Bosensor

日本のヒップホップシーン最前線でフレッシュな名曲を作り続けているスチャダラパーのMC、Boseがカーセンサーで気になる中古車を探して実際に見に行く本企画。

今回は1970年代の珍しいイタリア車を多く扱う、秘密の倉庫のようなショップを潜入調査!

Bose

スチャダラパー

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「今夜はブギー・バック」などで知られる、スチャダラパーのMC。ヒップホップ最前線でフレッシュな名曲を日夜作りつづけている。4月8日には待望のニューアルバム『シン・スチャダラ大作戦』をリリース、詳細は公式HPへ。愛車はフォルクスワーゲン ゴルフIIとフィアット ウーノターボ

Boseが古いフィアットを検索すると必ず出てくる謎のショップに訪問

~語り:Bose~

この企画でよく話すけれど、僕は1980~1990年代前半のコンパクトカーが好き。今はフォルクスワーゲン ゴルフIIとフィアット ウーノ、そして奥さん用にフィアット 500を持っているの。

このラインナップを見てもらえば分かるとおり、フィアットが好きなんだよね。で、最近はカーセンサーでフィアットの中古車を古い順に検索しているんだけど、すると同じお店が扱っている1970年代のフィアットが結構出てくるんだ。

それが神奈川県藤沢市にある「SCC」。

(編注:会社名が「SCC」で、店舗名は「H&T」である。カーセンサーnet上では2店舗に分けて掲載されており、FIAT 124、 127、128の乗用車やイタリアのプライベーターが実際に使っていた競技車両などが「SCC」店舗ページで、商用車のワンボックスタイプのバンが「H&T」の店舗ページで主に掲載されている)



カーセンサーで見つけたときには、日本にこんなマニアックなショップがあるのかよってビックリしたよ。扱っているのは僕のど真ん中の好みより少しだけ古い車。でも、そのあたりのフィアットもツボなんだ。

ただ、普段使いするのはさすがに厳しいかなとも思う。今回はそのあたりも聞いてみようと思ってるんだ。

SCC▲今回お邪魔したのは搾乳場を改装した、イタリア車好きのための秘密基地のような「SCC」さん
高田佳弘さん

SCC 代表

高田佳弘さん

1960~70年代のフィアットを専門に扱う神奈川県藤沢市の販売店「SCC」代表。イタリアから代表の高田さん御自身が直輸入を行い、希少なイタリア車を販売している。

Bose
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こんにちは。

高田さん
高田さん

Boseさん、初めまして。

Bose
Bose

それにしても、おもしろいお店ですね。僕が想像していたのと全然違う佇まい(笑)。

高田さん
高田さん

実はここは元々、搾乳場だったんです。今でもこのお店の裏は牧場です。

Bose
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この倉庫感が秘密基地っぽいですよね。カーセンサーでSCCを見つけて、僕が好きな車がたくさんあってビックリしました。後でゆっくり車を見せてほしいのですが、まず社長にお話を聞いていいですか?

高田さん
高田さん

私で話せることでしたら構いませんよ。

Bose
Bose

まず、このような珍しいショップをオープンした経緯を聞いてもいいですか?

高田さん
高田さん

話はバブル時代までさかのぼりますがいいですか? 元々私は建築関係の営業をやっていました。それと並行して、今でいう副業として仲間とお金を出し合って、ガス検屋さんを始めたんです。ガス検をやって、日本のレギュレーションに合わせてナンバーを付ける仕事です。

Bose
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並行輸入車の排気ガスの成分が日本の基準に当てはまるかを検査するやつ(自動車排出ガス試験)ですね。当時はどんな車種が多かったんですか。

高田さん
高田さん

バブルのときですからランボルギーニ ディアブロなどのスーパーカーや、古いジャガーが多かったですね。当時から僕は古くて小さなイタリア車が好きでしたが、当時はそういう車の需要はほとんどなくて商売としては成り立ちませんでした。

Bose
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お金を持った人が高級車をバンバン買う時代ですもんね。それが今の形になったのは?

高田さん
高田さん

10年くらい前ですかね。ただ、サラリーマンがメインだったので忙しくなっても困るから、まだ表立って広告は出していませんでした。サラリーマンを辞めて本格的にやるようになったのは5年くらい前からです。

Bosensor ▲高田さんの私物のフィアット 500MAXIとパシャリ。500MAXIと、はフィアット 500のレース仕様カスタム車

こういう車があることを知ってもらえたら

Bose
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しかし、よくここまでの車を集められましたね……。

高田さん
高田さん

私は今59歳ですが、同年代から少し下の世代の車好きに「こういう車もあるんだよ」というのを知ってもらいたいと思ったのです。

Bose
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今、51歳の僕がメインターゲットだ。まさにその網にかかりました(笑)。

高田さん
高田さん

価格帯もそのくらいの年齢のお客さまが無理なく買えるあたりのものを揃えています。「いい時計を買うなら、車どうですか」と。

Bose
Bose

今は若い人でも「デザインがかわいい」という理由で旧車を選ぶ人がいますよね。そういう人もショップに来ますか?

高田さん
高田さん

旧車を選ぶ若い子は、おそらく最初はビートルやミニに行くと思います。うちに来るとしたら、そこからより深いところに行ってみたいと思った人ですかね。そんな若い子が取り込めたら最高にうれしいですよ。現実はそううまくはいきませんが(笑)。

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僕は今、鎌倉に住んでいるんですよ。時間があるときは海に行くのですが、サーフィンをやっている人はほとんどが僕と同世代。サーフィンでさえそうなのだから、若い人が趣味性の強い車に走るのは相当ハードルが高そう。

高田さん
高田さん

地元ならともかく、海に通うとなるとある程度お金に余裕がないとできないですからね。昔はそんなことなかったのですが。実は私は好きが高じて、東京でサーフショップをやっていたこともあるんですよ。当時はコンペディション(競技)に出場したり、プロの友達と海外でサーフィンを楽しんだりしていました。

Bose
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そうなんだ。サーフィン好きなら今のお住まいもお店の近所ですか?

高田さん
高田さん

自宅は伊豆高原になります。藤沢だったら通えなくもないのでね。自宅は1階がピロティになっていて車を3台ほど置けるので、いつか本当に好きな車をそこで販売するのが夢です。

Bose
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そのあたりならサーフィンも楽しめるじゃないですか! 好きな車と好きなサーフィンを楽しめる暮らし、最高だな!

1970年代のファットも相場上昇中。ほしい人は早めに買うのが吉?

Bose
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ドイツ車に比べると、イタリア車、フランス車を扱うショップは少ないですよね。僕が好きな古い年代のイタフラ(イタリア、フランス車)となるとさらに狭くなる。今、ファンはみんな同じショップに顔を出しているんですよね。だからSCCのように新しいことにチャレンジしているショップには頑張ってほしいな。フィアット124や127のような古い車だと、トラブルが発生したときはスムーズに対応できるものですか?

高田さん
高田さん

古いフィアットの大衆車は、意外とパーツが豊富にあるんですよ。リブロ品(絶版となったパーツを型取りして製作したもの)も多いですよ。もちろん日本には少ないから海外から輸入することになりますが。エンジンは普通の直列4気筒だし、ちょっと知識があれば直せると思いますよ。もちろんクセもあるからそこだけ難解なパズルを解く感じになりますが、旧車をいじったことがあれば大丈夫でしょう。

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ミッレミリアに出場するようなクラシックカーは“遺産”と呼ばれるような存在で価格も天文学的ですが、SCCが得意とする1970年代の大衆イタリア車もそういう方向に行きますかね?

高田さん
高田さん

時期は分かりませんが、やがてそうなると感じてます。現にヨーロッパではかなり価値が上がっていますから。私自身、この現象に困惑しています。うちが今の形になった5年くらい前だと250万円くらいだったものが、現在は50万円くらい上がっている印象です。

Bose
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やっぱりそうなんだ。このあたりもお金に余裕のある大人の遊びになっていくのかな。

高田さん
高田さん

やがてそうなるかもしれませんね。ただ、フィアットに限ればパーツは国産旧車よりも豊富にあるので、長く楽しめるでしょう。維持費を抑えたい場合は、eBayなど海外オークションサイトでパーツを探してみることをオススメします。私もお客さまにこのやり方を教えたりしています。

Bose
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パーツは自分で探して、修理はここで依頼する。それができるのはうれしいね。高田さんは今後どんな展開を考えているのですか?

高田さん
高田さん

ストックをもう少し増やして124、127、128など「数字系のフィアットはここに来れば相談できる」と言われるようにしていきたいと思っています。

Bose
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それは心強いな。

高田さん
高田さん

「専門店はハードルが高くて怖い」という声も聞きますが、私は見学のお客さまも大歓迎です。私自身、若いころに中古車屋さんを回っていろいろなことを教えてもらいましたからね。いつかこういう車を買おうと思ったときにうちのことを思い出してもらえれば。ぜひ物見遊山でいらしてください。

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ということなんで、みんなも興味があったらショップに遊びに行こう! 次回、「SCC」で見つけた珍しい車を一気に紹介するのでお楽しみに!

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文/高橋 満(BRIDGE MAN)、写真/篠原晃一