現行型フォルクスワーゲン ゴルフの低走行物件が総額80万円から! でもそれって本当にお買い得なの?
2020/06/12
その相場は「ホンダ フィットの中古車」とほぼ同程度
実用ハッチバック界における世界的大定番であるフォルクスワーゲン ゴルフ。その現行モデルの中古車が今、ひたすら安価になっている。
具体的には、走行2万km台までの物件であっても総額80万円から130万円ぐらいの価格帯で狙えてしまうという状況だ。
この価格、仮に間をとって「総額100万円ぐらい」だとするならば、それは「2015年式ホンダ フィット 13G Fパッケージの中古車を買うのとだいたい同じぐらい」ということになる。
ゴルフとフィットのどちらが優れているとかいないとかのめんどくさい話ではなく、単純に「現行型フォルクスワーゲン ゴルフの低走行物件が総額80万円ぐらいから」というのは、ある種の人にとっては大いに注目すべき話であるはずだ。
だが物事というのは光があれば必ず影もあるわけで、「安いモノ」にもたいていの場合、何らかの「安いだけの理由」が必ず存在している。
そう考えた場合、総額100万円前後でイケる現行型フォルクスワーゲン ゴルフの中古車というのは本当に「買い」なのか、それとも「やめといた方がいい」なのか、冷静にチェックしてみたい。
まずは現行型フォルクスワーゲン ゴルフという車自体についての簡単なご紹介から。
本国ではすでに8代目のゴルフが発売されているが、日本ではまだ現行モデルである7代目のフォルクスワーゲン ゴルフが上陸したのは2013年5月のこと。
アルミなどの高価な素材を大量に用いることなく軽量化を実現した「MQB」という車台を採用し、エンジンも、新開発された1.2Lおよび1.4Lの直噴ターボを搭載。トランスミッションはデュアルクラッチ式の7速DSGで、「シティエマージェンシーブレーキ」に加え、衝突被害を軽減するプリクラッシュブレーキを標準装着とした。
導入当初の主なグレードは下記の3種類だった。
●TSIトレンドライン|1.2L直噴ターボ搭載のエントリーグレード
●TSIコンフォートライン|上記にアダプティプ・クルーズ・コントロールやリアカメラなどを付帯させたグレード
●TSIハイライン|1.4L直噴ターボ搭載の上級グレード
この他、スポーティな「GTI」や「R」、あるいはディーゼルエンジン搭載グレードなどもあるのだが、それらは総額100万円前後の予算ではまだぜんぜん無理なため、今回は割愛させていただく。
以上が、現行型フォルクスワーゲン ゴルフという車のかなりざっくりとした概略である。
そもそも「中古の現行型ゴルフ」は買うに値するのか?
以上を踏まえたうえで「総額100万円前後でイケる現行型ゴルフは本当に“買い”なのか?」ということを考えたいわけだが、その前に「そもそも現行型のフォルクスワーゲン ゴルフって、買うに値するほどいい車なのか?」という疑問がある。
これについての答えは明確で、「もうバリバリにいい車ですよ!」と言うほかない。
超最新世代においては同クラス国産車の基本性能もかなり向上しているが、少なくとも「ちょっと前の同クラス国産車(つまり現行ゴルフと同世代)」と比べるなら、その走行安定性と「いいモノ感」については正直、天と地ほどに違う。
高速道路における矢のような直進性と、カーブにおける「1ミリの誤差も生まない」的な超絶精密さに、乗れば驚く人は多いだろう。とにかく、素晴らしい出来栄えの5ドアハッチバックである。
しかし次に出てくる疑問は、「でも新車時から何年もたった中古車だから、新車時と同様のパフォーマンスなんて期待できないんじゃないの?」というものだろう。
これはまぁ確かにそのとおりである。
市場では「2020年式で走行0.3万km」みたいなゴルフも売られており、それらは「ほぼ新車」と評しても間違いではないはずだが、総額80万~130万円ぐらいで狙える現行型ゴルフは、現行型といっても初期のモデル。具体的には2013年式から2015年式が中心で、ギリギリ2016年式が少し入ってくるぐらいだ。つまりは「4~7年落ちぐらいの中古車」ということである。
車というのは2回目の車検を受けるあたり、つまり新車時から5年が経過あたりから少々ボロくなり始めるのが一般的ではある。だがそれはあくまで「少々」であって、「大々的に」ではない場合の方が多い。しかも今回、筆者が狙い目として挙げているのは「走行2万km台までの物件」だ。
もちろん、中古車の程度というのは走行距離の多寡だけで計れるものではないが、それでも「走行距離短い=全体のコンディション良好」という基本傾向は確かに存在している。そのため、総額100万円前後の現行型ゴルフ=4~7年落ちで走行2万km台までの物件は、「もちろん新車並みとはいかないが、まずまず悪くない感じの個体が多いはず」という推測はできるのだ。
鬼門だった(?)DSG問題も今や解決済み
ならばお次の疑問は「でも、ぶっ壊れるんじゃないの?」というものであろう。
これに関しては、中古車というのは1台ごとに履歴も状態も異なるため断言はできないのだが、基本的には「まぁたぶん大丈夫でしょ!」というのが当面の答えになる。
昨今のフォルクスワーゲン車といえば「7速DSG(ダブルクラッチ式トランスミッション)の不具合」がネット上でさんざん批判されていた。だが、実際に走行不能な状態に陥った事例の数は(もちろん、そういった事例は実際にあったのだが)決して大量ではなかった。
そしてそのDSGは2019年8月に大規模リコールの届け出が済んでおり、さらに今年4月には、2019年のリコールで漏れていた5万6938台についても、再度リコールが届け出られた。
つまり7速DSGの問題は――100%ではないのかもしれないが――解決した、ということである。それゆえ、ここについては特に気に病む必要はない。
そして7速DSG以外の部分についても同様に、特に心配すべきポイントはない。もちろんこれは「壊れない」と言っているわけではなく、乗っているうちにマイナートラブルが発生することもあるだろう。だがそれは「ゴルフだから」ではなく、車という機械すべてに当てはまる話だ。
そして現行型のフォルクスワーゲン ゴルフは(長くてめんどくさいので以降は「ゴルフ7」と書くことにするが)、「特に壊れやすい」という類の車ではない。正規ディーラーや信頼できる工場での定期点検をサボらず行い、替えるべき消耗部品を適切に交換してさえいれば、日常的にぶっ壊れまくるということは断じてない。
それゆえ、購入時の「現車のコンディションと整備履歴を精査し、最終的には試乗をして違和感の有無を確認する」という手間さえ惜しまなければ、総額100万円クラスの中古車であっても特に大きな問題はなく維持できることはほぼ間違いないのだ。
総額100万円級の中古車にも特に大きなネガティブ要因はない!
以上の検討により、総額80万~130万円ぐらいで買えるゴルフ7は「もちろんパーフェクトではないが、決して悪くはなさそうな選択肢である」ということがわかった。
ならば最後の疑問はこれだ。
「ではなぜ、そんなに安いのか?」
これの答えは簡単である。
「特に希少性はない(=流通量が非常に多い)車種ゆえ、『車の値段は毎年15%ぐらいずつ下がっていく』というマーケットの摂理がごく普通に働いて、現在の相場になった」ということだ。
例えば新車価格が269万円だった「2013年式TSIコンフォートライン」の中古車本体価格は今、だいたい90万円ぐらいなのだが、これは、
269万円 x 0.85 x 0.85 x 0.85 x 0.85 x 0.85 x 0.85 x 0.85=86.2万円
という、ごく簡単な算数で簡単に片付いてしまう話なのだ。
希少性が高いモデルの場合は、この「x 0.85」が「x 0.95」になったり、場合によっては「x 1.15」になったりもする。だがゴルフ7という車は、言ってはなんだがごく普通の量販モデルであるため、一般的な数式がそのままフツーに当てはまってしまうのである。
ということで、「旧型ホンダ フィットより中古の現行ゴルフ7の方がいいですよ!」みたいなことを言うつもりはないが、もしもあなたが、
●想定している予算総額が100万円前後で、
●硬質でタイトなニュアンスの走行感覚を好み、
●3列シートの車は特に必要としておらず、
●同クラスの国産車と比べればやや割高な部品代等が問題にならないのであれば、
総額80万~130万円ぐらいで狙える低走行な現行型フォルクスワーゲン ゴルフの中古車は今、とてつもなくお買い得である。
ご興味のある方はぜひ一度、その現物をチェックしてみてほしい。
▼検索条件
フォルクスワーゲン ゴルフ TSIトレンドライン/コンフォートライン/ハイライン(7代目・現行型)×総額130万円以下×走行距離3万km以下×全国自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。
この記事で紹介している物件
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