▲乗り手のファッションはもちろん、迎える相手や行き先、ライフスタイルにまで“特別”を要求する。言ってみれば、車が人を選んでしまうのだ。いいものはイイと、ハッキリ主張できる50歳以上の大人に ▲乗り手のファッションはもちろん、迎える相手や行き先、ライフスタイルにまで“特別”を要求する。言ってみれば、車が人を選んでしまうのだ。いいものはイイと、ハッキリ主張できる50歳以上の大人に

野獣の美女。その価値、数字で語るべからず

目の前に差し出されて、乗っていいぞ! と言われた瞬間に、自分が別人、それも何か特別な人間、になったような気分になる。もちろん、同時に“自分には似つかわしくない”というためらいもあって、そう思わせるあたりがノーブルな英国ハイエンドブランド=ロールスロイスやベントレー、そしてアストンマーティンの個性であったりする。

アストンマーティンの中でも、ヴァンキッシュは、そしてそのネーミングは、やはり特別中の特別だ。どこか、畏れ多い。美女と野獣、ではなく、野獣の美女。

ZF製の8速ATを新たに組み合わせたMY15のヴァンキッシュ。走りの瞬間瞬間の洗練度は大いにアップしたが、鋭い牙と磨いだ爪を隠す猛獣を相手にするような感覚は、まるで失われていない。

クリスタルキーを差し込み、V12のクランキングを聞きながら、その目覚めを待つ一瞬、からして、今やレアな体験だ。

動きだすと、引き締まった筋肉のようなアルミニウムストラクチャーを感知することができる。最新の流行レベルで判ずれば、“ガチガチ”と言っていい乗り心地も、巧妙にまとめられたパッケージングの生む一体感ある走りを味わっているうちに、すっかり忘れてしまうことだろう。路面のすぐ上でノーズが鋭く動いているような感覚が、実にスポーツカーだ。

スーパースポーツ界にあって、600ps以下の数字は、確かに物足りない。けれども、踏み切れない700psよりも、気分はずっといい。

ノスタルジーをモダンに表現する上手さもまた、ブリティッシュハイクラスならではだ。

▲ダンパーも改良、前15%/後35%も固められた。新デザインの10スポーク鍛造アロイホイールを装着 ▲ダンパーも改良、前15%/後35%も固められた。新デザインの10スポーク鍛造アロイホイールを装着
▲前年モデルより10Nm向上。ギア比と最終減速比の変更により最高速は320km/h以上に、燃費も約11%向上 ▲前年モデルより10Nm向上。ギア比と最終減速比の変更により最高速は320km/h以上に、燃費も約11%向上
▲新しいデザイン・トリムカラーも用意された。エンジンマネージメントシステムも最新に ▲新しいデザイン・トリムカラーも用意された。エンジンマネージメントシステムも最新に

【SPECIFICATIONS】
■グレード:VANQUISH ■乗車定員:2名
■エンジン種類:V12DOHC ■総排気量:5935cc
■最高出力:-(576)/6650[kW(ps)/rpm]
■最大トルク:630/5500[N・m/rpm]
■最大トルク:630(-)/5500[N・m(kgf・m)/rpm]
■駆動方式:FR ■トランスミッション:8AT
■全長×全幅×全高:4728×1912×1294(mm) ■ホイールベース:2740mm
■車両重量:1739kg
■JC08モード燃費:-km/L
■車両本体価格:3239.46万円(税込)

text/西川淳 Photo/大子香山、河野敦樹