マラソンランナーと短距離走者の幸せな出会い

  • シトロエン C4 走り|ニューモデル試乗
  • シトロエン C4 エンジン|ニューモデル試乗
  • シトロエン C4 インパネ|ニューモデル試乗
↑写真はC4。1.6Lとしては非常にパワフル。アイドリング振動も少なく、静粛性も高い(左)BMWと共同開発された新エンジンは、従来に比べてパワー・トルクとも1割向上(中)内外装とも大きな変更を受け、インテリアは質感が向上した(右)
マイナーチェンジを受けたC4とC4ピカソに1.6LのNAとターボ、2種類の新エンジンが搭載された。従来に比べNA版はパワー・トルクとも1割向上、ターボは代替された2LよりAT用だと3馬力落ちているものの、トルクは2割増しである。

先進的なデザインや独創的な足回りに比べると、ことエンジンに関してシトロエンに見るべきものは歴史上あまりなかった。かのDSにしても戦前モデルのトラクシオンアヴァンからの流用品だったし、FFのスーパーカーを目指したSMは提携関係にあったマセラティから拝借している。プジョー傘下に入って以降も、ディーゼルはともかくガソリンエンジンについては極めて凡庸なスペックのものを使い続けてきた。ロングツーリング向けと言えば聞こえはいいが、ようは瞬発力に欠けるエンジンであり、それがある意味シトロエンらしさであった。

今回の新エンジンは、そんなシトロエン(正確にはPSA)が、よりによってBMWと共同開発したものである。BMWといえばご存知の通り瞬発力に満ちた、熱いエンジンを作り続けているメーカー。マラソンランナーに短距離走者の心臓を移植するようなものだ。この大手術は果たして吉と出るのだろうか。

エンジンだけでなく車全体の乗り味がより洗練された

  • シトロエン C4ピカソ 走り|ニューモデル試乗
  • シトロエン C4ピカソ 2列目・3列目シート|ニューモデル試乗
  • シトロエン C4ピカソ 助手席・後席専用空調パネル|ニューモデル試乗
↑写真はC4ピカソ。中間加速でのトルク感やスピードの乗りの良さなど、ターボの恩恵は大きく、体感的には2.2Lクラスのエンジンが載っている感じ(左)2列目シートのヘッドレストが少し小さくなっている(中)助手席・後席専用空調パネルなど、人気の独自装備は健在(右)
先に乗ったのは内外装とも大きな変更を受けたC4のNA版。ずいぶん静かになったというのが第一印象。アイドリング振動の少なさは日本車もビックリである。そして注目の走り、1.6Lとしては非常にパワフルでスムーズだ。どちらかというとザラザラしたフィールのプジョーエンジンと対照的に、キメの細かいBMWの血筋を感じさせる回り方をする。足回りもハイドロより薄味だが、フラット感と上下動の収まり方はシトロエンっぽい。ブレーキは踏み始めの減速感の立ち上がりが急で、ここだけ妙にハイドロシトロエンみたいだった。

一方でターボだけが載るC4ピカソも新エンジンの恩恵はやはり大きく、特に中間加速でのトルク感とスピードの乗りの良さに端的だ。2.4Lまではいかないが体感2.2Lクラスのエンジンが載っている印象である。ただしターボラグを感じない代わりに、盛り上がりの点ではNAより裏方色が強い。

両車ともに評判の芳しくなかった4ATは、アクセルをあまり踏まない領域での変速マナーが改善されている。そしてパワフルな新エンジンのおかげで、その領域を使うことが増えた。エンジンだけ突出した感は少なく、車全体の乗り味がより洗練されているのだ。それはつまりこの手術が成功だったということだろう。

SPECIFICATIONS

主要諸元のグレード C4 1.6 C4ピカソ
1.6Tエクスクルーシブ
駆動方式 2WD
トランスミッション 4AT
全長×全幅×全高(mm) 4295×1775×1480 4590×1830×1685
ホイールベース(mm) 2610 2730
車両重量(kg) 1300 1660
乗車定員(人) 5 7
エンジン種類 直4DOHC 直4DOHC+ターボ
総排気量(cc) 1598
最高出力[ps/rpm] 120ps/6000rpm 140ps/5800rpm
最大トルク[kg-m/rpm] 16.3kg-m/4250rpm 24.5kg-m/1400?3500rpm
10・15モード燃費(km/L) 11.4 8.6
ガソリン種類/容量(L) 無鉛プレミアム/60
車両本体価格 269.0万円 377.0万円
(Tester/馬弓良輔[インポートカーセンサー副編集長] Photo/尾形和美)