【図説で愛でる劇中車 第6回】車好きもうなる!?「名探偵コナン」の車種選抜に迫る
2019/09/26
国内外問わず様々な映像作品(アニメも含め!?)に登場したあんな車やこんな車を、イラストレーター遠藤イヅルが愛情たっぷりに図説する不定期連載!
第6回は、今や国民的マンガ・アニメとなった「名探偵コナン」に登場する車たちをお送りいたします。
連載開始25年! 大人気マンガ・アニメ「名探偵コナン」
週刊少年サンデーで1994年から連載を開始した、青山剛昌氏原作のマンガ「名探偵コナン」。
高校生探偵・工藤新一が“黒の組織”に毒薬(APTX4869)を飲まされ、小学1年生の姿にされてしまうも、頭脳はそのまま。「江戸川コナン」と名乗って数々の難事件に挑む……というあらすじは、書く必要もないほどに有名ですよね。
2019年9月現在漫画単行本は96巻まで発行、1996年からはアニメ化されて今も絶賛放送中です。
劇場版も次々と公開しており、23作目となる最新作『紺青の拳』では、4年連続で上半期邦画ナンバーワンを記録するなど、その人気はますます高まるばかりです。
そしてコナンといえば、原作・アニメともども全編にわたって「実在の車」が数多く登場することでも知られています。
実在車が出る作品は珍しくありませんが、いわゆる「モブ(群衆)」的な背景にチラッと映る車でも、名探偵コナンでは実在の車がしっかり描かれていることが多いのです。
その徹底ぶりは、マツダ キャロル360などの旧車から、ホンダ フィット、日産 スカイライン、トヨタ クラウン、レクサスなどの国産車はもちろんのこと、トラックやバスの描写も「これは三菱ふそう キャンターだ、こっちはいすゞのキュービック!」とわかるほどの描き込みようです。
しかもアルファロメオ、キャデラック、フィアット、フォード、BMW、メルセデス・ベンツ、プジョーなど輸入車もいっぱい登場。これはかなり車が好きなスタッフが作っている! と思いますよね。それもそのはず、原作者の青山剛昌氏はとても車が好きなのだそうです。納得!
主人公コナンに迫る人気!? 安室透が乗る「RX-7」
単行本34巻に登場! 新一の母が乗る「Eタイプ」
それほどまでに登場車種が多い名探偵コナン。でもこのコーナーで取り上げる車を絞らなければなりません。
そして悩みに悩んだ結果、「名探偵コナンといえば」という2台と、「こんな車種が登場するの!」とうならされた2台を選んでみました。
「名探偵コナンといえば」の車といえば、やはりこれ? バーボン、降谷零という別名をもつ謎の男・安室透の愛車「マツダ(アンフィニ)RX-7(FD3S)」を外すわけにはいきません!
FD3Sは1991年に登場した3代目のRX-7で、デビュー時はマツダではなく「アンフィニ」ブランドで発売されていました。
彼のRX-7は劇場版アニメ『純黒の悪夢(ナイトメア)』『ゼロの執行人』でも大活躍しますが、画面をチェックしてみると、劇場版で安室透の乗るFD3Sは、前期から後期にかけて1~6型に分類されるうちの「前期・中期(1~4型)の顔」に、「中期(4型)の丸型3連テールランプ」、「後期(5・6型)のリアスポイラー」を組み合わせている(もしくは後期型ベース+フロント前期型)仕様になっているようです。
ボディカラーが白いのは、古谷徹氏が声を担当した「機動戦士ガンダム」の主人公、アムロ・レイが乗った「白い悪魔(ガンダム)」にあやかっていると思われます。
そういえばライバルとして登場する赤井秀一の声は、同じくガンダムの“赤い彗星”ことシャア・アズナブルを務めた池田秀一氏。しかも車は“赤い”フォード マスタングなのです。なにこの設定! おっさんホイホイじゃないですか!
次は工藤新一の母・工藤有希子が乗っていた「ジャガー Eタイプ」です。
工藤有希子は、ニューヨークで夫の工藤優作と暮らしている伝説の女優という設定。単行本34巻、アニメ286話では名車中の名車「ジャガー Eタイプ」を愛車としていました。
ジャガーはイギリスの車ですが、実際に多く販売されたのは北米市場ですので、アメリカのイメージがとても強いのです。
それを反映してか、劇中のEタイプはアメリカ市場のために灯火類とラジエターグリルを大きくしたマイナーチェンジ版「シリーズ2」が描かれています。
惜しむらくはワイパーとテールがシリーズ1のまま(シリーズ1のワイパーは特徴的な3連タイプ)になっていることなのですが、車種選択の素晴らしさは変わりなし。
やはり大きく感銘を受けてしまったのでした。
阿笠博士のビートル(タイプI)
諸伏刑事のシトロエンCX
工藤新一をコナンだと知る数少ない一人、阿笠博士。コナンの持っている「キック力増強シューズ」や「腕時計型麻酔銃」などの道具を作った発明家で、愛車は黄色い「フォルクスワーゲン ビートル(タイプI)」です。
劇中ではコナンたちを連れてキャンプに行くなど登場シーンも多く、名探偵コナンを代表する劇中車と言ってもよいでしょう。
アニメに出てくるビートルに限ってよく見てみたところ、フラットな前面窓、フロントフェンダーに載ったウインカーなどから、年式は1960年代中期頃ではないかと考察されます。
最近の作品では、車がセル画からCGに移行したので、しっかり考証ができるようになりました。
この他、黒の組織の幹部・ジンが愛用する「ポルシェ 356(一般的には“356A”とされていますが、形態的な特徴から356Bか356Cではないでしょうか)」も取り上げようと思ったのですが、ビートルもドイツ車なので、涙を飲んで(?)他の国の車を選ぶことにしました。
マンガやアニメではあまり出てこないシトロエンから、さらに登場することが少ない「シトロエン CX」です。
ハイドロニューマチックサスペンションを持ったシトロエンの旗艦モデル・CXは、1974年から1991年まで製造されましたが、劇中で確認できるのは、1985年にウレタンバンパー化など大掛かりなマイナーチェンジを行なった「シリーズ2(後期モデル)」です。
独創的なスタイルと技術をもつシトロエン CXは、好みが分かれる一方で世界中にコアなファンをもつ車ですので、劇中車にCXをチョイスするのだけでもすごい。
さらに、メッキバンパーのオリジナルスタイル(シリーズ1)ではなく、後期モデルを選ぶというセンスにも脱帽しました。
CXのオーナーは、有能で機知に富む刑事・諸伏高明(もろふしたかあき)。三国志など中国の故事にちなんだ故事成語をよく使う彼がもし実在したら、「本当に選びそうな車種」なのです。
これこそ名探偵コナンの車選びにうならされるところ。「それぞれのキャラクターによく似合っている」ことも大きなポイントなのですね。
名探偵コナンは原作マンガ、アニメともにまだまだ続く(?)と思われます。今後、どんな「リアルな劇中車」が出てくるか、楽しみです。
イラストレーター/ライター
遠藤イヅル
1971年生まれ。大学卒業後カーデザイン専門学校を経て、メーカー系レース部門のデザイナーとして勤務。その後転職して交通系デザイナーとして働いたのち独立、各種自動車メディアにイラストレーター/ライターとしてコンテンツを寄稿中。特にトラックやバス、商用車、実用的な車を好む。愛車はプジョー 309とサーブ 900。
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