※この記事はカーセンサー関東版38号(2000年10月12日発売)に掲載されていたものをWEB用に再構成したものです

“らしさ”はしっかりと受け継ぎ、スムーズで力強い走りがさらにアップ

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  • トヨタ セルシオ エンジン|ニューモデル試乗
↑欧州仕様の足回りをそのまま採用したeRバージョンは、安定性を重視しながら乗り心地にも配慮した高バランス(左)V型8気筒はそのままに排気量は300cc大きくなって4.3Lに(右)
新しいセルシオは大きな変貌を遂げてきた。前回のフルモデルチェンジではデザインイメージを変更せず、マイナーチェンジで大きく手を加える形になったが、今回のモデルでは革新的であることも高級車の条件として、デザインを大きく変えてきた。旧モデルと比べて、よく見ないとセルシオとわからないくらいだ。

同時にパッケージングにも手が加えられ、ボディの全長を抑えながらホイールベースを延長し、後席の居住空間をゆとりあるものとしている。インテリア回りの雰囲気もかなり変わった印象だ。センターコンソールの部分など、明るい色調の木目パネルが大胆に使われており、高い品質感を表現している。

搭載エンジンはこれまでと同じV型8気筒だが、排気量が300cc大きくなって4.3Lになった。メルセデス・ベンツ SクラスがS430を設定し、次期日産 シーマは4.5Lエンジンを搭載することなども意識したのだろうが、排気量の拡大分は主に排気ガス対策や実用燃費の向上に使われたそうだ。

改めて静かでスムーズな車に仕上げられた3代目

  • トヨタ セルシオ リアスタイル|ニューモデル試乗
  • トヨタ セルシオ インパネ|ニューモデル試乗
↑eRバージョンには225/55R17サイズのタイヤが用意され、足回りのチューニングもヨーロッパ仕様と同じものになる。硬めの乗り味で高い操縦安定性を発揮する(左)大胆に使われた木目パネルが高級車らしい品質感を感じさせる。また、室内色が4色、木目パネル色が2色から選択できる(右)
ゲート式のATレバーをDレンジに入れて走り出すと、すぐにセルシオであることがわかる。静かでスムーズな走りは、初代モデルが一代にして築き上げたセルシオならではの特徴だ。2代目モデルでは静粛性がやや低下したイメージもあったが、今回のモデルでは改めて静かでスムーズな車に仕上げている。

音源に立ち返って対策するという源流主義は受け継がれている。発生を防げない音だけを防音対策で消すことで、5速スーパーECTが2000rpmでこなす100km/hでのクルージング時に、騒音レベルが58dB程度という極めて静かな室内が作られる。

発進からアクセルを踏み込んでいくと、ボディの重さを感じさせない力強い加速フィールであっという間にスピードに乗っていく。排気量の拡大で常用域のトルクが向上したことが、スムーズかつ力強い走りにつながっている。柔らかな乗り心地もセルシオの特徴となるポイントで、A仕様やB仕様に用意される標準のメカサスも、セルシオらしい乗り心地を表現したものだ。ステアリングフィールの柔らかさについてもセルシオの味といえるだろう。

ただ、今回試乗した東北自動車道から八甲田山周辺のワインディングロードを走るようなシーンでは、足回りの柔らかさは必ずしも安心感や安定性にはつながらない面もある。

eRバージョンなら欧州製ライバルにも引けをとらない走りを披露

  • トヨタ セルシオ フロントシート|ニューモデル試乗
  • トヨタ セルシオ リアシート|ニューモデル試乗
↑インテリアセレクションでは本革シートが標準で、このシートは座面から冷気が吹き出すエアシートとなる(左)今回のセルシオで大きく変わった部分の一つが後席。ホイールベースの延長で足元の空間は広々としたものになった(右)
ややスポーティな走りを志向するなら、A仕様とB仕様に用意されるeRバージョンがオススメだ。ヨーロッパ仕様の足回りをそのまま採用したもので、やや硬めの乗り味で高い操縦安定性を発揮する。

ワインディングを走るときの安心感も格段に向上する。硬めの乗り味といっても、荒れた路面や道路の継ぎ目などで不快感を感じるようなものではなく、安定性を重視しながらも乗り心地に配慮した極めてバランスの良い仕様である。これならメルセデス・ベンツやBMWのユーザーでも納得して乗れる。

C仕様には、エアサスペンションが採用され、こちらは電子制御によってノーマルとスポーツを切り換えることが可能。ノーマルの状態では標準のメカサス以上に柔らかい乗り心地を感じさせ、スポーツに切り換えるとeRバージョンほどではないものの、それに近いくらいに安定性を高めた乗り味になる。

新しいセルシオは、走りや操縦安定性を高める方向に向かったといえるだろう。

SPECIFICATIONS

主要諸元のグレード B仕様eRバージョン
駆動方式 2WD
トランスミッション 5AT
全長×全幅×全高(mm) 4995×1830×1490
ホイールベース(mm) 2925
車両重量(kg) 1830
乗車定員(人) 5
エンジン種類 V8DOHC
総排気量(cc) 4292
最高出力[ps/rpm] 280ps/5600rpm
最大トルク[kg-m/rpm] 43.8kg-m/3400rpm
10・15モード燃費(km/L) 8.2
ガソリン種類/容量(L) 無鉛プレミアム/84
車両本体価格 600.0万円

松下 宏の責任採点

コンセプト 4点 取り回し 4点 加速性能 5点 ブレーキ性能 4点
フィニッシュ 5点 操作系の使い勝手 4点 乗り心地 4点 環境対策 5点
前席居住性 4点 ラゲージルーム 5点 操縦安定性 3点 燃費 4点
後席居住性 5点 パワー感 5点 高速安定性 4点 ステータス 5点
内装の質感 5点 トルク感 5点 しっかり感 4点 コストパフォーマンス 3点
得点合計 87/100
(Tester/松下 宏 Photo/渡邉 英昭)