日産 NV350キャラバン 福祉車両▲福祉車両の情報、レビューはもちろん、介護や福祉に関する豆知識もお伝えします!

NV350キャラバン チェアキャブ 車いす1+1名仕様

こんにちは、森近恵梨子といいます。私は、介護の仕事をしています。

この記事では、「日産 NV350キャラバン」の福祉車両について、実際に使ってみるとどうなのか。介護福祉士の目線でレビューしていきます。

日産 NV350キャラバン 福祉車両 ▲こちらが、今回試乗したNV350 キャラバン チェアキャブ

日産 NV350キャラバン チェアキャブは、どのような方でも負担なく乗車できる業界でも「最強」なパッケージ。主に医療・福祉施設で使用されています。

乗車定員は、最大10名。車いす乗車が1名の場合は、その他の座席に最大9名。サードシートを折りたたみ、車いす乗車が2名の場合はその他の座席に7名乗ることが可能です。

多くの人が乗れるということは実用的でありがたい一方、窮屈感が気になるところ。窮屈感は、ストレスになり介護の現場では
・利用者が不穏になる
・隣同士の利用者の口論が始まる

といったことが起こるかもしれません。

NV350キャラバン チェアキャブは、室内空間が広く、フル乗車をしても窮屈感がないと感じました。窮屈感がなく、リラックスしやすいのはとても良いことです。

さらにステキなのが「採光窓」。この窓があることで、通常の座席より目線が高くなる車いすの利用者も、外の景色が見られるようになっています。介護職として、利用者が外の景色を見られることは2つの点で嬉しいです。

①利用者と景色について会話でき、外出をより楽しいものに!
「あっ! 東京タワーが見えてきましたね。○○さん行ったことありますか?」「今度、行ってみませんか?」と、思い出話を引き出したり、外出意欲の向上に結びつく会話をすることができますね。

②利用者の不安軽減に!
認知症状をもつ方のなかには、車での移動中に、外の景色が見えないと、どこに連れて行かれているのかがわからず、不安になってしまう人もいます。なじみの景色が見えるだけで、一気に安心できる人もいるでしょう。それは、介護職にとっても助かることです。

小さな窓ですが、この“心遣い”が嬉しいですね。

日産 NV350キャラバン 福祉車両 ▲こちらが採光窓。当事者にならないと分からない視点での“心遣い”ですね

乗り込み口付近にも多くの“心遣い”を発見できます。

実際に乗り降りをしてみて感じたのは、「絶大なる安心感!」。動線の中で、「ここに手すりがあったらいいな」と思う場所に、しっかり付いています。

また、手すりに高さがあるので前かがみにならなくて済みます。なぜ、「前かがみにならない」ことがいいことなのでしょうか?

それは、転倒リスクを下げるからです。人間の頭は重いです。前かがみになると、頭の重みで転倒する可能性が高くなってしまいます。

しかも、NV350キャラバン チェアキャブの手すりをつかんでみると、「つかみ心地がよい」という点に気づきます。合皮で柔らかさがあり、強く握っても負担が少ないと感じました。

ちなみに、手すりの色は、すべてオレンジ。これは、白内障の方でも手すりがはっきり見えるようにという“心遣い”です。

70歳代の84~97%、80歳以上ではなんと100%が白内障の症状がある(初期段階を含みます)というデータ(※1)もあります。手すりがはっきりと見えることで、しっかりとつかめ、乗り降りも安心。ステキな心遣いですね。

日産 NV350キャラバン 福祉車両 ▲こんなオレンジです。手すりを見やすくする工夫は、福祉車両だけでなく多くの介護製品に見られますが、色は各社で様々。「どうしてこの色なのですか?」と聞いてみると、その製品のこだわりが見えて良いかもしれません
日産 NV350キャラバン 福祉車両 ▲シミュレーションしてみました。前向きに降りる方のイメージ。ステップもあるので安心感◎です
日産 NV350キャラバン 福祉車両 ▲今度は後ろ向き。実は、足腰の弱い方だと、こうしてお尻から降りるという場合が多いんです。その際、ちょうど視界に入ってきてつかまれやすい「補助席」部分が、きちんと固定されていました。万が一、手すりとして使われても大丈夫なように工夫してあるそうです。すごい心遣い!

後部の全自動リフターも使ってみました。

リフターが動いているときの音がとても静か。また、スピードがゆっくりで、安定感があり、不安感がありません。車いすの固定も簡単で、しっかり。

音の配慮や、安定感は、特に認知症状を持つ利用者にとっては、重要となります。

例えば、「今からどこへ行くのか」を忘れてしまった際、大きな音や揺れで怖い思いをすると、一気に不安が増し、「はやく家に帰してほしい」「車から降ろしてほしい」といった気持ちになります。それは興奮状態につながることもあります。そうなると、車いすからの転落などのリスクが上がってしまうのです。

また、そうした外出の際に抱いた“不安感”や“恐怖感”は記憶に残り、車を見るたびに、「あの車には乗りたくない!」といった感情が溢れてくるように。そうなると、外出はどんどん難しくなってしまいます。

その点、NV350キャラバン チェアキャブの全自動リフターは静かで、安定感があるので、「安心して使用できる」と感じました。

車いすスペースの横には、荷物置きも用意されています。急にその場で介助が必要になった場合もすぐに対応できるのは便利です。また、近くに職員が座ることができるので、利用者も職員も安心できます。

日産 NV350キャラバン 福祉車両 ▲簡単すぎて、思わず笑みが!
日産 NV350キャラバン 福祉車両 ▲荷物置きもしっかりと。人が乗れても、その人たち分の荷物を積めなければ意味がありませんからね

運転手に対する“心遣い”もありました。

①同程度の定員の車の中でも比較的幅が狭く、狭い道も走れること
②インテリジェント・アラウンドビューモニターという先進安全装備を標準装備


介護職員は、女性が7割以上を占めます(※2)。車の運転に自信のない女性でも、こういった装備が充実していると「私でも、運転できるかも!」という気持ちになれるでしょう。

日産 NV350キャラバン 福祉車両 ▲デイサービスの送迎などでは細い道にも入っていくことが多い福祉車両。360度チェックできるモニターがあるのはとてもありがたいです!

これだけ多くの“心遣い”ポイントがあると知ると、私たち介護職員も心から安心して利用者と外出できます。不安なくサポートすることで、利用者の不安も少なくなり、外出に対する意欲の向上も期待できるでしょう。

大きな車に小さな“心遣い”の散りばめられたNV350 キャラバン チェアキャブ、やはり「最強」のパッケージでした。

文/森近恵梨子、写真/篠原晃一
※1:慶應義塾大学病院医療・健康情報サイトKOMPAS『白内障』より(関連リンクに記載)
※2:介護労働安定センター『平成29年度 介護労働実態調査』の結果より
森近恵梨子

介護福祉士/社会福祉士/介護支援専門員

森近恵梨子

森近恵梨子。ニューヨーク生まれ。上智大学大学院修士課程修了。介護職8年目。小規模多機能型居宅介護→訪問介護→現在、地域密着型デイ立ち上げメンバー。フリーランスとして、ライターや講師もしている。取得資格は介護福祉士/社会福祉士/介護支援専門員。正真正銘の介護オタク。温泉が湧き出るまで、介護を深ーく掘り続けますよ!