機能性も広がったフルモデルチェンジ

  • ルノー カングー 走り|ニューモデル試乗
  • ルノー カングー インパネ|ニューモデル試乗
↑先代より一回り大きくなったボディサイズ。カラーは全12色用意されている(左)フランスの郵便局員の要望を取り入れたという特徴的な航空機スタイルのサイドブレーキ。扱いやすさ、耐久性に優れる(右)
なんと12年ぶりのモデルチェンジ。そのブランクを埋めるように、新型カングーは旧型より180㎜長く、155㎜幅広くなり、プラットフォームまでルーテシア用からひとクラス上のメガーヌ用にスイッチした。

ここまでサイズアップしたのは、ヨーロッパでは商用車としても使われていることと関係がある。旧型はユーロパレットと呼ばれる輸送用パレット(1200×800㎜)を積めないことが、後発のライバルに対する欠点だった。それを克服するための拡大だったのだ。

それでもサイズが気になる人は、旧型をひとまず考えから外し、新型をひとクラス上の車と考えてみてはどうだろうか。そうすれば一気に魅力的に思えてくるはずだ。

なにしろ新型は広い。旧型より厚み感がアップした前席は空間の余裕が一気にアップし、後席には大人3人が楽に座れるようになった。旧型では背もたれを倒したあと全体を跳ね上げるという2アクションだった後席の折り畳みが、背もたれを倒すと全体が沈み込むワンタッチになったのも進化のポイント。今度は助手席の背もたれもフラットに倒せるから、ロングボードさえ放り込めるようになった。

それでいて前席頭上の大型トレイは残っているし、ルーフ両脇の航空機風ストレージスペースは、カーテンエアバッグ装備のために後席頭上に移されつつ、こちらも健在。観音開きのリアゲートは、レバー操作で180度オープンできる点まで旧型と同じだ。楽しくなるほど機能を突き詰めた作りはなんら変わっていない。

どこまでも走って行きたくなる 幸せな時間が過ごせる乗り心地

  • ルノー カングー ラゲージスペース|ニューモデル試乗
  • ルノー カングー ストレージスペース|ニューモデル試乗
↑最大2866Lという広大なラゲージ。付属のトノボードは高さ調節が可能(左)頭上の収納スペースは使いやすい位置に変更。床下収納も追加されている(右)
乗り心地も旧型と似ている。街中から高速まで、とにかくまろやかで、幸せな時間がすごせる。でもムダな揺れは一切なく、姿勢はフラットそのもの。直進安定性も抜群だから、どこまでも走って行きたいという気にさせる。

ハンドリングはロールにさえ慣れてしまえば、粘りのあるグリップを生かして予想以上のハイペースをキープできる。この点も旧型譲りだ。エンジンが1.6Lのままなのに対し、ボディは250㎏重くなっているので、加速は必要にして十分なレベル。でもMTを選べば逆に、パワーを使い切って走れる爽快感が味わえる。

新型のもう一つのトピックは価格。旧型より6.8万円しか高くなっていない。本国より安い値づけなのである。幅1.8m級のミニバンが200万円ちょっとで買えるのだから、お買い得感はむしろ強まったんじゃないだろうか。

SPECIFICATIONS

主要諸元のグレード 1.6(AT) 1.6(5MT)
全長×全幅×全高(mm) 4215×1830×1830
車両重量(kg) 1460 1420
エンジン種類 直4DOHC
総排気量(cc) 1598
最高出力[ps/rpm] 105ps/5750rpm
最大トルク[kg-m/rpm] 15.1㎏-m/3750rpm
車両本体価格 299.8万円 219.8万円
(Tester/森口将之 Photo/向後一宏)