「安いから」とかではなく、積極的に「あえて旧型!」を選びたい2つの理由
2017/01/30
▲写真は旧型ルノー カングー。09年のフルモデルチェンジで生まれた現行型の方が何かと高性能なのは間違いないのですが、それでも「あえての旧型」としたい理由があるのです
「小ぶりで軽快」という、かけがえのない価値
細かな部分にいろいろ例外もあるだろうが、基本線としては、車というのはフルモデルチェンジを経るたびに各種の性能が向上していく。それゆえ運動性能や快適性、安全性などがより優れている車が欲しいのであれば、同じ車種であっても型遅れの中古車よりはバリバリの新車を買うべきであり、中古車限定で考えるとしても「現行型」に絞って検討すべきだろう。
だがそれはそれとして、中には「やっぱオレ/ワタシは1つ前の世代、つまり旧型の方が好きなんだよねえ……」と感じさせる車もあるものだ。つまり「あえて旧型!」という積極的な姿勢で臨みたくなる型遅れ車だって、世の中には存在するのである。
例えばそれはルノー カングー。
▲こちらが02年3月から09年8月まで販売された旧型ルノー カングー。全長4035mm×全幅1675mmという日本の道にジャストフィットするサイズと、1170~1200kgという軽さが魅力だった
▲こちらは09年9月デビューの現行ルノー カングーの最新バージョン。諸々の要請により全長4280×全幅1830mmと大型化。車両重量は写真のアクティフ6MTでも1430kgとなる
写真上の現行モデルは当然何かとステキな車であり、旧型と比べてボディサイズがかなり大柄になったため、積載性もずいぶんと向上した。
しかし「大柄になって積載性が向上した」というのは現行カングーの美点であると同時に、考え方によっては「欠点」でもあるわけだ。
なぜならば、全長が現行型より約25cm短く車幅が約16cm狭い、そして車重が260kgほども軽かった旧型カングー最大の魅力である「荷物グルマなのにやたらと軽快」という部分を、現行カングーは積載性等向上とのトレードオフで失ったとも言えるからだ。
もちろんこのあたりのモロモロは人によって評価が変わる話なので、当たり前だが「カングーは旧型こそが絶対的な善で、現行型は悪である」と申し上げているわけではない。受動安全性やその他の時代の要請で肥大化せざるを得ない現行世代より、設計とかはちょっと古いけど、小ぶりで軽快だった旧型の方が魅力的に思える場合だってありますよ、そしてその代表格がルノー カングーですよ……という話である。
ミニ クラブマンも、何かと出来がいいのは現行型だが……
現行型がサイズ的に肥大化したことにより、旧型が魅力的に思えるようになった車としてもう一つ、ミニ クラブマンがあるだろう。
これも話の構造はルノー カングーとほぼ同じで、比較的小ぶりな旧型は小ぶりゆえに軽快で、なかなかステキな車だった。しかし小ぶりゆえに、「シューティングブレーク(狩猟用ワゴン車)のくせに積載性は大したことない」という欠点も抱えていた。
▲こちらが07年10月登場の旧型ミニ クラブマン。旧型ミニの3ドアハッチバックをベースに全長を240mm、ホイールベースを80mm延長し、後席と荷室を拡大。そして後席右側に「クラブドア」という小さめのドアを設けている。「クーパー」は全長3935mm×全幅1685mm
▲15年11月登場の現行ミニ クラブマン。旧型比で全長は+290mmの4270mm、全幅は同+115mmの1800mmに拡大され、「プレミアム・ショートワゴン」とでも呼ぶべきサイズ感に生まれ変わった
その欠点をまるごと解決したのが現行ミニ クラブマンで、全長は旧型比で30cm近く長くなり、車幅も12cmほど拡大。これにより、その気になれば本当に狩猟に行けるほどの見事なシューティングブレークに生まれ変わった。まぁ今の日本で「趣味は狩猟です」という人も少ないだろうが。そしてそのついでに(?)全体の剛性感や走りの質感のようなものも極度に向上したため、普通に考えればミニ クラブマンは旧型よりも現行型の方が断然「いい車」である。
だが「狩猟はさておき、趣味や買い物などでも、特に大量の荷物を載せる予定はない」という人で、なおかつ「やや小ぶりな車で気楽にスイスイ走るのが好き」という人であるならば、立派な体格となった現行クラブマンはむしろ過剰で、小ぶりな旧型の中古車を探すことこそが幸せにつながる可能性は高い。
「エンジンに関しちゃ旧型が最高!」というパターンも
ルノー カングーとミニ クラブマンは主にサイズと重量の話だが、中にはエンジンフィールの観点から「あえて旧型!」と言いたくなる車種もある。代表的なのはアルファロメオ ジュリエッタに対してのアルファ147だろうか。
▲01年10月から11年3月まで販売されたアルファロメオの小型FFハッチバック、アルファロメオ 147。基本となるエンジンは名機の誉れ高い1.6Lまたは2Lの直列4気筒DOHC「ツインスパークエンジン」。その他、147GTAはスペシャルチューンが施された3.2L V6 DOHCを搭載する
▲車名はまったく異なるが、位置づけとしては147の後継モデルにあたるアルファロメオ ジュリエッタ。直噴テクノロジーを駆使した1.4Lまたは1.7Lのターボチャージャー付き直列4気筒を採用している
アルファロメオといえば昔から「エンジンフィールがやたら官能的」ということで知られるブランドだが、さすがに今の時代は「ガソリンをガンガン燃やして二酸化炭素もいっぱい出すけど、その分エンジンフィールは最高ですよ」という商売は世間から許されない。そのため、アルファロメオも直噴ターボの採用や小排気量化などによりエコロジー・コンシャスなエンジンを開発し、現在はそれを各モデルに搭載している。
現行ジュリエッタに搭載されている直列4気筒の直噴ターボエンジンは、その類のエンジンの中ではフィーリング的にもかなり健闘している部類に入ると思う。なかなか気持よく回転する官能的なエンジンではある。
だがしかし、「しょせん」といっては言葉が過ぎるかもしれないが、やはりガソリンをたくさん燃やしていた往年のアルファロメオ製またはフィアット製エンジンの艶っぷりと比べてしまうと、どうしたってやや物足りないフィーリングとなることは避けられないのだ。
それゆえ、車としての総合力はもう間違いなく現行ジュリエッタの方が上であり、ほとんどの人にはむしろ「147よりジュリエッタ買った方がいいと思いますよ!」と強く勧めたいぐらいなのだが、もしも「エンジン一芸主義」を採用している人がいるのであれば、その人には、ジュリエッタの前身にあたるアルファ147の方をあえてオススメする不肖筆者である。
以上、まるで新型車を否定し、人類の進歩を否定するかのような文章で大変恐縮だが、決してそうではない。冒頭で申し上げたとおり、いわゆる「総合的に見ていい車」が欲しいのであれば、やはり最新世代を選ぶに越したことはない。ただ、旧型の中には「安いから」「予算的にそれじゃないと無理だから」等の後ろ向きな理由だけではなく、前向きなマインドで「あえて選ぶべき旧型」も存在するということを、少々申し上げたかったのである。敬具。
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