▲初心者が乗ってもこの車の本当の価値や良さ、楽しさは理解しにくいかもしれない。できれば500ps以上の車をすでに経験済みで、なおかつウデにある程度自身のある猛者に乗ってもらいたい。ハイレベルな人にこそ沁みる、その良さを分かってもらえると思う ▲初心者が乗ってもこの車の本当の価値や良さ、楽しさは理解しにくいかもしれない。できれば500ps以上の車をすでに経験済みで、なおかつウデにある程度自身のある猛者に乗ってもらいたい。ハイレベルな人にこそ沁みる、その良さを分かってもらえると思う

クラスでイチバンのツウ好み

これは何となくの肌感覚だけれども、直噴過給器付きになったとはいえ直6が復活したM4(旧M3クーペ)は、もっとミーハー的な人気の出方をするかと思いきや、真っ先に飛びついたのはツウ好みの乗り手ばかりだったような気がしてならない。

たとえば、純粋にドライビングファンとハイパフォーマンスの両方を楽しむような、こだわり派だ。そこには、最新のMモデルに対する、はっきりとした信頼の念があったと思う。

もちろん、M4には、そういう人たちの期待を決して裏切らない性能が備わっている。ほとんどターボを感じさせない精緻でNAライクなエンジンフィールから、際立ってかっちりと振る舞うボディ、よく動き隅々まで意思の伝わるシャシー、そして踏めば踏むほどに安心のブレーキフィールまで、M4にはドライビング・ツウを唸らせるキャラクターに満ちている。

つまりこの車には、酸いも甘いも辛いもしょっぱいも、ぜんぶ経験した人であればあるほどに、そのありがたみが分かる仕掛けが施されている。シロウトが乗っても笑顔になれるように、なんて生半可な主張の持ち合わせなどない。徹頭徹尾、プロフェッショナル。

そう考えると、実に安い買い物だと気づく。ふだんは4シリーズのクーペとして気兼ねなく使えたうえに、その気になればサーキットでウデを磨くための良きパートナーにもなる。

たしかに昔からMのターゲットは狭い。AMGに比べると、分かりづらく、うんとマニアックかもしれない。裏返せば、それだけ、実は尖った車である証拠だ。音が足らないなんて、のたまうなかれ。M4は、もっと奥深い。

▲プロペラシャフトなどにCFRPを、エンジンフードなどにはアルミを用いることで、旧型より約80kg軽量化 ▲プロペラシャフトなどにCFRPを、エンジンフードなどにはアルミを用いることで、旧型より約80kg軽量化
▲スポーツシートなどを備えスポーティに。クーペのみにブリッピング機能を備えた6MTもラインナップ ▲スポーツシートなどを備えスポーティに。クーペのみにブリッピング機能を備えた6MTもラインナップ
▲新型エンジンは最高回転数の7600rpmまで衰えることなく吹け上がる高回転型出力特性を実現。0-100km/h加速は4.1秒 ▲新型エンジンは最高回転数の7600rpmまで衰えることなく吹け上がる高回転型出力特性を実現。0-100km/h加速は4.1秒

【SPECIFICATIONS】
■グレード:M4 COUPE ■乗車定員:4名
■エンジン種類:直6DOHCターボ ■総排気量:2979cc
■最高出力:431/7300[ps/rpm]
■最大トルク:550/1850-5500[N・m/rpm]
■駆動方式:FR ■トランスミッション:6MT
■全長×全幅×全高:4685×1870×1385(mm) ■ホイールベース:2810mm
■車両重量:1610kg
■車両本体価格:1075万円(税込)

text/西川淳 photo/向後一宏