メルセデス・ベンツ 500E|伊達セレクション
写真上はW124型メルセデス・ベンツ Eクラスに5LのV8DOHCエンジンを搭載したモンスターセダン「500E」。そもそも屈強なW124の各部をさらに強化しているため、操縦感覚における「兵器っぽさ」というか無敵感は指折りで、ほとんどティーガーⅠ戦車の車長にでもなった気分になる。写真下の964型までの空冷ポルシェ 911はサイズがコンパクトなため、屈強でありながら軽快。さしづめレシプロ戦闘機の傑作メッサーシュミット Bf109といった感じ。いや、空冷なのでフォッケウルフ Fw190か?
ポルシェ 911|伊達セレクション
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最近のドイツ車は「兵器っぽさ」が足りない?

話の展開上、いきなり私事に触れることをお許しいただきたい。自分は最初のうちこそフランスのルノー車を2台乗り継いだが、その後は6台続けてドイツ製の中古車に乗っていた。

当時ドイツ車専門誌の仕事をしていたから、という理由もあるのだが、それ以上に「好きだから」という理由のほうが強かった。が、ここのところは3台続けてイタリア/フランス車であり、たぶん今後もラテン系の中古車を買い続けることになると思う。

なぜ、自分はドイツ車趣味をやめてしまったのか。それは「最近のドイツ車はあまり好みじゃないから」というシンプルな理由なのだが、もう少し掘り下げて「ではなぜ、昔のドイツ車は好きだったのに、最近のはそうでもないのか?」と考えてみたところ、ひとつの理由に思い至った。

それは「兵器っぽさ」の不足である。

ちょっと昔のドイツ車、具体的にはメルセデスのEクラスが生産効率重視のW210型(先々代)に変わり、そしてポルシェ 911のエンジンが水冷化された90年代半ば以前のドイツ車には、妙に「古典的な兵器っぽさ」があった。そして自分はそこを好いていたのだ。

90年代半ばまでのドイツ車は「松本零士の世界」

例えば当時のメルセデスの怪物セダン「500E」に乗ると、その頑強さや設計の過剰っぷりにより、まるで旧ドイツ軍のティーガー戦車隊の一員になったかのような高揚を覚えたものだ。もちろん、戦争やナチスを賛美するつもりなど毛頭ないのは当然である。そうではなく、「男子は皆、松本零士先生の戦場まんがシリーズとチャンバラごっこが好き!」みたいな部分における話だ。さしづめM・ベンツ 500Eはティーガー戦車で、空冷ポルシェ 911はメッサーシュミット Bf109か。

無論、伝説のティーガーⅠと現代のレオパルト2が戦えば勝負にすらならないのと同様に、往年の“高性能”ドイツ車の性能それ自体は、最新世代の中庸モデルにすら敵わないかもしれない。しかし絶対的な性能ではなく「松本零士先生的なロマン」を好むのであれば、狙うべきドイツ車は90年代半ばより前の硬派スポーツモデルである。

が、それらはさすがに年式的に古くなってきた。ある程度の手間暇とお金をかける覚悟は必要であり、今後時間が経つにつれてその傾向はさらに強まるだろう。「今がラストチャンスですよ!」的に煽るのは下品ゆえあまりやりたくはないのだが、正直、それら「兵器」を楽しむのは今がラストチャンスに近いかなとも思う。松本零士先生の世界を好むドイツ車愛好家は、早めの決断が必要だろう。

ということで、今回の伊達セレクションはずばりこちら。
兵器っぽかった時代の名作ドイツ車、狙うならお早めに!


文・伊達軍曹 text/Sergeant DATE