▲現行型『カングー』の中古車相場は65万~269万円。平均価格は167.8万円、平均走行距離は3.6万km、平均年式はH24年式。掲載台数は77台と豊富だ(5月20日現在) ▲現行型『カングー』の中古車相場は65万~269万円。平均価格は167.8万円、平均走行距離は3.6万km、平均年式はH24年式。掲載台数は77台と豊富だ(5月20日現在)

カメラマンにも人気のオシャレで使い勝手のいいフランス車

車選びには様々な視点がある。とにかくスペックにこだわり、走りの楽しさを味わえる車。人とはかぶらない個性を主張できる車。実用性重視で道具として使える車。それぞれの選び方に主義主張があるので、どれが正しいなどと言うつもりは毛頭ない。今回は、これらの中でも、人とかぶらない個性的な車に乗りたい。欲を言えば、乗っているとセンスを感じさせる車に乗りたい人に向けた1台を紹介したい。

ここで難しいのは、個性的だったり、センスがある=オシャレな車というのは、得てして使い勝手が悪かったりすることだ。もちろん、優先順位をつけて割り切れればいいのだが、車は安い買い物ではない。買い物に使いづらかったり、チャイルドシートが付けづらかったり、はたまた、趣味などのレジャーに適さなかったりする理由で、家人に反対されてしまうこともあるだろう。

オシャレな佇まいで、かつ実用的。できれば、価格的にもこなれている中古車。そんなオシャレパパを満足させる都合のよい1台があるのだろうか。そう考えていると、意外と近いところで答えを見つけてしまった。

編集者という仕事柄、カメラマンやスタイリストと仕事をする機会があるのだが、そこで彼らが乗っていた車がその答えだ。前置きが少々長くなったが、その1台とは、フランスの自動車メーカー、ルノーの『カングー』である。
 

背が高い物から長尺物まで。使い勝手のいい荷室

『カングー』は、2002年にデビューしたマルチパーパスカー。現行型は、2009年にモデルチェンジした2代目である。今回オススメしたいのは、この2代目だ。 まずは、『カングー』がどんな車かを簡単に説明しておこう。

コンセプトは、ラテン語で遊びを意味する「LUDOS」とフランス語で空間を意味する「ESPACE」を組み合わせた「LUDOSPACE(ルドスパス)」。それだけに、広い室内空間は大きな特徴のひとつだ。荷室はシートをすべて起こした状態で660L、ハンドルを引くだけでフォールドする後部座席を折りたためば2866Lの容量が出現。IKEAやニトリで家具を買ったり、コストコでまとめ買いをしても余裕で詰める広さだ。
 

▲リアシートだけでなく助手席シートも可倒式なので、長尺物を積むこともできる。天井にも物入れがあるなど、細かい使い勝手も抜群
▲リアシートだけでなく助手席シートも可倒式なので、長尺物を積むこともできる。天井にも物入れがあるなど、細かい使い勝手も抜群

冒頭に話したカメラマンやスタイリストがカングーを選ぶ理由もここにある。仕事柄、荷物が多いため、重宝していると言っていた。ちなみに、花屋さんもカングーを愛用していることが多いのだが、これは積載量の多さに加えて、1810mmという全高も関係している。鉢物などを運ぶ際には助かるのだという。

全体のサイズは、全長4215mm x 全幅1830mm x 全高1810mm。初代に比べると大幅にサイズアップしている。5ナンバーサイズの頃のカングーオーナーからは、別物呼ばわりされることも。もし、コンパクトで積載量が多く、かつ個性的でオシャレな1台を望むなら、旧型を視野に入れてもいいだろう。
 

▲写真は旧型カングー。全長が短くよりハイトワゴン感が強い。中古車相場は8万~179万円
▲写真は旧型カングー。全長が短くよりハイトワゴン感が強い。中古車相場は8万~179万円

実用車というだけでなく、室内の快適性も高い

ただ、大型化による室内の拡大は、『カングー』をファミリーカーとしても進化させたと感じている。前席も後席も足回りはゆったりとしており、特にリアシートは3人乗車でも余裕がある。チャイルドシートを装着しても狭苦しくないのはありがたい。もちろん、頭上の圧迫感もない。

さらに、欧州車ならではの厚みのあるシートは、固すぎず柔らかすぎずのふわしっかりとしたかけ心地。実家への帰省やレジャーなど長時間ドライブでは、このあたりの作りが腰の疲れを左右するので、重要なポイントだ。
 

▲カングーの後席は3人分のセパレートシート。前席の背面にはドリンクホルダー付きの折りたたみテーブルがあり、快適性も高い
▲カングーの後席は3人分のセパレートシート。前席の背面にはドリンクホルダー付きの折りたたみテーブルがあり、快適性も高い

ドライブでもうひとつ重要なのが動力性能。エンジンは1.6Lターボで、最高出力105ps/最大トルク148n・m。スポーツカーではないのでスペックで話をしてもしかたないが、ターボエンジンなので、街中の加速でもたつくことはない。発売当初は、揺れが少なく、安心がある足回りも話題になった。

ちなみに、フロアを二重構造にして、ホイールハウスの内側に15mmの遮音材を挿入することで静粛性が向上。旧型と比べ体感騒音を50%軽減させているという。このあたりも、快適なドライブに一役買っている。
 

日本車とはひと味異なる個性的な外観が最大の魅力

さて、積載量の多さと必要十分な走りが『カングー』の魅力だと述べてきたが、もちろん、それだけでカメラマンやスタイリストなどのクリエーターに愛されるわけがない。では、その理由はなんなのだろか。それが、『カングー』が持つ最大の特徴、「個性」である。

初代と比べると、全くと言って良いほどデザインが変わったフロントマスクだが、その愛嬌のある佇まいは健在。正面から見ると、ライトは少しつり上がった目、ルノーエンブレムが鼻、フロントグリルが口のように感じられ、ほ乳類のかわいらしい顔を想起させる。
 

▲フロントマスクには新世代のルノーデザインを採用。大きく角度が立てられたルノーロゴや、そこからヘッドライトまでつながるブラックグリルバーなどが特徴的だ
▲フロントマスクには新世代のルノーデザインを採用。大きく角度が立てられたルノーロゴや、そこからヘッドライトまでつながるブラックグリルバーなどが特徴的だ

個人的には、少し長くなった全長とハイトワゴンの背の高さ、ほ乳類系のフロントマスク、これに、カングーのイメージカラーであるイエローが加わると、映画『となりのトトロ』に出てくる猫バスを思いだしてしまう。小さな子供が喜んでくれそうなスタイリングだ。

最近は、日本車でもデザイン性が高いハイトワゴンが増えてきているが、それらと比べても遜色ない、というよりも一線を画す存在感。実用性を重視しながらも、個性も主張できる、オシャレパパにオススメできる車であることは間違いない。
 

text/コージー林田
photo/ルノー・ジャポン