Aクラスセダン ▲ミニバンというと国産メーカーの様々なモデルが思い浮かぶわけですが、あの「メルセデス・ベンツ」もVクラスというミニバンを作っていることをご存じでしょうか? そして1世代前のそれであれば、なんと総額100万円台でも普通に狙えてしまうことを!

総額100万円台で買える「ベンツのミニバン」って正直どうなの?

1台あると何かと便利なのが「ミニバン」。日本でもそれは大人気であるというか、むしろニッポンこそがミニバン大国で、各国産車メーカーから多種多様なミニバンが発売されています。

それはそれでいいわけですが、中には「どうせならちょっと個性的な“輸入ミニバン”に乗りたいかも?」と思っている人もいるかもしれません。

あいにく(?)ヨーロッパ各国はさほどのミニバン大国ではないため種類はやや少ないのですが、もちろん輸入車ブランドにも3列シートのミニバンは用意されています。そして「欧州を代表する自動車メーカー」と言っても過言ではないメルセデス・ベンツにも「Vクラス」というモデルがラインナップされていて、1世代前のそれであれば総額100万円台でフツーに狙える状況になっています。

1世代前のメルセデス・ベンツ Vクラスとはそもそもどんなミニバンで、そして総額100万円台で買えるそれは、中古車としてはどうなんでしょうか?

次章以降、もろもろ研究してみることにしましょう。
 

Aクラスセダン▲人も荷物もたっぷり載せられるミニバンは、あると“世界”が広がるもの。そしてそれが「メルセデスのミニバン」であれば、毎日はよりいっそうステキになる……のかも?

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メルセデス・ベンツ Vクラス(2代目) × 全国
 

モデル概要:大きいが、意外と小回りが利く3列シート車

メルセデス・ベンツ Vクラスは、ドイツのメルセデス・ベンツ社が1990年代から製造販売している6~7人乗りの3列シート車。現在は、2015年に登場した3代目が現行型新車として販売されています。

初代VクラスはVitoというFFの商用車をベースに作られた乗用車でしたが、今回の主題である旧型(2代目)Vクラスは、同じくVitoベースですがFRレイアウトに変更。最高出力218psの3.2L V6エンジンを搭載して2003年11月に発売されました。ただしこのときの車名はVクラスではなく、欧州名と同じ「ビアノ(Viano)」という名前で上陸しています。

ボディサイズは、標準ボディの場合でも全長4755mm×全幅1910mm×全高1930mmというなかなかのもの。乗車定員は7名で、2列目・3列目のシートはすべて独立式です。そしてセカンドシートとサードシートはすべて脱着可能なため、いちおう「多彩なアレンジが可能!」ということになっていました。とはいえ実際はシート単体の重量がかなり重いため(確か20kgぐらいあったはず)、あれをいちいち脱着するのは非現実的でしょう。
 

Aクラスセダン▲2代目メルセデス・ベンツ Vクラス。前期型のフロントマスクはこのようなデザインだった
Aクラスセダン▲運転席まわりはおおむねこのようなデザイン。写真は2011年以降の後期型
Aクラスセダン▲いちおうこのようなシートアレンジもできることにはなっている。だが1脚ごとに独立しているシートはかなり重量があるため、実際にこういったレイアウトに変えるのはかなり大変

2006年11月には車名を「Vクラス」に戻し、エンジンを231psの3.7L V6 SOHCに変更。グレードはエントリーグレードである「V350トレンド」と、上級グレードである「V350アンビエンテ」、そしてそのリアオーバーハングを伸ばした「V350アンビエンテ・ロング」の3種類でした。トランスミッションはいずれも5速ATです。

翌2007年11月にはエンジンを3.5LのV6 DOHCにダウンサイズ(しかし最高出力は258psに向上)。そして2011年1月にビッグマイナーチェンジを実施して、いわゆる後期型になりました。

このビッグマイナーチェンジではフロントまわりのデザインがけっこう変わるとともに、インテリア全般がぐっと乗用車的かつ現代的なデザインになり、さらにはサスペンションの細部も変更。乗り心地と静粛性が大幅に向上しています。
 

Aクラスセダン▲2011年1月のビッグマイナーチェンジで顔つきは写真上のように変更された

2代目Vクラス全般の乗り味は「重厚!」という表現がふさわしく、高速道路での直進安定性はなかなかのレベル。しかし山坂道などではFRらしいスポーティな味わいを感じることもできるというものです。3.5~3.7Lの自然吸気V6エンジンは、約2.1~2.2tの超重量級ボディを過不足なく加速および巡航させます。特段速いわけではありませんが、「重くて遅くてイライラする……」みたいなことはまず感じないでしょう。

またかなり大柄な車ではありますが、ドライバーの着座位置が高く、四角いボディの見切りも良好であるせいか、狭めの道でも意外な運転のしやすさを感じます。これは「最小回転半径5.4m」という、巨体に似合わぬ小回り性能ゆえの印象でもあるのでしょう。
 

 

相場:総額100万円台の中古車流通量はまずまず豊富

さて、そんなこんなの2代目メルセデス・ベンツ Vクラスの中古車は今、おおむね下記のとおりの状況となっています(※以下すべて2022年11月上旬現在)。

●流通台数:68台
●中古車平均価格:128.6万円(※車両本体価格)
●中古車の価格レンジ:総額約60万~約250万円
●そのうち「ちょうどいい狙い目」と思われる総額100万円台の物件数:29台

●総額100万円台物件の年式別流通台数:
・2007年式|4台
・2008年式|1台
・2009年式|2台
・2010年式|0台
――ビッグマイナーチェンジ(2011年1月)――
・2011年式|6台
・2012年式|6台
・2013年式|4台
・2014年式|4台
・2015年式|2台

上記の状況をざっくりとらえ直しますと、おおむね下記のような状況であると言えます。

●総額100万円台前半で買える2代目Vクラス
→前期型または走行距離多めの後期型

●総額100万円台後半で買える2代目Vクラス
→走行距離やや少なめの後期型

以上を踏まえ、次章にて「具体的なオススメVクラス」について考えてみましょう。
 

 

狙い方1:100万円台前半の予算なら前期・後期にはこだわらず「程度最優先」で

総額100万円台前半の予算、具体的には「総額130万円前後」ぐらいの予算感で2代目メルセデス・ベンツ Vクラスを狙いたい場合の選択肢は、ざっくり言いますと「走行距離少なめな前期型か、多めの後期型か」という二択になります。そしてこの二択問題は、正直なかなかの難問です。

車としては内外装がぐっと現代的になった後期型の方が魅力的なわけですが、そういった後期型と同水準の価格で売られている前期型は「その分だけコンディションが良い」という魅力がある場合が多いものです。

また走行距離うんぬんの話もしましたが、中古車のコンディションというのは走行距離だけで測れるものでは決してないため、それも絶対的な指針にはなり得ません。

ということで、ここでの結論は以下のとおりとなるでしょう。

「前期・後期にはこだわらず、内外装のコンディションと整備履歴を重視しながら柔軟に物件をサーチし、『これぞ!』と思えたものを買う」

玉虫色の結論で申し訳ないとは思います。しかし「グレードや年式、距離、ボディ色などには過剰にこだわらず、とにかく“状態の良いもの”を選ぶ」というのは中古車選びの超基本であることは確かです。

総額100万円台前半で2代目Vクラスを探す場合はパワースライドドアの開閉具合を確認したうえで、できれば試乗も行い、エンジンの吹け上がりが良好で足回りの安定感も感じられるものを選ぶようにしてください。
 

Aクラスセダン▲写真は前期型。「前期型だから」という意味ではなく、比較的安価なVクラスは電動スライドドアの不具合の有無や、エンジンや足回りなどのコンディションを逐一確認したうえで購入したいところ

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メルセデス・ベンツ Vクラス(2代目) × 総額100万以上150万円未満×全国
 

狙い方2:総額100万円台後半なら「後期型」が普通にイケる

総額100万円台後半の予算、具体的には「総額160万~190万円ぐらい」の予算を見込めるのであれば、まずまず低走行な後期型を狙うことが可能です。

グレードとしては、リアオーバーハングを延長させた「V350アンビエンテ・ロング」は希少ですが、エントリーグレードの「V350トレンド」はまずまずの数が流通しており、上級グレードの「V350アンビエンテ」もそれなりに流通しています。

となると、「同じ予算なら上級グレードを狙った方がいいでしょ?」と思いがちですが、必ずしもそうとは言えません。

ファブリックと人工皮革のコンビシートを採用したV350トレンドに対し、上級のV350アンビエンテは本革シートと電動デュアルスライディングドア、パークトロニック、収納式センターテーブルなどが装備されているため、確かに魅力的ではあります。

しかし前章で申し上げたとおり、やや古い年式の安価な中古車というのは「グレード」だけで判断するとドツボにはまる可能性もあるものです。極端に言うなら「ボロボロの最上級グレードより、ビカビカの廉価グレードの方が中古車としては格上!」ということです。

そのためここは「後期型の標準ボディ」とだけ決めて、トレンドにするかアンビエンテにするかは「現場での判断」とするのが正解となるでしょう。
 

Aクラスセダン▲写真は後期型の、2013年6月に発売された特別限定車「V350ホワイトエディション」

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メルセデス・ベンツ Vクラス(2代目) × 総額150万円以上200万円未満×全国
 

狙い方3:総額100万円以下はどちらかというと玄人向け

この他に総額100万円以下の予算であっても、2代目メルセデス・ベンツ Vクラスの中古車は探すことができ、流通量もそれなりに確保されています。

そういった超安価な中古車であっても、2代目VクラスはVitoという商用車がベースであるため比較的頑丈で、車としての基幹となる部分は特に激しい壊れ方をするわけではありません。

とはいえ総額フタ桁万円のVクラスは内装各部などの状態がややイマイチであったり、消耗部品やセンサー類の交換サイクルが近いことも予想されます。

そのため、いわゆる輸入車ビギナー的な人にはあまりオススメしませんが、購入後に整備することを前提としているベテランの方があえて買うのは悪くないでしょうし、お安い分だけ「思いきったカスタム」を施してみるのも楽しいかもしれません。

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メルセデス・ベンツ Vクラス(2代目) × 総額100万円以下×全国

しかし一般的には、狙い目とすべきは「総額100万円台ぐらいの、整備履歴が優秀な良質物件」です。ぜひそんな1台を見つけ出し、個性的なミニバンライフをお楽しみください。
 

文/伊達軍曹 写真/メルセデス・ベンツ
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。