▲フィアット傘下となり車台はFFになったが、往年のアルファ純血V6エンジンも搭載していた時代のアルファロメオ各車が今回のお題。写真は3.2Lのスペシャルエンジンを積んだ「アルファ156GTA」 ▲フィアット傘下となり車台はFFになったが、往年のアルファ純血V6エンジンも搭載していた時代のアルファロメオ各車が今回のお題。写真は3.2Lのスペシャルエンジンを積んだ「アルファ156GTA」

普通に買えていた普通の車が、今や「貴重品」になってしまった

過日、自家用車をルノー メガーヌRSモナコGPから某箱車に買い替えた。メガーヌRSが嫌いになったわけでは一切なく、単純にライフスタイルの変化に伴う買い替えなわけだが、F-X(次期主力戦闘機)選考は困難を極めた。なぜならば、筆者が求める「できれば全幅5ナンバーサイズで、シンプルな作りで、オートマじゃなくてMTで、荷物がそこそこ積めて、それでいてデザイン的にしゃれているもの」という条件に見合う車は、2015年の今となってはほぼ絶滅ともいえる状況だからだ。

まず新車で考えると、多くの輸入車が「できれば全幅5ナンバーサイズ」という条件に合致しない。一部にルノー トゥインゴやフィアット 500など全幅1700mm未満の車もあるにはあるが、そういったコンパクトカーだと「荷物がそこそこ積めて」という条件を満たせなくなる。で、いきおい普通ぐらいのサイズの車を探してみると、最近のモデルの全幅は軒並み1750mmとか1800mmとかであることに気づく。ちなみに現行メガーヌRSの全幅は1850mm。いやはや、最近の車は本当に恰幅がいい……。

▲筆者がこのたび売却した現行ルノー メガーヌRS。全幅1850mmということで駐車には難儀した ▲筆者がこのたび売却した現行ルノー メガーヌRS。全幅1850mmということで駐車には難儀した

もちろん新車ではなく中古車のなかから探せば、条件を満たすモデルは結構な数が存在する。しかし、筆者が求めるのは要するに「スリムでおしゃれな実用車」ということなので、「スリム」という条件を満たすには、全体的に恰幅が良くなった1~3年ぐらい前のモデルではなく、5年とか、下手をすれば10年以上前に発売されたモデルを選ぶ必要がある。要するに古めの車だ。そうなると今度は中古車としてのコンディションが微妙であったり、コンディション良好なものは希少価値のようなものが出てしまい、結構な高値となっている場合も多いのである。

結局筆者は、やや割高であることを承知のうえで、そのモデルの相場上限に近い「結構な高値」の1台を買った。本当は「シンプルな実用車をシンプルな予算で買う」つもりだったのだが、結果として結構なプレミアム価格を市場に奉じることになってしまったわけだ。

▲ちなみに今回筆者が購入したのは初代ルノー カングー最終年式の5MTです ▲ちなみに今回筆者が購入したのは初代ルノー カングー最終年式の5MTです

このことからわかるのは、筆者が購入したモデルに限らず「昔ながらの魅力を備えている輸入車」というのは全般的に、そろそろ普通に買うのはやや難しいタイミングになってきた……ということだ。

厳密に5ナンバーサイズである必要はないが、かさばらない寸法で、シンプルなトランスミッションで、そして最近のエココンシャスなエンジンと違って「ブン回す歓び」が感じられるエンジンで……という車は、昔はそれこそ星の数ほど存在していたのだが、今となってはある種の貴重品になってしまったのだ。

そしてその貴重品の数は、歳月とともに今後どんどん減っていくことだろう。それゆえあなたがもしもそういった「昔ながら系」を好むのであれば、決して脅かすわけではないが、できれば早めに買い求め、自分の元で手厚く保護した方がいい。さもないとそういった「貴重品」は近い将来絶滅するか、もしくは上モノだけが割高な値段で売買される状況になると思われるからだ。

そういった保護対象とすべき特別な車は多数あるが、なかでも早急に手を打ちたいのは「純血V6エンジンを搭載したFFアルファロメオ」だ。具体的にはGTAを含むアルファ 156と147GTA、GTV、GT、そして先代のスパイダーである。

▲写真は筆者が数年前に所有していたアルファロメオ アルファGTV 3.0 V6 24V ▲写真は筆者が数年前に所有していたアルファロメオ アルファGTV 3.0 V6 24V

FR時代のアルファロメオというのはある意味「空冷ポルシェ 911」のようなものなので、わざわざ保護に乗り出さずともマニアの皆さんが勝手に、半永久的に保護してくれる。しかし上記のモデル群はマニア車としてはいささか中途半端ともいえるため、放っておけばどんどんボロくなり、最終的には絶滅してしまう可能性もなくはないのだ(まぁGTAは生き残るでしょうが)。

FR時代のモデルと比べれば、上記のFFアルファはいささか「薄い」とは言えるのかもしれない。しかしあのエンジンは、特にV6エンジンは、本当に素晴らしく官能的である。燃費は正直イマイチだが、燃費がイマイチゆえに、今後はああいった官能的なエンジンが新品として世に出てくることはまずない。現在のアルファロメオが搭載するエココンシャスな直噴ターボエンジンも決して悪くはないのだが、こと官能性という面では明らかに旧世代V6の方に軍配が上がるだろう。

▲目の保養にもなるアルファGTVのV6エンジン。燃費は7km/Lぐらいだったが、その音といい高回転域でのフィーリングといい、とにかくエロティックで最高なエンジンだった ▲目の保養にもなるアルファGTVのV6エンジン。燃費は7km/Lぐらいだったが、その音といい高回転域でのフィーリングといい、とにかくエロティックで最高なエンジンだった

保護した旧世代アルファロメオを大事に使い倒すのか、それとも博物館に展示するかのようなニュアンスで飾っておくのかは人それぞれだ。お好きになさればいい。とにかく言いたいのは「買うなら早めに!」ということだ。筆者が今回買った某箱車も、あと1年早く買っていれば、もしかしたら今回以上の安値で、今回以上の品質の1台を買えたのかもしれない。

そのあたりは「たられば」であるため何とも言えないが、いずれにせよ今回のわたくしからのオススメは「純血V6エンジンを搭載したFFアルファロメオ」だ。

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  • Car:アルファロメオ 156&147&GTV&GT&スパイダー
  • Conditions:V6エンジン搭載モデル
text/伊達軍曹