▲シートはBRIDE製のセミバケットシート。ホールド性やドライビングポジションの低さがノーマルとは違った雰囲気でこれもまた良い。ただ形状が限界時の走りに合わせたタイプでもあるため座り心地が少々ハード。街乗りではもう少しソフトであればなぁ~と個人的には感じたが、これはこれでオーナーの好みなら良しなのだ▲シートはBRIDE製のセミバケットシート。ホールド性やドライビングポジションの低さがノーマルとは違った雰囲気でこれもまた良い。ただ形状が限界時の走りに合わせたタイプでもあるため座り心地が少々ハード。街乗りではもう少しソフトであればなぁ~と個人的には感じたが、これはこれでオーナーの好みなら良しなのだ

個人的には社外パーツが施された車を好まないが、オーナーの好みは見えてくる

▲登場から10年前後経過している中古車物件の中には、大なり小なり社外パーツが装着されているものもある。それは、オーナーの好みや不具合による部品交換など、理由は様々。特に趣向性の高いスポーツカー系のモデルは、オリジナル状態を維持している物件が時間の経過とともに減少していく傾向がある。ただ、IS Fをここまでチューニングしている個体は珍しいかもしれない ▲登場から10年前後経過している中古車物件の中には、大なり小なり社外パーツが装着されているものもある。それは、オーナーの好みや不具合による部品交換など、理由は様々。特に趣向性の高いスポーツカー系のモデルは、オリジナル状態を維持している物件が時間の経過とともに減少していく傾向がある。ただ、IS Fをここまでチューニングしている個体は珍しいかもしれない

今回の試乗したのはレクサス IS Fの初期型ベースグレード。2007年式、走行距離8.6万kmの個体だ。

IS Fは、2.5Lまたは3.5LのV6エンジンを搭載したISをベースに、スポーツ走行にも耐えられる420ps以上を発生する5LのV8エンジンを搭載したモデルで、新車時価格も760万円以上という、プレミアムスポーツセダン。

▲登場から10年以上経過しているうえ、社外パーツでチューニングされた個体を試乗した感想をお伝えしたい ▲登場から10年以上経過しているうえ、社外パーツでチューニングされた個体を試乗した感想をお伝えしたい

元々純正のパーツは、強度や安全性にとても神経を使って作られているため、むやみに社外部品に交換するのは私自身、実はあまり好きではない。

もっとも、純正パーツはコストの関係上お金をかけられない部分があるのも事実。

例えばダンパーとスプリングはコスト削減しやすいためか、高価な社外パーツを取り付けると見違えるように乗り心地と安定性が向上するモノもあるから。

ユーザーの好みに車を進化させていくという考えからすると、社外パーツの装着車については好き嫌いではなく、オーナーの好みも知れる良い機会でもあるのだ。

IS F登場の背景にはタクシー専用車をチューニングしたTRDが絡んでいる!?

チューニングされたIS Fを前に、ふと昔の記憶がよみがえる。

みなさんは、トヨタ クラウンコンフォートというタクシー専用のモデルがあったのをご存じだろうか。今でもタクシーとして多くの車両が活躍しているので乗車したことがある方は多いはずだ。

実はあのモデルをトヨタのモータースポーツ事業部であるTRDがチューニングして販売したことがあった。

当時、箱根で開発者を隣に乗せて試乗したのだが、最高に楽しい車だった。あれは現在の“GR”シリーズにつながるアーリーモデルであり、間違いなく貴重なモデルだ。

IS Fの発売前にプロトタイプ仕様を富士スピードウェイで試乗したのだが、開発陣の中にそのTRDのスタッフが混じっていたのだ。

つまり、IS Fはレースを想定した超ハイスピードドライビングも可能なモデルとして開発されていたのだ。

一目でわかるほどのカスタマイズも、オーナーのセンスを感じる1台

▲ワイド化されたリアフェンダーによって、ノーマルより太いタイヤも装着可能。見た目の迫力アップはもちろん、ハイパワーなFR車ほど走行性能の向上が図れる ▲ワイド化されたリアフェンダーによって、ノーマルより太いタイヤも装着可能。見た目の迫力アップはもちろん、ハイパワーなFR車ほど走行性能の向上が図れる

今見ても初代IS Fはハイパワー車の割にこじんまりしとした引き締まったシルエットだ。濃厚な味がデザインからも感じられるこのスタイリングは、当時から好きだった。

今回の個体は社外の車高調が組まれており、かなり最低地上高が低い。加えてリアフェンダーもさりげなくヘミングを外に出してキレイにワイドフェンダー化している。

結果、ノーマルよりもさらにワイド&ロー化されており迫力も増している。

もちろん、見た目だけでなくパワーのあるFRのモデルはタイヤを太くすることでオーバーステアを消す効果も得られる。

見た目の印象を裏切るジェントルな乗り味に思わず感激してしまう

▲走り始めてすぐ気づいたのが乗り心地の良さ。少し走っただけでも初期からダンパーが動いていて、もしかしたら街中でもノーマルよりもずっとしなやかかもしれない(笑) ▲走り始めてすぐ気づいたのが乗り心地の良さ。少し走っただけでも初期からダンパーが動いていて、もしかしたら街中でもノーマルよりもずっとしなやかかもしれない(笑)

アイドリングは見た目に対してジェントル。このギャップもなかなか良い。

エンジンはノーマルだが、元々ヤマハ発動機が専用にチューニングしたエンジンだけあって回転上昇とともに盛り上がってくるサウンドも気持ち良い。

それとアクセルのレスポンスもドラマチックなほど機敏。これは素性の良いエンジンに社外品の吸排気パーツやコンピュータが組み合わさることで得られるフィーリングだ。

あえて欲を言えば、ノーマルのままというATの間延びした感覚。これは社外パーツの装着で起こりやすい現象なのだが、各パーツのスペック変更に伴い車両全体のバランスがノーマル状態と変わったことによって気になる感覚なのだろう。

車高が低いので公道では道路の段差には少々気を使うが、はっきり言って全く不満がない。強いて言うならボディの剛性をもっと高めることで完成度はさらに増すだろう。

全体的には非常にセンスのいいチューニングが施されている車だ。恐らくオーナーの試行錯誤でこの領域までたどり着いたに違いない。こういうセンスの良いチューニングは大歓迎。乗る前の期待を良い意味で大きく裏切ってくれた。

今回は本当にセンス良い車を試乗させてもらった。協力してくれたオーナーに感謝したい。

中古車への考え方と、今初代のIS Fを狙うなら

車にはこういった社外パーツを使って自分のイメージに近付けるよう進化させていく楽しみ方がある。

社外パーツが装着されている中古車ならすでにその領域に踏み入れている車も探すことができる。この領域に興味があるならば、センス良い完成度の高い1台に出会えたら満足度も高いだろう。

一方、バランスを崩したチューニングカーもある。ただ、乗りながらこれを整えていく作業もまた、中古車ならではの楽しみ方と言えるのではないか。

この原稿執筆時点で初代IS Fは80台程度流通している。最安値なら総額200万円台から狙える。

大排気量の自然吸気エンジン搭載モデルは、今後希少価値が高まっていく。伴い、中古車の相場も上昇していく可能性もある。

そう考えると、今が絶好の買い時と言えるかもしれない。

▲ヤマハ発動機が専用にチューニングしたV8 5L自然吸気エンジン。こんなエンジン今後は手に入れにくくなるに違いない。この病みつきになる官能的なエンジンを感じたいなら、手に入れるのは今が絶好のチャンス ▲ヤマハ発動機が専用にチューニングしたV8 5L自然吸気エンジン。こんなエンジン今後は手に入れにくくなるに違いない。この病みつきになる官能的なエンジンを感じたいなら、手に入れるのは今が絶好のチャンス
▲オドメーターは8.6万kmも、オーナーの手入れが行き届いておりそんなに走っているようには思えない内外装のコンディションを維持していた。奥にチラリと見えるスピードメーターは300km/hまで刻まれている ▲オドメーターは8.6万kmも、オーナーの手入れが行き届いておりそんなに走っているようには思えない内外装のコンディションを維持していた。奥にチラリと見えるスピードメーターは300km/hまで刻まれている
text/松本英雄
photo/篠原晃一