メルセデス・ベンツ Sクラスクーペ▲今回、紹介するのは1981年に登場したメルセデス・ベンツ SECクラス(Sクラスクーペ)

約40年前に発売されたSクラスクーペ

メルセデス・ベンツSクラスクーペは、旧型モデルでは「CL」と呼ばれ、もっとさかのぼれば「SEC」と呼ばれた時代もあった。

コンセプトは今も昔も同じで、フルサイズセダンのSクラスをベースに、あえて2ドアクーペに仕立てた贅沢なモデルである。

今回、注目するSECは旧々々型、3世代前のSクラス(W126型)がベースのクーペ。ちなみに、ベースのSクラス(W126型)はメルセデス・ベンツ史上、一番売れたS クラスである。

クーペのSECクラスはSクラス(W126型)のデビュー後の2年後、1981年にデビューした。いわゆる前期型の1981年から1985年までは380SEC、500SECの2バリエーションをラインアップ。後期型の1985年から1991年までは420SEC、500SEC、560SECをラインアップしていた。

当時、日本に正規輸入されていたのは前期型の2モデル、後期型は560SECのみだった、と記憶している。
 

フロントグリルのロゴが最大の特徴

エンジンやトランスミッションはSクラスと共通だった。サスペンションもクーペならではのチューニングが施された、とはいえSクラス同様にフロントのダブルウィッシュボーン式、リアのセミトレーリング式を採用していた。

SECクラス最大の特徴といえば、フロントグリルに配された大きなメルセデス・ベンツのロゴ(スリーポインテッドスター)、そしてBピラーをなくしたスムーズなラインだろう。しかしながら、外装でのSクラスとの共有部品は皆無、というこだわりよう。

SECのボディサイズはSクラスのショートホイールベースモデルと比較して85㎜短い4935㎜(560SEC)、10㎜ワイドな1830㎜で、30㎜低い1440㎜だった。ホイールベースも85㎜短い2850㎜だったが当時、これほどのホイールベースを確保している車はそうそうなかった。
 

メルセデス・ベンツ Sクラスクーペ
メルセデス・ベンツ Sクラスクーペ

質実剛健なインテリア

SECではリアシートは非常用とまでは言わずとも、さほど使われることは想定していなかった、と思う。それでもシートの座面はフロントシート同様、快適なものだった。

この頃のメルセデス・ベンツのシートは座面内にスプリング、馬の毛やココナツの繊維を用いていたから、高級ソファのような座り心地だった。そう、いちいちお金がかかっていたのだ。

ドアを開けてシートに腰を下ろすと、オートママチック・シートベルトガイドと呼ばれるものが“ウィーン”と伸びてくる。このギミックだけでも愉快だ。

インテリアは、というとどこまでも質実剛健さが漂い、きらびやかさには欠ける。良くも悪くも、当時のメルセデス・ベンツが顧客に迎合していなかった表れのように感じる。

そして、この頃は安全性を強くうたっており、当時としてはまだ珍しいエアバッグ、ABS、トラクションコントロールを装備。もちろん、衝突安全ボディも最新鋭だった。

2速発進という独特なスタイルは、無駄にエンジンを回さず、静かに有り余るトルクで大型客船がグイっと進むような加速感だった。
 

メルセデス・ベンツ Sクラスクーペ
メルセデス・ベンツ Sクラスクーペ▲ベースとなった3世代前のSクラス(W126型)のステアリングとインパネ

ヤングタイマーのあおりを受けるのも近い?

中古車相場に目を向けてみると、原稿執筆時点(2020年2月10日)で8台が流通している。中古車相場としては200万円台前半から後半がメインで、走行距離が多ければ安く設定されている。

この年代のメルセデス・ベンツは「ヤングタイマー」と称して最近、ヨーロッパで人気が高まっている。ゆえに、いずれ日本での相場動向も影響を受けかねない。

古き良きメルセデス・ベンツのグランドツアラーは、今でも感心させられる味わいをもつ。そういう意味では、昨今の高級車よりも普遍的な出来の良さをも感じさせてくれる。

ちょっとでも気になった方は、中古車物件をチェックしてみてほしい!
 

メルセデス・ベンツ Sクラスクーペ
メルセデス・ベンツ Sクラスクーペ
文/古賀貴司(自動車王国)、写真/ダイムラー

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メルセデス・ベンツ SECクラス(Sクラスクーペ)(1981年~1993年生産モデル)×全国
古賀貴司(こがたかし)

自動車ライター

古賀貴司(自動車王国)

自動車ニュースサイト「自動車王国」を主宰するも、ほとんど更新せずツイッターにいそしんでいる。大学卒業後、都銀に就職するが、車好きが講じて編集プロダクションへ転職。カーセンサー編集部員として約10年を過ごし、現在はフリーランスのライター/翻訳家として活動している。