000rpmを超えたあたりから先の回転上昇の一気の勢い、そしてあふれるパワーには笑いが止まらず、むさぼるように全開を繰り返したくなる。

6速MTに代わって搭載された7速スピードシフト3はDレンジでは始終ギクシャクしているけれど変速は速いから、パドルでマニュアル操作した方が気持ちイイ。とにかく乗っている間中、運転に集中して楽しめるという車なのだ。

それだけの動力性能を与えられながら走りが破綻していないのは、優れたシャシーのおかげである。

リアルスポーツカーへと大幅な進化を果たした

大きく重いV12をフロントに積むにも関わらず、操舵応答性はシャープ。サスペンションもハードなのに、イギリス車らしく少ないストロークの中にしなやかさも宿っているおかげで、容易にタイヤが路面から離れたりはしない。このあたり、V8ヴァンテージとはまったくの別物という感すらある。

ゾクゾクするほどのパワーと切れ味鋭いのに安定感も抜群のシャシーを得て、走り全般がグッと磨き上げられたV12ヴァンテージS。

一般道でも楽しいけれど、せっかく足元にはドライグリップ最優先のピレリ Pゼロ・コルサを履くことだし、一度はサーキット走行に臨みたくなる1台である。それはつまり本気で攻められるリアルスポーツカーへと大幅な進化を果たしたということだ。

サスペンションには3ステージ・アダプティブダンピングシステムを、ヴァンテージシリーズとして初めて装備した

サスペンションには3ステージ・アダプティブダンピングシステムを、ヴァンテージシリーズとして初めて装備した

インテリアにはアルカンターラ仕様、カーボンを用いた軽量シートやフェイシアなど多彩なオプションが用意されている

インテリアにはアルカンターラ仕様、カーボンを用いた軽量シートやフェイシアなど多彩なオプションが用意されている

ボッシュの新エンジンマネージメントが採用されている。これにより出力を向上させつつ、よりフラットなトルクカーブが実現される

ボッシュの新エンジンマネージメントが採用されている。これにより出力を向上させつつ、よりフラットなトルクカーブが実現される

SPECIFICATIONS

グレード V12 VANTAGE S
駆動方式 FR
トランスミッション 7SCT
全長×全幅×全高(mm) 4385×2022×1250
ホイールベース(mm) 2600
車両重量(kg) 1665
乗車定員(人) 2
エンジン種類 V12DOHC
総排気量(cc) 5935
最高出力[ps/rpm] 573/6750
最大トルク[N・m/rpm] 620/5750
車両本体価格(万円) 2303.7943
Tester/島下泰久 Photo/大子香山