▲現行ルノー ルーテシア。ボディ表面に大胆なうねりのあるデザインは、まるで2000万円超級のスーパーカーのよう ▲現行ルノー ルーテシア。ボディ表面に大胆なうねりのあるデザインは、まるで2000万円超級のスーパーカーのよう

昔から走りはいいのに、とにかくデザインが日本人向きじゃなかったようで……

人間でも企業でも「ノリにノッてる時期」というのがある。やることなすことすべてが大当たりで、仕事をすればなぜか超大口の注文をいとも簡単に獲得し、誰かにちょっとアドバイスを与えると、それを受けた人間がいきなり大きな結果を出す。そして年末ジャンボ宝くじをテキトーに買えばなぜか大当たりで……というような時期だ。まぁ最後の宝くじは別として、なぜか訪れるそういった黄金期というのはたまにあることだ。そして今、車の世界で言うとルノーが黄金期を迎えているような気がしてならない。

ちょっと前までのルノーは、ここ日本では一般的に「乗るとイイらしいんだけど、何だかよくわかんないんだよね~」というような扱われ方で、少数のマニアだけに愛好される車だった。それは主に、脆弱なディーラー網という割と決定的な問題に加え、「デザインがなんだかよくわからない」というのが大きな問題であったと筆者は考えてる。なんだかよくわからないデザインといえば、例えばコレだ。

▲1998年から2006年まで販売された2代目ルーテシアの後期型。前期型は可憐な顔だちだったんですが…… ▲1998年から2006年まで販売された2代目ルーテシアの後期型。前期型は可憐な顔だちだったんですが……

クリオⅡこと2代目ルーテシアの後期型だが、この顔、いったい何を表現したかったのだろうか? もしかしたらフランスの皆さんはわたしとは美的センスが少々違い、これに何の疑問も持たないどころが「C'est tres beau !(とても美しい!)」とか言うかもしれない可能性はある。が、とにかくわたしとしてはこの顔はどう考えてもあり得ず、それに賛同していただける人は多いと確信している。

しかし2004年に登場した2代目メガーヌの頃からだろうか、ルノー車のデザインに変化が現れはじめた。従来からの「なんだかよくわからない感じ(いわば前衛性)」と、車を広く売るうえでは非常に重要な「ポピュラリティ(大衆性)」とが上手いことミックスされてきたのだ。例えば2代目メガーヌのお尻である。

▲写真はスポーツモデルの「ルノースポール」。なんとも言えないお尻の突き出しがキュートです ▲写真はスポーツモデルの「ルノースポール」。なんとも言えないお尻の突き出しがキュートです

このプリッとしたステキなお尻は、どう見てもミニバンなのにルノーとしては「クーペです」と言い張っていたアヴァンタイムのお尻のデザインを踏襲したものだが、アヴァンタイムでは前衛的すぎたそれが、ちょうどいい塩梅に大衆化され、誰が見ても「あぁ、美しいですね!」と感じるデザインに昇華されている。勝手な想像にすぎないが、ルノーはこの時期、自らのデザイン的アイデンティティと「売るためのツボ」のようなものを上手に融合させるコツをつかんだのだろう。デザインに関しては素人のくせに上目線で大変恐縮だが、そうとしか思えないほど、その後のルノー車は素晴らしいデザインとなった。

例えば2011年に登場した現行メガーヌ。

▲こちらもスポーツモデルの「ルノースポール」。写真では見えてませんがコレのお尻もキュートというかセクシー ▲こちらもスポーツモデルの「ルノースポール」。写真では見えてませんがコレのお尻もキュートというかセクシー

マイナーチェンジにより現在はこれとはちょっと顔つきが異なるモデルが販売されているが、歌舞伎の隈取を思わせるフロント周りのデザインと、リアにかけての絶妙な絞り込み。それでいてアバンギャルドすぎないこの造形はもう見事というほかない。

そして2013年9月に登場した現行ルーテシアでは、その艶っぽすぎる面のうねりはスーパーカーの域に達している。……小型車なのに!

▲小型車ばなれしたデザイン性と質感を炸裂させている現行ルーテシア ▲小型車ばなれしたデザイン性と質感を炸裂させている現行ルーテシア

ということで現在のルノー、特に現行メガーヌと現行ルーテシアは大変素晴らしいデザインを手に入れた。それゆえ、小型~中型のハッチバックを探している人はもう後顧の憂いなく買うしかないのだ……と断言したところで、ここまでデザインの話しかしていないことに気がついた。「デザインはさておき、車そのものについてはどうなんだ?」というのは当然の疑問だろう。それについてはこう答えたい。

「最高ですよ。ていうかルノーは昔から最高だったんですよ。デザインがアレなもんだからみんな気づかなかっただけで!」

そう、ルノーの車は(希に例外もあるが)どれも乗っても大変素晴らしい。具体的には「すべての当たりが柔らかいのに、芯はしっかりしている」という乗り味だ。……あまり具体的な説明じゃない気もしてきたが、とにかく「物凄いハイテクや突出したパワーなどを擁しているわけではないのに、妙によく走る」というのがルノー車である。それはルノーに限らずフランス車全般に言えることなのだが、そういったフランス車の美点をもっとも色濃く体現しているのがルノーの車であると、不肖筆者は考えている。

そんなルノーが、走りの良さだけでなくついに「わかりやすい美しさ」も手に入れたのが、現行メガーヌと現行ルーテシアだ。ルーテシアは登場間もないということで中古車相場はまださほど安くはないが、現行メガーヌは人気のRS(ルノースポール)も200万円台で十分狙えるようになってきている。ここはひとつぜひわたしの話を信用していただき買っていただくか、もしくはわたしのことが信用できない場合はご自身で販売店などに行って試乗し、その数々の美点を実際に確かめていただきたいと切に願うものである。

ということで今回のわたくしからのオススメは現行型のルノー メガーヌおよびルーテシアだ。

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  • Car:ルノー メガーヌ(現行型)&メガーヌエステート(現行型)&ルーテシア(現行型)
text/伊達軍曹