エントリーモデルながら高いポテンシャルで走りを楽しめる『up!GTI』
カテゴリー: フォルクスワーゲンの試乗レポート
2018/07/09
発表当初より3ドアにはスポーティなエッセンスを感じていた
2012年、“up!”が日本で発表したときに作りの良さと潔いデザインにとても脅威を感じ、グリルレスを感じさせるフロントまわりは未来のフォルクスワーゲンを予感させた。
デザイナーの“ワルター・デ・シルヴァ”氏も来日するくらい盛り上がった発表会であったのを思い出す。
わずかな時間だったが意見を交わしたときに「5ドアは横から見ると、3ドアとは全く違う柔らかい雰囲気を持ったデザインである」と語った。
そのときの解釈は5ドアは、ホットハッチとは違う実用を狙った戦略であったと思う。圧倒的に3ドアにスポーティなエッセンスを感じていた。
「up!」の3ドアの長いドアはスポーツカー的な雰囲気が漂う。それでいてリアの造形はクーペの造形に近ずけるようにショルダーラインをグッとせり上げ、軽快でスポーツハッチを予感させるデザインである。
だからこそスポーティなモデルを待ち望んでいた。今回発売した「up!」にGTIを追加したと聞いて今回の試乗会は楽しみだった。
技術者としては本当はやりたくなかったのではないかと感じるが、おきて破りの専用タイヤまであつらえた。
開発陣は、ユーザーに最高の乗り心地を提供したいのだな、と感じた。もう最後までやり切ったブラッシュアップである。
3ドアは、とにかくボディの作りはこのクラスの最高峰である。剛性も抜群だ。少々ハードなサスペンションを組み合わせてもしっかりと初期から動くセッティングが可能なはずだ。
実力を試せる箱根での試乗。ヒルクライムもグイグイ上る!
試乗会場は御殿場で行われた。少し足を延ばせば、タイトなコーナーが連続する箱根。スポーツハッチの「up! GTI」にはぴったりなロケーションであるのは言うまでもない。では早速試乗に移る。
内装のクオリティは文句のつけようがない。フォルクスワーゲンのエントリークラスはどこのメーカーも真似できないクオリティだ。本当に勉強になる精度と美しさが兼ね備わった。
エンジンを始動すると思った以上に静かで静粛性は高い。3気筒エンジンは振動面では不利であるがうまく処理している。
乙女峠を抜けて芦ノ湖スカイラインに到達するが、霧が濃いのでゆっくりとしたクルージングでシフトのギア比を確かめながら坂を上っていく。
1Lターボとは思えないトルクでグイグイと上っていく。アクセルのレスポンスも軽快で、流す程度の速度でも十分楽しい。その理由は、エンジンが小排気量でも粘り強いため、忙しいシフトチェンジなしに乗れるからだ。
ホットハッチだからといって、クイックな動きにならない安定感あるスタビリティを確保している。このあたりがさすがフォルクスワーゲンである。
6速MTと1Lターボの組み合わせは、ギア比をクロスレシオにすることが可能であるので、パワーバンドを保ちやすい。クラッチの走り出しの感覚も探りやすく、トルクも安定しているので坂道発進もちょいとサイドブレーキを使えば苦にならない。
路面からのうねりを寛容に受け止め、なおかつ不愉快のない乗り心地を可能にする。コーナーでは進入時に若干ロールさてドライバーに安心感としっかりと路面を捉える効能がある。
それにはショックアブソーバーが初期の応答性から敏感に動かなければならない。質の高いダンパーが使われているということなのだ。
コーナーリングも終始安定して、うねりに対してもステアリングが取られるようなことはない。とてもしっかりとした剛性感だ。ステアリングコラム剛性も高く、路面の衝撃がステアリングホイールに伝わることはない。
ブレーキとアクセルの位置もヒール&トーがしやすく、腕の見せどころになるだろう。
荒々しさは皆無な「up!GTI」だが、エントリーモデルで質と剛性感と正確無比なフィールを体験したいならば、最も熟成されたセッティングだ。
この価値は何台も車を乗り継いでくると一層理解できる。
【SPECIFICATIONS】※試乗車
■グレード:GTI ■乗車定員:4名
■エンジン種類:直列3気筒DOHC+ターボ ■総排気量:999cc
■最高出力:85(116)/5000-5500 [kW(ps)/rpm]
■最大トルク:200(20.4)/2000-3500[N・m(kgf・m)/rpm]
■駆動方式:2WD ■トランスミッション:6MT
■全長x全幅x全高:3630 x 1650 x 1490(mm) ■ホイールベース:2420mm
■ガソリン種類/容量:ハイオク/35(L)
■JC08モード燃費:21.0(㎞/L)
■車両価格:219.9万円(税込)
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