マツダ ファミリア ▲今回紹介するのはこちらの青いファミリアです。メーカー直系のマツダスピードがチューニングしたモデルになります

ブルメタのボディにゴールドのホイール。日本が誇るメーカー系チューニングブランド名が冠された名車とは!

ベースは普通の大衆セダンにも関わらず、メーカー直系のチューニングブランド名が付けられたモデル。

その車両はブルーメタリックのボディカラーをまとい、ゴールドに塗られたホイールを装着する伝説的な車両であります。

その車種は、もう説明不要ですよね。そう、「マツダスピードファミリア」です!!!

……アッアッ、なんか別の車種を想像していた方がおられたら先に謝っておきます。ゴメンナサイ!

ファミリアといえば、1963年に登場し、マツダが商用モデルから普通乗用車へと軸足を移し始めた初期を支えた看板車種であり、先日(2019年5月)に登場した新型MAZDA3のご先祖ともいえる車種。

6代目、7代目はフルタイム4WDのターボモデルも設定され、WRC(世界ラリー選手権)でも活躍した車種でもありました。

しかし、代を重ねるごとにスポーティな雰囲気はスポイルされ、往年の姿を知るユーザーからするとやや物足りなさを感じていた9代目に突如として設定されたのが、今回ご紹介する「マツダスピードファミリア」だったのです。

マツダ ファミリア ▲エアロパーツを装着させるとともに、外板には青、ホイールには金の共通のカラーリングを施し、内装にもそれぞれにスポーティ感の高い特別装備を充実させ、見た目のスポーティさも高めています(写真提供:カーコンビニ倶楽部 三好)

カタログモデルには存在しない2Lエンジン×5速MTの組み合わせ
マツダスピードファミリア

1998年に登場した9代目ファミリアは、セダンと5ドアハッチバック(メーカーはS-ワゴンと呼称)のラインナップとなり、3ドアハッチバックは先代モデルが継続販売されました(1999年まで)が、これといったスポーツグレードは設定されていませんでした。

3ドアハッチバックのキャラクターを受け継いだS-ワゴンには「スポルト20」という、170psを発生する2Lエンジンを搭載するグレードが98年8月に追加されましたが、セダンに関しては2Lエンジン搭載車は設定されず、残念に思っていたファンも少なくなかったハズ。

マツダ ファミリア ▲ちなみにこちらがファミリア S-ワゴンスポルト20です


しかし、そんなおとなしい存在だったファミリアセダンに突如として2001年5月に登場したのが、マツダスピードファミリアでした!

当時の一応のスポーティグレード(とはいえ1500ccエンジン)だった「RS」をベースに、前述のファミリアS-ワゴンスポルト20に搭載されていた2Lエンジンを搭載し、数々の専用チューニングを施して100台限定として販売されたのです(一説によると後にさらに100台ほどが追加販売されたとか)。

エクステリアはS-ワゴンスポルト20と共通のエアロバンパーを装着し、同時に発売されたマツダスピードロードスターと同じ「スターリーブルーマイカ」の外装色と、レーシングハートのゴールド色の17インチアルミホイールを装着し、とあるメーカーのラリーベース車のような佇まいとなっていました。

>▲金色が特徴的な専用17インチアルミホイール。ブレーキも15インチディスクブレーキが装着され、制動力が大きくアップしています ▲金色が特徴的な専用17インチアルミホイール。ブレーキも15インチディスクブレーキが装着され、制動力が大きくアップしています(写真提供:カーコンビニ倶楽部 三好)


搭載される2LエンジンもS-ワゴンスポルト20のものをそのまま搭載したのではなく、ピストン圧縮比やカムシャフト、フライホイール、給排気ポート一部などを変更し、最高出力は175psにパワーアップされたもの。

さらに組み合わされるミッションもベース車には設定のない5速MTを採用し、ショートストローク化するこだわりっぷりだったのです。そのため車両型式は「BJ5P改」であり、あくまで改造車というスタンスもマニア心をくすぐるポイントと言えるでしょう。

ちなみにこのマツダスピードファミリアに採用されたカムシャフトは、メーカー純正としては異例なほどハイリフトで、まるでレーシングカーのようでした。

しかし、ハイチューンを受けたNAエンジンのようにアイドリングにバラつきが発生したため、パワーよりアイドリングの安定性を求めるユーザーのために、新たな専用カムシャフトへの無償交換がアナウンスされたほどでした。

今となっては、カムシャフトが交換されていない個体の方が人気となっているのは皮肉なものです……。

2001年末には、セダンにもS-ワゴンと同じ「スポルト20」が設定されましたが、こちらはマツダスピードファミリアのようにチューニングされたエンジンではなく、4速ATのみの設定ということもあってマツダスピードファミリアの希少性がより強調される形となったのは言うまでもありません。

▲設定されるのはショートストロークタイプの5速MTのみです ▲設定されるのはショートストロークタイプの5速MTのみです(写真提供:カーコンビニ倶楽部 三好)
マツダ ファミリア ▲専用エアロだけでなく、マツダスピード製のマフラーも装着していました(写真提供:カーコンビニ倶楽部 三好)

残された個体はあとわずか!

もともと台数限定の車両ということでタマ数も豊富というわけではありませんが、登場からまもなく20年となるマツダスピードファミリアの程度の良い個体を手に入れるのは、今がラストチャンスとなるかもしれません。

原稿執筆時時点では、カーセンサーに掲載されているのはたった2台! 少しでも気になった方は早めにチェックした方が良さそうです。

今では後継車のアクセラの名前も消え、ファミリアの名前はトヨタ プロボックス/サクシードのOEMモデルであるファミリアバンに残るのみとなりましたが、50年以上の歴史を誇るファミリアの中でも異色の1台として、長く語り継がれるモデルであることは間違いないところでしょう。

文/小鮒康一(フナタン)、写真/マツダ、カーセンサーnet

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マツダ ファミリアセダン(2代目)×マツダスピード×全国
小鮒康一(こぶなこういち)

自動車ライター

小鮒康一(フナタン)

スキマ産業系自動車ライター。元大手自動車関連企業から急転直下でフリーランスライターに。中古車販売店勤務経験もあり、実用車からマニアックな車両まで広く浅く網羅。プライベートはマイナー旧車道一直線かと思ったら、いきなり電気自動車を買ってしまう暴挙に出る。愛車は日産 リーフ、初代パルサー、NAロードスター。