▲同じ中古車でも可能な限り新しい年式を買いたいと思うのが人情で、それはもちろん間違いではありませんが、時には「あえて年式を落とす」のがオススメとなる場合もあったりします。写真は現行シトロエン C3 ▲同じ中古車でも可能な限り新しい年式を買いたいと思うのが人情で、それはもちろん間違いではありませんが、時には「あえて年式を落とす」のがオススメとなる場合もあったりします。写真は現行シトロエン C3

フレンチ・コンパクト3兄弟(?)は「ちょい古」が逆にステキ

「新車は予算的にちょっと厳しいからワタシは中古車狙いでいこう」と思っている人、少なくないかと存じます。で、「中古車とはいえ、その中でもできるだけ新しい年式を買った方が何かといいんだろうな…」とおぼろげに考えている人の数も、それなりに多いでしょう。

でもそれ、実はそうとも言い切れない部分があります。

いやもちろん、車というのは基本的には設計も年式も新しければ新しいほど、古めの車と比べて何かと優れている部分が多いのは事実です。でも、もしもあなたが「ちょっとこじゃれたフレンチ・コンパクトを中古で買ってみようかな」と考えているのであれば、もしかしたら、あえてちょっと古めの年式にしてみた方が逆にシアワセになれるかもしれません。

それは例えばフランス産の現行人気モデル、プジョー 208とシトロエン DS3、そしてシトロエン C3の中古車を狙っている場合です。

▲こちらはプジョーのエントリーモデルに相当するプジョー 208。日本デビューは12年11月でした ▲こちらはプジョーのエントリーモデルに相当するプジョー 208。日本デビューは12年11月でした
▲同じPSAグループのシトロエンブランドから発売されたプレミアム・コンパクト、シトロエン DS3。日本市場に登場したのは10年3月で、現在DSは独立した一つのブランドという位置づけになっています ▲同じPSAグループのシトロエンブランドから発売されたプレミアム・コンパクト、シトロエン DS3。日本市場に登場したのは10年3月で、現在DSは独立した一つのブランドという位置づけになっています
▲こちらは現行シトロエン C3の前期型。DS3と同じいわゆるコンパクトカーと呼ばれるジャンルの車ですが、DS3 はシトロエンの中の上級ラインで、こちらは比較的ベーシックな通常ラインです ▲こちらは現行シトロエン C3の前期型。DS3と同じいわゆるコンパクトカーと呼ばれるジャンルの車ですが、DS3 はシトロエンの中の上級ラインで、こちらは比較的ベーシックな通常ラインです

新発明のセミATより古典的ATの方が実は快適?

これらのモデルはデビュー当初、いずれも6MTまたは4速ATを採用していました。最近はわざわざMTの運転免許を取る人も少ないので6MTについては割愛しますが、ATは普通の4速ATだったのです。ま、何をもって「普通のAT」というかは、車にさほど興味がない人にとっては謎かもしれませんが、ホントいわゆるフツーの形式のオートマです。専門用語で言う「トルクコンバーター付きAT」ってやつですが、細かい用語は気にしなくていいです。とにかく、ごく普通のオートマでした。

しかし、それがある時期から「ETG5」という名前の5速セミATに変更されたのです。これも用語はいちいち覚えなくていいですが、ETG5というのは5速のMTを自動変速してくれるタイプのオートマで、軽量・コンパクトで高効率(=燃費が良い)というのがウリでした。

そのウリは確かにそのとおりなんですが、一つ問題がありました。それは「変速時にちょっとギクシャクする」ということでした。

▲シングルクラッチ式セミATも、慣れればそれなりにスムーズに変速させることはできるのですが、それでも、伝統的なオートマほどのなめらかな変速はちょっと難しい部分があるかもしれません。写真はプジョー 208 ▲シングルクラッチ式セミATも、慣れればそれなりにスムーズに変速させることはできるのですが、それでも、伝統的なオートマほどのなめらかな変速はちょっと難しい部分があるかもしれません。写真はプジョー 208

ごく普通のATというのは、AT内にある液体を通してエンジンの力を各ギアに伝えています。機械と機械を直につなげるのではなく途中に液体をカマしていますので、「動きがなめらか」という美点がある半面、「どうしたって伝達ロスが生じる」という欠点もあります。そのためある時期、ETG5のようなダイレクトにつながってる系のセミATが流行ったのですね。ダイレクトにつなげば途中の伝達ロスが減り、結果として燃費とかが良くなりますから。

しかし、そういったセミATは、機械と機械を直につないだがゆえに生じる「変速時のちょっとしたギクシャク感」みたいなものを完全に払拭することはできませんでした。慣れればスムーズに変速できなくもないのですが、やっぱりどうしたって軽くギクシャクはするんです。

そしてその後、世の中のトレンドがどうなったかといいますと、ちょっと前までは古くさい過去の遺物と思われていた「ごく普通のトルクコンバーター付きAT」が復権を果たしました。液体をカマしているのでどうしたって伝達ロスはあるわけですが、エンジニアたちの努力と創意工夫により、最新のトルコン付きATはかなり高効率なものに生まれ変わったのです。

で、「同じように高効率なら、変速がスムーズなトルコンATで良くね?」みたいな感じで、一時は(これも用語は覚えなくていいですが)シングルクラッチ式やデュアルクラッチ式のセミATを採用していた車たちは今、こぞって「ごく普通のトルクコンバーター付きAT」に回帰しています。

 

新車もオススメだが、そうでなければやや古めの年式を!

そして、今回取り上げているプジョー 208とシトロエン DS3、シトロエン C3もその例外ではなく、あるときからETG5を捨て、最新のトルコン式ATに変更しました。そのため、現在新車として販売されているこれらフレンチ・コンパクトはすべてETG5ではなく、形式的にはごくフツーのATです。しかしAT自体が新世代のものとなり、そこに最新設計のステキな3気筒エンジンを組み合わせていますので、いろいろな面でかなりイイ感じです。

「じゃ、新車を買うのがいちばんじゃない?」という結論になりますが、それはもうそのとおり。もしもご予算に余裕があるのなら、カーセンサーとしてはいちおう立場的にビミョーなんですが、それでも新車をオススメしたいと思います。

しかし、今は冒頭で申し上げたとおり「新車は予算的にちょっと厳しいからワタシは中古車狙いでいこう」と思っている人に向けてお話しをしています。そしてその場合は、ここまで延々とご説明してきた理由により「中途半端に新しい年式のセミAT中古車を狙うより、普通のオートマだった初期の年式を狙った方が、逆にシアワセかもしれませんよ?」という結論になるのです。

プジョー 208の場合は13年末までのAT車が普通のオートマを採用していて、シトロエンのDS3とC3は14年1月までのAT車が普通のオートマです。でもまぁその日付もいちいち覚えなくて大丈夫です。下の物件リンクに「とりあえず普通のスムーズなATを搭載している物件たち」を集めましたので、気になる方はそちらをチェックし、もしもあなたにとって良さげな1台があったなら、ぜひ販売店に問い合わせてみてください。よろしくお願いいたします。

▲写真は現行シトロエン C3の、左ハンドル+6MTとなる本国モデル。そもそも日本仕様がMTオンリーならばATに関するややこしい話もしないで済むのですが、AT比率の高い日本ではなかなかそうもいきませんしね ▲写真は現行シトロエン C3の、左ハンドル+6MTとなる本国モデル。そもそも日本仕様がMTオンリーならばATに関するややこしい話もしないで済むのですが、AT比率の高い日本ではなかなかそうもいきませんしね
text/編集部
photo/プジョー・シトロエン