▲新型タイプRにはない、最後の「NA」エンジン+コンパクトなボディが特徴のシビックタイプRユーロ▲新型タイプRにはない、最後の「NA」エンジン+コンパクトなボディが特徴のシビックタイプRユーロ

新型タイプRの抽選に漏れても落ち込む必要はナシ

いきなりですが、シビックタイプRの商談権利に当選された方々、おめでとうございます。うらやましい限りです。なにせたったの750台ですからね。かくいう私も申し込んだひとりでして、「ホントに当たっちゃったらどうしよう」なんて気をもんでいたんですが、はい、杞憂に終わりました。

メーカーのホームページを見ると、当選者の中で成約に至らない場合のみ、まだチャンスは残されているようですが、それもそこまでの人数は出ないでしょうからね……。そうなるとあきらめるか、中古が出てくるのを待つしかないわけですが、数年後ならいざ知らず、直後はプレミア価格で販売されそうな予感がします……。

となるとやっぱりあきらめるしか……となるのですが、買えないと分かった途端、“欲しいモード”に火がつきまくるんですよね(自分もですが……)。でも、モノはない……いや待てよ、あの車があるじゃないですか、「シビックタイプRユーロ」が。

新型にはない「NA」という魅力

2009年11月に登場したシビックタイプRユーロは、英国ホンダで生産されたいわゆる逆輸入モデルで、独創的なフォルムと欧州で鍛えられた高い運動性能が特徴です。なんてことはもうご存じだとは思いますが、もうちょっとお付き合いくださいね。

車の心臓部であるエンジンには、2Lのi-VTECを搭載。このエンジンがタダモノじゃありません。ポート表面を滑らかに仕上げる“NSX製法ヘッドポート処理”により、吸排気抵抗を低減。吸排気系やバルブタイミングの最適化によって、高回転・高出力を実現しています。

最高出力は201ps、最大トルクは19.7kg・m。2Lの自然吸気(NA)エンジンでこのスペックという時点ですごいのですが、最高出力の発生回転数が、なんと7800rpm。まるでレーシングカーのような高回転型エンジンです。ひとたびアクセルを踏み込めば昇天すること間違いなし。新型シビックタイプRはターボ化されたので、この突き抜けるNAならではの爽快感は、新型では味わえない魅力です。

▲官能的なエンジンは、DBW(ドライブ・バイ・ワイヤ)などを採用し、出力とレスポンスを両立しています ▲官能的なエンジンは、DBW(ドライブ・バイ・ワイヤ)などを採用し、出力とレスポンスを両立しています
▲3本スポークにアルミ製の球形シフトノブ、赤と黒のインテリアは不変です。ここに座るとテンション上がるんですよね ▲3本スポークにアルミ製の球形シフトノブ、赤と黒のインテリアは不変です。ここに座るとテンション上がるんですよね
▲レッドゾーンは8000回転から。ここまで回すと、もれなくシビれるような快感が味わえます ▲レッドゾーンは8000回転から。ここまで回すと、もれなくシビれるような快感が味わえます

プレミアは付かずに価格が下落

そして当たり前のことですが、新型より安いです。また2010台と台数限定だったこともあって、プレミアが付くかと思いきや意外や意外、フツーに値落ちしているんですよね。しかも、それなりに台数も流通しているんです。

原稿執筆時点では全国での流通量は約50台、ボリュームゾーンは170万円台~230万円台程度。新車時の価格が約300万円なので、決してオトク感が高いとは言えませんが、プレミアが付いた新型の中古物件を買うことを考えれば、圧倒的に安いはずです。

具体的な物件を見てみると、100万円台中盤~後半の物件は、修復歴のあるものや走行距離のかさんでいるものが中心。200万円を超え出すと、修復歴なし+走行5万km以下の物件が出てくるといった感じです。安心して乗りたいという場合は、過度なカスタムをしているものは避け、このあたりの価格の物件を狙いたいところです。

一方で、修復歴ありのものや多走行車を買うというのも賢い買い方のひとつです。ただしその際は、必ずもしものときに備えてカーセンサーアフター保証を付けること(付けられる物件を選ぶこと)。そうすれば、安く安心して乗ることができるはずです。

新型は言うまでもなく楽しい車なのでしょうが、このシビックタイプRユーロもまた、新型にはない魅力を備えています。ターボになったタイプRではなく、“あえて”NAのタイプRに乗る。今やフェラーリもターボを積む時代ですから、逆にNAのスペシャルエンジンを搭載するこのモデルは希少な存在。そう考えれば、新型が隣に来ても、なんら負い目を感じることはないはずです。えぇ、もちろん新型タイプRの抽選に応募していたことは内緒で!

text/金子剛士
photo/本田技研工業