フォルクスワーゲンup!|伊達セレクション
銀座アップルストア前にて。フォルクスワーゲンup!のシンプルなデザインは、アップルのiPhoneのそれにも似た良さを感じる人は多いだろう。この車両はhigh up!というグレード(4ドア)で、15インチアルミホイールやクルーズコントロール、パークディスタンスコントロールが付く上級版。内装のダッシュパッドもボディカラーに応じた3種類のカラーになる。
フォルクスワーゲンup! インパネ|伊達セレクション
●伊達軍曹公式サイト「伊達軍曹.com」
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フォルクスワーゲンup!は本当に「黒船」なのか?

遅ればせながらフォルクスワーゲンの最新鋭小型車「up!」に試乗した。グレードはhigh up!である。up!の海外および国内試乗会に参加したジャーナリストらのリポートには、「up!はすごい!」「日本の小型車ヤバイよ! 全部駆逐されちゃうよ!」「up!とは黒船である!」的なことが主に書かれていた。かなり凄いらしい。

日本の小型車が駆逐されるのはいいが(←いや良くないか)、そのときはおそらく同時に輸入コンパクトの他モデルも駆逐され、そしてわたしの主戦場である中古の輸入コンパクトも駆逐されるのだろう。世の中全体がそうなれば、輸入中古車評論家のわたしは廃業一直線である。

しかし、人づてではなく自身の目でup!の力を確かめなければ、死んでも死にきれない。いや、納得して廃業することができない。ということで「心の廃業届」を胸ポケットにしまいつつ、わたしは広報車のピックアップへ向かった。

確かに素晴らしい。が、黒船による「維新」は起きない

乗った。素晴らしい車であった。唯一、「ASG」の自動変速モードのみ閉口したが(1速→2速の変速ショックが大きすぎる)、自動変速モードは「ないもの」と考え、「あくまでクラッチペダルのないMT車なのだ」と念じながら常に手動変速で走れば問題はない。

それ以外の「走る機能」は最高だ。日本の実用小型車はちょっと速度を上げたり、ちょっといい感じで曲がろうとすると、「馬脚を現す」とは言い過ぎだが、まあ若干アレになる場合が多い。しかしup!はほとんど同社のゴルフ並みだ。いや、厳密に言えばいろいろ違うが、少なくとも「速度を上げたり曲がったりする際にドライバーが感じる安心感」という部分では、up!とゴルフの差は少ない。軽自動車に毛が生えたぐらいのサイズなのに!

ここまで走り関係が素晴らしく、そして安いということは、自動車評論家らが言うとおり世の中すべての小型車はup!という黒船に駆逐されるのだろうか? そして、そのついでに不肖伊達も廃業せざるを得ないのだろうか?

答えは「否」である。up!以外の輸入コンパクトも、そしてその中古車も、変わらず存在意義をもち続ける。無論、一部はup!に確実に食われるだろうが、黒船襲来→明治維新に匹敵するほどのドラスティックな変化は起きないはずだ。

なぜならば、up!は「安価な移動用機械」としては最高に近いが、そこには「無駄」「遊び」といった類の要素がないからだ。あるいは、少ないからだ。人がパンのみで生きてるわけじゃないのと同じように、車も、そりゃメインは「移動のため」だろうが、移動自体と直接の関係はない目的のために乗られることだってあるのだ。極端な例だけど「夕日を追いかけるため!」とかね。

ということで、今回の伊達セレクションはずばりこちら。
up!もいいけど、「思わず夕日を追いかけたくなるロマンチックな中古コンパクト」もいいものですよ!

文・伊達軍曹 text/Sergeant DATE