【福祉車両】日産 NV350キャラバン チェアキャブ|カタログスペックだけではわからない細やかな配慮のあるモデル
2019/09/05
日産 NV350キャラバン チェアキャブ
広くて使い勝手のよい室内空間が魅力の日産 NV350キャラバン。
これをベースに、主に施設などの送迎用として開発されたのが、NV350キャラバン ライフケアビークル(LV)だ。
同車は、足腰が悪くても乗り降りしやすいよう、オートステップや車内に手すりを用意した送迎タイプと車いすごと載せられるチェアキャブの2種類に分けることができる。
送迎モデルは、10人乗り・標準幅・ロングボディ・標準ルーフモデルから14人乗り・ワイド幅・スーパーロングボディ・ハイルーフまで、使用目的に応じて選べるいくつかのバリエーションがある。
もう一方のチェアキャブモデルも、車いす2名仕様/車いす1名+1名仕様/車いす4名仕様の3モデルが用意されている。
車いす1+1名仕様とは、普段は車いすに乗る人を1名、3列目シートをたためばもう1名・計2名乗せることができるという1台2役モデルだ。
いずれもベースとなっているのは、標準幅・スーパーロングボディ・ハイルーフのNV350キャラバンとなる。
ちなみに標準幅とは全幅1695mmを指す。大きなボディとはいえ幅が5ナンバーサイズのため、このクラスの福祉車両の中では運転しやすいといえるだろう。
さらに、日産車の人気アイテム「アラウンドビューモニター」も標準装備されるので、運転が苦手という人でも扱いやすいはずだ。
あらゆる使い方を配慮した設計が魅力
一般的なリフターはプラットフォーム(車いすを乗せる土台)を持ち上げたり降ろしたりするために、バッタの足のように屈伸するアーム(仮にバッタ式と呼ぶ)が車内に備わる。移動中は折りたたまれた大きな“足”が、車いすに乗る人の左右に構えていることになる。
しかし、NV350キャラバン チェアキャブは、アームをスライド&昇降させる装置にすることで車内のアーム収納部をコンパクトに抑えている。おかげで車いすの人にとっては装置の圧迫感がなく、左右に荷物を置くスペースさえある。
さらにバッタ式は油圧で動かすため音が大きいが、このリフターは電動モーターで作動するので、音が小さい。ささいなことに思えるかもしれないが、これまでバッタ式の音に不安を感じる車いすの人も多かったという。
車いすをプラットフォームに固定する装置も、ワンアクションで済むようにフックの形状が工夫されている。フックを掛けたら電動モーターで素早く確実に固定できる。車いすの人も介助する人にとっても、こうした時短はうれしいポイントだ。
乗車してからの快適性も考慮されている。ボディ後部の天井付近には、天井が標準より高いハイルーフボディを生かして左右に2つずつ窓が設けられた。
車いすの人の目線に近いのはこちらの窓なので、開放感があり、乗車中に外を眺めやすい。
一方で、車いすは使わないけれど足腰が弱いという人のために、スライドドアからの乗降のしやすさに配慮が施されている。
まず、ドアを開けると電動ステップが自動でせり出してくる。実は地上→電動ステップ→車内のステップ→車内の床、という3段の段差がすべて同じになるように、電動ステップの位置や車内のステップが改良されている。
その他、白内障の人でもつかまるところがすぐわかるように、グリップは最も識別しやすいオレンジ色に、また手ざわりがよい素材とつかみやすい形状になっている。
また、シート素材は吐しゃ物をサッと拭き取りやすい素材に変更。マフラーも、車いすを昇降する際に排気ガスが当たらないよう下へ向けられている。
さらに、3列目シートをサッとたためるように足をフックから外せば自動で跳ね上がるようになっているのだが、その跳ね上げる強さまで扱いやすいようチューニングされているなど、細かな工夫が施されている。
長年、日産の福祉車両を手がけてきたオーテックジャパンが、これまでの知見や福祉施設などへの聞き取りなどを基に作りあげたNV350キャラバン チェアキャブ。
カタログのスペックだけではわからない、細やかな配慮のある福祉車両だ。
ライター
ぴえいる
『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はルノーのアヴァンタイムと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。
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