▲売れ筋グレードの新車価格はおおむね440万円ほどだったフランスのアッパーミドル、シトロエン C5セダンおよびC5ツアラー。それが最近ついに「約80万円から」という超絶格安状況になってきました! ▲売れ筋グレードの新車価格はおおむね440万円ほどだったフランスのアッパーミドル、シトロエン C5セダンおよびC5ツアラー。それが最近ついに「約80万円から」という超絶格安状況になってきました!

格安ガイシャ界に「新星」現る

サッカーにJ1/J2/J3があり、プロ野球ペナントレースの年間リザルトがAクラス/Bクラスに分けられるように、輸入中古車の世界にもざっくりとしたランク分けというか、カテゴリーのようなものがある。

それらカテゴリーの境界線は決して明確なものでも明文化されているわけでもないが、大筋のコンセンサスとしては、

・1000万円超級の富豪系
・400万円超級の小金持ち系
・200万~400万円ぐらいの割とフツー系
・199万円以下のお手頃系

ぐらいに分けられるはずだ。そのなかでも特にフタケタ万円から149万円ぐらいのモノは「格安系」と呼んでも差し支えないだろう。

そして最近、そんな「格安系」輸入中古車の世界に新たなスターが誕生した。

シトロエン C5セダンおよびC5ツアラーである。

新車時価格399万円~514万円だったこのステキなフランス製アッパーミドルが今、車両価格80万円~145万円程度でイケるようになったのだ。……これはもうある種のお手頃系・格安系輸入中古車ハンターから見れば「スタア誕生」としか言いようのない事態ではないだろうか。

▲こちらがシトロエン C5セダン。初代C5のセダンは単に「C5」という車名の、実際にはセダンではなく5ドア車だったが、この世代から「C5セダン」が正式車名となり、ボディ形状も正真正銘のセダンになった ▲こちらがシトロエン C5セダン。初代C5のセダンは単に「C5」という車名の、実際にはセダンではなく5ドア車だったが、この世代から「C5セダン」が正式車名となり、ボディ形状も正真正銘のセダンになった
▲で、こちらがステーションワゴンのシトロエン C5ツアラー。こちらも初代の方は「C5ブレーク」という車名だったのだが、この世代から「C5ツアラー」へと改名されている ▲で、こちらがステーションワゴンのシトロエン C5ツアラー。こちらも初代の方は「C5ブレーク」という車名だったのだが、この世代から「C5ツアラー」へと改名されている

その乗り味は「雲上系」なれどシュアでもある

シトロエン C5セダンおよびC5ツアラーという車について、ごく簡単に解説しておこう。

デビューは08年10月。前身にあたる初代のシトロエン C5およびC5ブレークはいかにもフランス車らしい難解なデザインだったが、第2世代となるこちらはかなりシュッとした、汎ヨーロッパ的で高級感あふれるビジュアルに生まれ変わった。

足回りは、窒素ガスとオイルを使ったシトロエン伝統のサスペンションの最新版にあたる「ハイドラクティブIIIプラス」。乗り心地はひたすらの雲上系だが、それでいてコーナリング時は4本のタイヤが執拗に路面をつかむため、安定感および安心感は抜群である。

初期のラインナップは3Lエンジン+6ATの「3.0エクスクルーシブ」と、2L+4ATの「2.0」という2種類。10年5月からは2L版に代わって1.6Lのダウンサイジング直噴ターボを搭載する「セダクション」および「エクスクルーシブ」が登場。そして11年2月に若干のマイナーチェンジが行われ、15年5月には日本での販売終了に伴い特別仕様車「C5 Final Edition」および「C5ツアラーFinal Edition」が限定発売された。

次章にて、これら数あるC5セダン/C5ツアラーのうち「どの世代のどんなグレードが“格安系”になったのか? そしてそれらは今、どのような考え方で狙うべきなのか?」という点について考えてみたい。

▲写真はシトロエン C5セダンのインテリアだが、基本デザインはツアラーも同様。レザーを含む各部の質感やデザインは、400万円超級という(フランス車としては)立派なプライスにふさわしいものだ ▲写真はシトロエン C5セダンのインテリアだが、基本デザインはツアラーも同様。レザーを含む各部の質感やデザインは、400万円超級という(フランス車としては)立派なプライスにふさわしいものだ

お手頃ゾーンの中心は2Lまたは3Lエンジン

まずは事実関係を見てみる。車両価格149万円以下で狙えるシトロエン C5セダン/ツアラーは7月半ば現在、全国で25台。そのうち15台がセダンで、10台がツアラー(ステーションワゴン)だ。

15台あるセダンのうち、1.6Lのダウンサイジングターボを積む中期型以降は3台のみで、前期2Lも4台のみ。ここでの最大勢力となっているのは3L V6+6ATの3.0エクスクルーシブ9台だ。

ツアラーの方も、1.6L直噴ターボの中期型以降は1台のみ。そして2L+4ATの前期型が6台で、3L V6が3台。要するに「セダンもツアラーも、さすがにこの価格帯では1.6Lの直噴ターボはまだ少々難しい。狙うなら2Lまたは3Lが基本になる」というのが結論だ。

価格帯別に見ると、セダン/ツアラー合わせて25台のうち99万円以下の物件が13台で、100万~149万円の物件が12台ということで、ここは数的にほぼ拮抗している。しかし100万円超級の平均走行距離が4.9万kmであるのに対し、アンダー99万円カテゴリーの平均走行距離は約7.2万kmとなっており、10万km超の個体も比較的目立つ。

▲こちらはC5セダン前期型で、そのスリーサイズは全長4795mm×全幅1860mm×全高1470mm ▲こちらはC5セダン前期型で、そのスリーサイズは全長4795mm×全幅1860mm×全高1470mm
▲C5ツアラーの前期型。全幅はセダンと同一だが、全長はリアオーバーハングが延長された分4845mmとなり、全高もルーフレールの分だけ高くなって1490mmに。荷物の積み降ろしを助ける荷室高上下調整機能も備わる ▲C5ツアラーの前期型。全幅はセダンと同一だが、全長はリアオーバーハングが延長された分4845mmとなり、全高もルーフレールの分だけ高くなって1490mmに。荷物の積み降ろしを助ける荷室高上下調整機能も備わる

できれば1.6L直噴だが、2L/3Lを整備履歴重視で選ぶのが現実的か

以上の事実関係をベースに、「では結論としてどの年式/グレード/価格帯を中心に検討するのが得策か?」という問題に対する私見を述べたい。

可能であれば中期以降の1.6L直噴ターボ+6ATの仕様を、セダンかツアラーかに関わらず選ぶのが安パイであろうとは思う。何だかんだ言って信頼性は初期型より向上しており、新世代パワートレインの恩恵で燃費も(まずまず)良好。見つかるなら、これの整備履歴が充実している個体を探すのが一番だろう。

だが問題はその流通量が少ないということ。7月中旬現在、149万円以下のC5セダン/C5ツアラーの1.6L直噴ターボ版は全国でわずか4台。……なかなか厳しい数字である。

となると現実的には2L+4ATまたは3L+6ATのセダンあるいはツアラーを探すことになるわけだが、このカテゴリーに関しては、年式やグレード云々ではなく「内容」で選ぶのが、結果として最上の策となるはずだ。

内外装のコンディションは当然として、ハイドラクティブIIIプラスを中心とする各主要部の整備履歴はどうか? ATやエアコンなどの「壊れると高くつく箇所」の作動状況はどうか? ……等々を店頭で子細に調査し、そのうえで、購入後もある程度の整備費は計算に入れておく。そうすればきっと、悪くない「シトロエン C5ライフ」を長きにわたり送れるはずだ。

▲国産新車のように「ほぼメンテナンスフリー」みたいな感じではないかもしれないが、しっかり整備されてきた個体でさえあれば、昔のシトロエンのように「しょっちゅう入院してる」なんてことはないはず ▲国産新車のように「ほぼメンテナンスフリー」みたいな感じではないかもしれないが、しっかり整備されてきた個体でさえあれば、昔のシトロエンのように「しょっちゅう入院してる」なんてことはないはず

ある程度以上の格安ゾーンに入ってきたアッパーミドルやアッパークラスな輸入車の選び方や維持というのは、以上のとおり決して超楽勝でもない。それなりに注意を払って選ぶ必要は確実にあり、そして注意して選んだとしても、その後の維持費は国産大衆車と比べるなら少々高くつくだろう。

しかし、格安ゾーンに入ってきたアッパーミドル輸入車には間違いなく「夢」がある。

カーセンサーnetを見ているすべての人に格安系シトロエン C5セダン/C5ツアラーを勧めたいわけでは決してないが、ある種の夢追い人には、「車両100万円そこそこでステキなフレンチ・アッパーミドルを手に入れる」という行為に、ぜひとも注目していただきたいと思う次第なのだ。

▼検索条件

シトロエン C5セダン(現行型) × シトロエン C5ツアラー(現行型) × 車両本体価格150万円以下
text/伊達軍曹
photo/プジョー・シトロエン