絶滅危惧車のSTSは、キャデラックの変革を映し出しているモデルだ!
2019/06/25
キャデラックの変革を表すモデル
キャデラック STSは2004年に登場し、2011年には絶版となったモデルだ。
従来、「セビル」としてラインナップされていたものの後継車で、「Seville Touring Sedan(セビル・ツーリング・セダン)」の頭文字が車名となった。
この頃のキャデラックは変わろうとしていたし、実際大きな変革を遂げたといえるだろう。
「シグマアーキテクチャー」と呼ばれるFRプラットフォームをエントリーモデルであるCTSで導入し、STSもベース(サイズは異なるが)は同じプラットフォームとなっている。
それまでのセビルとの大きな違いは、駆動方式がFF(前輪駆動)からFR(後輪駆動)になったことだった。
そして、従来はFFだったセビルに対し、STSでは4WDモデル(4.6L車のみ)も投入された。
駆動方式ですべてが決まるわけではないが、高級車と呼ばれるこのクラスにおいてはFRが一般的ゆえに、おおむね喜ばしいニュースとしてとらえられていた。
ただ、STSの後継車である「XTS」ではFFに戻ったことをみると……一瞬の迷いだったのかなとも思わせる。
ラインナップされたエンジンは新開発の3.6L V6エンジン(最高出力257ps)と大幅改良が加えられた、4.6L V8エンジン(最高出力324ps)の2種類。
トランスミッションは5速ATが組み合わせられた。
全幅がセビルと比べると60㎜縮まり、小さく見えるSTSだが全長 4995mm×全幅1845mm×全高 1455mm という堂々たるボディの持ち主だ。
ちなみにホイールベースはセビルと比べると105㎜延長されているので、広さに文句は皆無。
“大きな CTS” という見方もできるデザインではあるが、ゆったりとした伸びやかなプロポーションの STS は、高級車志向であるデザインとなっている。
若いキャデラック・ファンを意識した同時期の CTS に対して、STS は従来のファンをしっかりフォローした感じ。
クラス最大級の大型 70mm デュアルプロジェクターレンズを用いたヘッドランプや、世界初となる間接照明型 LED 式テールランプの採用などに、最新技術に熱心なキャデラックの姿勢がうかがえたりもしたものだ。
絶版からあまり時間はたっていないが、残された物件は少ない
カチッと硬質感のあるドアを開けると、柔らかいキャデラックらしいシートが出迎えてくれる。
エクステリアの印象からするとやや平凡なインテリアに感じるかもしれないが、質実剛健にまとめられている。
3.6Lモデルと4.6Lモデルの最大の違いは、磁力を使ったアクティブサスペンション「マグネティックライドコントロール」の有無だ。
乗り味は端的に言えば、今までのキャデラックよりも引き締まっているが、ドイツ車ほどは硬くない、というレベルで独自の世界観をもたらしていた。
前軸にしっかりと荷重を乗せ、きちんと姿勢を作ってあげれば大柄なボディに見合わない旋回性能を発揮したものだ。
ドライバーの領分をあえて残したかのようなセッティングは、安楽なダンナセダンでは飽き足らない運転好きにアピールさせていたのかもしれない。
絶版になってから8年しかたっていないのだが、原稿執筆時点(6月17日)でカーセンサーnetに掲載されているのはたったの9台。
最も安いもので60万円、最も高いもので140万円、おおむね100万円弱といった雰囲気の中古車相場だ。
不思議なのは、2005年に追加された4.4L V8スーパーチャージャー搭載モデル(最高出力446ps)、STS-Vが1台も掲載されていないこと。
アウディにとっての「RS」、BMWにとっての「M」、メルセデス・ベンツにとっての「AMG」のように、この頃からキャデラックは「V」モデルを投入したのだった。
それにしてもSTS-Vオーナーがなかなか手放さないのか、はたまた海外へ輸出されてしまったのか……謎だ。
STSはキャデラックの変わろうとする姿を最も顕著に感じられるモデルで、意欲作だったことはお分かり頂けたであろう。
ちょっとでも気になった方は、中古車物件をチェックしてみてほしい!
▼検索条件
キャデラック STS(初代)×全国自動車ライター
古賀貴司(自動車王国)
自動車ニュースサイト「自動車王国」を主宰するも、ほとんど更新せずツイッターにいそしんでいる。大学卒業後、都銀に就職するが、車好きが講じて編集プロダクションへ転職。カーセンサー編集部員として約10年を過ごし、現在はフリーランスのライター/翻訳家として活動している。
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