カーセンサーnet上には40万台以上の物件が掲載されている。物件チェックを日課とする筆者が、その中から偶然見つけた「なんだこの中古車は!!」という物件を紹介しよう!

▲今回紹介するのはこちら! ターコイズブルーのボディカラーが美しいナッシュ アンバサダーだ ▲今回紹介するのはこちら! ターコイズブルーのボディカラーが美しいナッシュ アンバサダーだ

ターコイズブルーに輝くクラシックアメリカン

筆者はそもそもターコイズブルーという色にめっぽう弱い……。別にティファニーが好きというわけではないのだが、ターコイズブルーをまとった車には異様に興奮する。

そんな中、偶然出合ってしまったのが1956年式ナッシュ アンバサダーだ。

ナッシュは1916年、GMの社長だったチャールズ・W・ナッシュが「トーマス・B・ジェフリー・カンパニー」という自動車メーカーを買収して創業。

その後、買収や統合を繰り返し、1954年には「AMC(アメリカン・モータース・コーポレーション)」となった。

そして、ビッグ3(GM、フォード、クライスラー)ではない“独立系”として名をはせたAMCは、1987年にはクライスラー社に吸収合併された。

そんな歴史も面白いのだがとにかく、この独特なデザインがたまらない。

「ファリーナ」というエンブレムがフロントフェンダー下に配されているが、イタリアの有名カロッツェリア「ピニンファリーナ」がまだ創業して間もない頃のものだ。

フロントマスクの両脇は、眺めれば眺めるほどロールスロイス ファントムやシルヴァーレイスの影響を感じる。

真似したというわけではなく、ピニンファリーナがボディを手がければ、どことなく似たエレメントが入るのはやむを得なかったのだろう。

それにしても、フロントグリル内にヘッドランプが収められているのもユニーク。

▲有名カロッツェリア「ピニンファリーナ」がデザインを手がけたことを記すエンブレム ▲有名カロッツェリア「ピニンファリーナ」がデザインを手がけたことを記すエンブレム
▲グリルに埋め込まれているのがヘッドライト ▲グリルに埋め込まれているのがヘッドライト

価格は中型、サイズはフルサイズ

全長は5m30cmちょっと、ホイールベースも3mは確保されており、全幅は2m!

写真で見るよりもはるかに大きいのだ。ボディサイズはライバルのフルサイズセダン、新車時価格は中型セダンというのが、当時のナッシュ(AMC)がウリにしていたコンセプト。

とはいえ、ナッシュは“安物”を作っていたわけではない。

ナッシュは、アメリカの量産車としては初めてモノコック・ボディを採用したし、1938年には冷却水の排熱を利用したヒーターが、1954年からは冷気を送るエアコンも初めて装着していた。

一応、アンバサダーにもエアコンは用意され外気温より9度は冷たくできる、とうたっていた……。もう半世紀以上も前の車ゆえに、効きのほどは眉唾と思っておくのが無難だろう。

アンバサダーのモデルラインナップは、V6エンジン搭載車、V8エンジン搭載車、そしてより高級志向な「ステーツマン」というラインナップだった。

いわゆる松竹梅のラインナップ構成は、昔から存在したというわけだ。

当該車両は、最高出力190psのV8エンジンを搭載したアンバサダーだ。

大型ボディで6名乗れる、荷物がトランクにたっぷり収納できる、燃費は良い(当時としては)というのがカタログではうたわれていた。

トランクを開けるときはタイヤを手前に少し倒してから、という儀式めいた手順もたまらない。

フロントシートのバックレストは最近のような無段階調整式ではなく、5段階調整式。

ヘッドレストは装着されておらず、シートを倒せばリアシートの座面に干渉することなくベッドとして利用することもできた!

これは偶然ではなく、キャンプ使用を念頭に置いたメーカーオプションとして、サイドウインドウに装着できる「網戸」も用意されていたほど。

▲全長は5m30cm以上あり、写真で見る以上にサイズは大きい ▲全長は5m30cm以上あり、写真で見る以上にサイズは大きい
▲今回の物件はV8エンジンを搭載したモデルだ ▲今回の物件はV8エンジンを搭載したモデルだ
▲トランクを開閉するときはこのタイヤを傾ける必要がある ▲トランクを開閉するときはこのタイヤを傾ける必要がある
▲全幅が2mもあるため、車内はとても広い。大人1人が横になることができる ▲全幅が2mもあるため、車内はとても広い。大人1人が横になることができる

今となっては見られないようなデザイン、寝られるほど広い車内、無駄に大きなトランク、今見ても美しいダッシュボード……どれを見てもユニークだ。

カーステレオは“側”だけオリジナルをキープしたまま、どこかに最新のオーディオシステムを装備したい。

1950年代のロックを聴きながら、ダラーッと走れば……気分はアメリカン!

ひとたび街を走れば、スーパーカーよりも注目度は高いだろう。

そういう意味では“視線に耐える”必要があるかもしれないが、問答無用にカッコいいと思える車だ。

そして、注目度という点におけるコストパフォーマンスも抜群にいい!

実は筆者、原稿を書きながら、これほどまで購入意欲をそそられる車に出合ったことがない……。

この車が気になった猛者はぜひ、在庫の有無をチェックしてみてほしい。

それにしても奥が深いぜ、中古車!

▲クラシカルだが今見ても美しいインテリア。車内で1950年代のロックなんかを流せば、たちまち気分はアメリカン! ▲クラシカルだが今見ても美しいインテリア。車内で1950年代のロックなんかを流せば、たちまち気分はアメリカン!
text/古賀貴司(自動車王国)
photo/カーセンサーnet