▲プジョー RCZ(の前期型)。決して大ヒット作ではないだけに、程よい希少性が逆に魅力的にも思えるプジョー RCZというナイスな2+2クーペ。でもコレって今や総額150万円ぐらいからイケること、ご存じでしたか? ▲プジョー RCZ(の前期型)。決して大ヒット作ではないだけに、程よい希少性が逆に魅力的にも思えるプジョー RCZというナイスな2+2クーペ。でもコレって今や総額150万円ぐらいからイケること、ご存じでしたか?

ちょっとセクシーでちょっとレアなクーペが好きなZ君の本音

「クーペというジャンルの車に必要な要素は、程よい色気と程よい希少性であると我輩は思う! キミもそうは思わんかね!?」

過日、Z君という知人と居酒屋にて一献傾けていると、Z君がわたしに議論というか車談義をふっかけてきた。

物事というのは常にケース・バイ・ケースなので一概にそうとも言えないと思うのだが、まぁZ君が言っているクーペ論が決定的に間違っているとも思わない。

そういった意味で、わたしは「そうだな」と答えた。

「当たり前だバカヤロー! ナメんなヴォケ! ……まぁわかればよろしい!」

などとわめきながらわたしをにらみつけ、ぐへへへへと笑い、そして泣き始めた。

いったいどうしたのだ? と尋ねるに、Z君の答えはおおむね以下のとおりだった。

キミも知ってのとおり、自分はこんなクーペ論をぶっておきながら、実は中古の国産ミニバンに乗っている。

なぜならば、自分が理想とする「ちょっと色気があって、ちょっと希少な美しいクーペ(例えばイタリアのマセラティとか)」は高額であり、手が出せないからだ。

今宵はそんな自分のフラストレーションを、酔った勢いでキミにぶつけてしまった。本当に申し訳ないと思っている。

わたしは「謝ることはない。気にするな」と彼に言い、そしてどさくさに紛れて「ところでもしも今、車を買い替えるとしたら予算はいくらぐらい出せるんだい?」と、やや突っ込んだことを聞いた。

すると彼は「総額で100万円台とか、だいたいそんなモンだ」と言う。

わたしはテーブル越しに彼の肩に手を置き、そしてささやいた。

「ならば何の心配も憂いもない。黙ってプジョー RCZの中古車をカーセンサーnetで探しなさい」

以下はこのあと、わたしがZ君に行った説明のダイジェスト版である。

いわばアウディ TTクーペのフランス版?

▲コンセプトカーほぼそのままの曲線を描くエクステリアは、ルーフとリアウインドウに2つの膨らみをもつ「ダブルバブルルーフ」が大きな特徴。標準で備わるアクティブリアスポイラーは、速度に応じて2段階に角度が自動調節される▲コンセプトカーほぼそのままの曲線を描くエクステリアは、ルーフとリアウインドウに2つの膨らみをもつ「ダブルバブルルーフ」が大きな特徴。標準で備わるアクティブリアスポイラーは、速度に応じて2段階に角度が自動調節される

まずはプジョー RCZという車について。

RCZは、2010年に日本へ上陸したフランス・プジョー社のスポーツクーペ。そのベースは同時期のプジョー 308というハッチバックである。

初期モデルのパワートレインは2種類で、ひとつは最高出力156psの1.6L直噴ターボエンジンに6速ATを組み合わせた右ハンドル仕様。

そしてもうひとつが同じく1.6L直噴ターボながら最高出力200psまでチューンされた、6MTの左ハンドル仕様だった。

プジョー RCZは、立ち位置的には「アウディ TTクーペのフランス版」と考えていい。

いわゆる2+2の4人乗りクーペで、なかなかスポーティな車ではあるのだが、決して「リアルスポーツ」というわけではない。

内外装にわたるかなり流麗なデザインと、まずまずスポーティな走りをじっくり楽しむのが似合う1台である。

走りの感触もドイツのアウディ TTクーペに似ているが、お国柄の違いだろうか、「剛のTT対して柔のRCZ」という感はある。

好みにもよるが、ゴリゴリの硬派よりも「ソフトな感触」を大事にしたいタイプの車好きには、おそらくRCZも好ましく思えるだろう。

そして、これまた人それぞれの嗜好による話だが、外観デザインも、プジョー RCZの方が肉感的で好ましいように筆者には思える。

特にルーフとリアウインドウに2つの膨らみをもつ「ダブルバブルルーフ」と、丸く大きく張り出した前後フェンダーの造形は肉感的で、Z君のクーペ論が言うところの「程よい色気」を生み出している部分だ。

2013年6月にはフェイスリフト(小変更)が行われ、外観を微妙に改良すると同時に、インテリアも少々改良。

そして、それまでは左ハンドル車のみに用意されていた「サウンドシステム」(エンジンの快音を車内に響かせるエレキな装置)が、右ハンドル車にも装備された。

だがRCZは結果としてさほどのヒット作にはならず、2015年には生産終了となった。

しかしこのあたりもZ君が言う「程よい希少性」につながる部分ではあるので、ある種の車好きにとっては決して悪い話ではない。

想定プライスは総額170万円前後から

▲ちなみにこちらが2013年6月以降の後期型。「むしろ前期型の方がカッコいい」という意見も?▲ちなみにこちらが2013年6月以降の後期型。「むしろ前期型の方がカッコいい」という意見も?

以上のざっとした説明を聞いたZ君が口を開いた。

「なるほど。で、それはナンボで買えるねん?」

なぜかいんちき関西弁になっているのが気に障ったが、わたしは以下のように答えた。

ズバリ、総額120万円ぐらいからである。

ただし、そのぐらいの価格だと過走行気味の個体も多いため、それこそ「程よい走行距離=4万~6万kmぐらい」の個体を探すのであれば、支払総額は「170万円ぐらいから」といったイメージだろうか。

そのぐらいのプライスゾーンで狙えるのはフェイスリフト前の前期型が中心で、なおかつ最高出力156psの右ハンAT仕様がメインとなる。

本当は200psの左ハン6MT仕様が前期RCZのイチオシなのだが、156psの右ハンATも決して悪くはない。

そう言うと、Z君は

「なるほど。自分はさほど飛ばすタイプではないので156ps仕様で十分かもしれぬ。とはいえ故障は気になる。ガイシャは壊れやすいとも聞くが、前期型プジョー RCZの中古車はぶっちゃけどうなのだ?」

と尋ねてきた。

「おおむね問題ない」と、わたしは答えた。

もちろん機械モノゆえ、特に中古のフランスモノゆえ、「絶対に大丈夫!」などとは口が裂けても言えない。

そして燃料ポンプやウオーターポンプ、イグニッションコイルなどは、ぶっちゃけ例えばトヨタ車のそれと比べれば脆弱だったりもする。

また単純に、各部の部品代も国産車と比べるなら割高である。

だがエンジン本体やトランスミッション、あるいはエアコンなどの「壊れるとシャレにならないほどカネがかかる部分」については、さほど弱いわけではないのが『プジョー RCZ』という車だ。

それゆえ、中古のラテン車にありがちな「基本大丈夫なんだけど、まぁたまにちょっとしたところが壊れたりもします」というパターンに耐えられる精神をもってさえいれば、さほど大騒ぎするほどのことはないと予想される。

……というようなことを、わたしは包み隠さずZ君に伝えた。

完全に酔いがさめたZ君は「わかった、検討してみる。今日はありがとう」と言い、2人分の伝票をつかんでスタスタとレジ方向へ歩いて行った。

おごってもらってしまったことはさておき、Z君が「本当に好きなタイプの車」に買い替える日がくるのが楽しみでならない、ある夜の不肖筆者であった。

text/伊達軍曹
photo/プジョー・シトロエン

▼検索条件

プジョー RCZ(初代)×6万㎞台まで×支払総額あり×全国