▲軽量スポーツばかりがもてはやされるが、世の中には「重量級の楽しみ」もある。写真は現行BMW X3 ▲軽量スポーツばかりがもてはやされるが、世の中には「重量級の楽しみ」もある。写真は現行BMW X3

「貫禄」とか「豪快」とか、そういった方向のドライビングプレジャー

過日、NHKの朝番組に俳優の渡辺徹さんが出演していた。40代である筆者からするとドラマ「太陽にほえろ!」での颯爽としたイケメン若手刑事の印象が強い渡辺さんだが、その後見事に太ってしまい、過日の番組で見た際もやっぱり太っていた。が、筆者は「なんかいいな」と思った。

男女を問わず若い人というのは「スリムであること」を強く求めるし、渡辺さんや筆者のようなおっさんであっても、そりゃスリムであるに越したことはない。しかし最近になってしばしば思うのが、「太りすぎはもちろんどうかと思うが、かといって“痩せすぎなおっさん”というのもいかがなものか」ということだ。

ある程度年を取ってくると、痩せすぎていると「貧相に見える」という側面も生まれてしまう。そうであるならば、もちろん成人病などには注意する必要があるが(渡辺徹さんも12年に心臓のカテーテル手術を受け、結構大変だったようだ)、ある程度の肉はあった方が福々しいというか何というか、ステキなおっさんに見えるのではないかと思うのだ。

それと似たようなことは車の世界でもいえる。

▲ベースグレードは車重1tを切るほど軽量な新型マツダ ロードスター。もちろん超ステキな車だが ▲ベースグレードは車重1tを切るほど軽量な新型マツダ ロードスター。もちろん超ステキな車だが

昨今の新型マツダ ロードスターやホンダ S660の例をあげるまでもなく、車好きというのは車に「ライトウェイト」であることを求めがちだ。もちろん物理の法則からいって、動的性能を追求するなら車は軽い方が絶対に有利なので、車好きが「軽量」を求める気持ちはわかるというか、実際正しい。筆者だって個人的には極力軽い車を好む。

しかしスリムな若手イケメン俳優だけでなく、現在の渡辺徹さんや石塚英彦さん(まいうーの人)にも彼ら独自の魅力があるように、軽くない車、つまり「デカくて重い車」にだって独自の魅力は宿っているのだ。

女性の中には石塚英彦さん(まいうーの人)的な体格の男性を「クマさんみたいで落ち着く! 安心できる!」と好む人も多いが、男だって似たようなものだ。デカくてゴツいクロカンやSUVの方が落ち着くというか安心できるという人も多いのである。当然、そういった車ではマツダ ロードスターのような走りは絶対にできないが、別に誰しもが曲芸的コーナリングをしたいと思っているわけではない。「直線を豪快に、しかし安全に突き進む!」というのも立派なドライビングプレジャーのひとつである。

さて、そういった渡辺徹的、石塚英彦的な魅力を輸入車に求めるのであれば「とりあえずデカいクロカンかSUVを買っとけ」ということになる。あくまで一例だがメルセデス・ベンツのGクラスや英国のレンジローバーなど、そういった車だ。

▲写真はメルセデス・ベンツ G63 AMG。豪快さんな方向を目指す際の超定番モデルだ ▲写真はメルセデス・ベンツ G63 AMG。豪快さんな方向を目指す際の超定番モデルだ

しかし、その手の車というのはどうしても物理法則からいって「好燃費」にはなりにくい。や、もっと率直に言ってしまえばイマイチな場合が非常に多いのだ。具体的には、現行Gクラスのカタログ燃費はG350ブルーテックでも8.5km/Lであり、現行レンジローバーのオートバイオグラフィは7.4km/L。……お世辞にも好燃費とは言えない水準である。

この手の車(デカくて豪快なクロカン/SUV)を好む人は、おそらくはこのあたりの数字はあまり気にしないのだろう。豪快さんな感じで「よっしゃ、よっしゃ! そんなんワシ気にせんし!」と。それはそれでひとつの人生であり、他人がとやかく言うべき問題ではない。しかし筆者個人の性格および収入からすると「極悪燃費」はどうしても避けたいところであり、またそう考える人はそこそこ多いだろうとも推察する。

では、筆者のような人間(そこそこ燃費が気になる人間)が、豪快系クロカンまたはSUVが欲しいと思った場合、何を選べば良いのだろうか?

答えはいくつかあるだろうが、さしあたって有力候補と思うのが現行BMW X3だ。

▲2011年3月に登場した第2世代のBMW X3。四輪駆動システムの「xDrive」を全車に採用 ▲2011年3月に登場した第2世代のBMW X3。四輪駆動システムの「xDrive」を全車に採用

2004年に登場した初代X3はコンパクトSUVブームの世界的な先駆けであり、それゆえ豪快さんなボディサイズではなかった。しかし現行X3、つまり2代目のBMW X3はずいぶん立派になり、今やその寸法は初代X5とほぼ同じだ。ちなみに全長と全幅はメルセデス・ベンツ Gクラスよりデカい。まさに「堂々たるコンパクトSUV」という、ちょっと逆説的な存在なのだ。

しかし燃費は(この手の車としては)まずまず良好だ。年次やグレードにより様々だが、2L直噴ターボ搭載グレードで13km/L以上、クリーンディーゼル搭載車なら18km/L以上というのが、現行X3のJC08モード燃費。現行X3よりも小柄なレンジローバー イヴォークの同燃費が9~10.7km/Lであることを考えると、現行BMW X3は「豪快さんなのに好燃費」と評せると思うのだが、どうだろうか。そしてもちろん、SUVといってもBMWのSUVなので、オンロードでは下手なスポーツカー顔負けの動的性能を披露できることは言うまでもない。……素晴らしいじゃないか。

▲SAV(Sport Activity Vehicle)を名乗るだけあって、オンロードでのスポーツ性能はクラス随一のレベル ▲SAV(Sport Activity Vehicle)を名乗るだけあって、オンロードでのスポーツ性能はクラス随一のレベル

ということで、今回のわたくしの(ある種の人々への)オススメは、ずばり「現行BMW X3」だ。

text/伊達軍曹