「輸入車エリート」たちよ、今こそ100万円以下のフォルクスワーゲン up!に乗れ!
2016/01/14
装備内容とセミAT問題をどうとらえるべきか?
輸入中古車評論家を自称するわたしだが、自慢じゃないがカネはない。いや日々の食事に困窮するほど貧乏しているわけではないが、それでも輸入車を買う際は「おおむね100万円まで!」をなんとなくの目安としながらニッポンの中流ド真ん中を生きている。
で、おおむね100万円ぐらいの予算でお手頃かつナイスな輸入車をカーセンサーnetで検索する際、とにかく数多くヒットするのがフォルクスワーゲン up!だ。
ベーシックな「move up!」なら走行数千km程度の物件が総額おおむね100万円で狙え、装備充実の「high up!」であっても走行1万kmぐらいの個体を総額100万円前後で狙うことができる。となれば、「アンタ、自慢じゃないがカネはないっていうなら、それ(up!の中古車)を買えばいいじゃないか」という意見もあるだろう。……確かにそのとおりなのだが、簡単には踏み切れない自分もいる。
なぜならば、up!はステキな小型車ではあるものの、ビミョーな点もなくはないからだ。
フォルクスワーゲンup!の中古車価格がここ日本で妙に安い理由は、まず第一に「至れり尽くせりの日本車と比べてしまうと装備がやや貧弱」というのがある。いや必要な各種装備はフツーに付いており、ESPやABSの他にシティエマージェンシーブレーキ(低速域追突回避・軽減ブレーキ)も全グレードに標準装備されている。だが、いわゆる「快適装備」「豪華装備」は少々弱いのだ。
今どきは軽自動車でもエアコンはフルオートが当たり前だが、up!はいちおう普通車なのに手動。前席はパワーウインドウだが、4ドアモデルの後席ウインドウは手動でグルグル回してちょっと開くタイプ。それゆえ国産車に慣れている一般的なユーザーからは敬遠され気味となってしまい、その結果として中古車相場はどうしても安くなる。
第二の理由として「シングルクラッチ式のセミAT」がある。
コツをつかめば割とスムーズに変速させることも可能なトランスミッションなのだが、フツーにそのまま運転しようとすると少々ギクシャクする。ツインクラッチ式のDSGが搭載できれば最高だったが、重量の関係でかなわず(DSGというかDCTは機構自体がけっこう重いため、up!のように小さな車にはマッチしないのだ)、一時期うわさされた「MTのup!が正規輸入される」という話も、その後いっこうに実現しない。それゆえ一般的なユーザーからもマニア筋からも敬遠され気味となってしまい、その結果として中古車相場はどうしても安くなる。
一般人には短所に見える部分も、エリートにとっては「長所」になる?
だがしかし、up!の「1年落ちとか2年落ちとかの輸入車が総額100万円」という事実が魅力的であることは間違いない。またそもそも、クラスを完全に超越したあの鉄壁な走りは素晴らしい。ていうか、ある種の人にはup!って実はかなり刺さる車なんじゃないか……ということをツラツラ考えているうち、ひとつの解答に思い至った。
フォルクスワーゲンup!の中古車とは、ずばり「オールドスクールなラテン系コンパクトの代替品」として最適なのである。
ここでいう「オールドスクールなラテン系コンパクト」とは、ルノー 5やプジョー 205、初代フィアット パンダ、シトロエン AX等々の、要するに80年代から90年代初頭にかけて一世を風靡し、そして今なお一部の愛好家が強烈に好んでいる往年の主要ヨーロピアンコンパクトカーのことだ。
大したエンジンパワーがあるわけではなく(どちらかといえば非力で)、足回りの機構などもごくオーソドックスなのに、妙によく走る往年の主要ヨーロピアンコンパクト。そして今となっては若干使いづらい部分もあるのだが、そこが逆にイイというか、そういった部分を自分なりに御していくことに喜びを感じられる、往年の主要ヨーロピアンコンパクト。
だが時の流れにあらがうのはなかなか難しいため(簡単に言うと、もはやかなり古くなっちゃったため)、どうしたって昨今はもうちょっと新しい世代の車に乗り替える必要も出てきている。が、乗り替えたい車は現在の輸入車ラインナップにはない……という愛好家も世の中には多いはずだ。過去ルノー5バカラという車に乗っていた筆者も、まさにそんな感じの1人である。
そういった者の受け皿として、フォルクスワーゲン up!の中古車はなかなかイケているのだ。
「非力でオーソドックスな機械なのに妙に速い」というのはまさにそのまんまであり、「若干使いづらい部分もあるが、それを御していくのが楽しい」というのはup!のセミATだ。「素人衆が普通に運転すれば少しギクシャクするアレも、俺さまにかかれば楽勝さ」とやれるのは、筆者を含む往年の主要ヨーロピアンコンパクト愛好家としてはなかなかチャレンジングにしてマニアックな楽しみである。
往年のヨーロピアンコンパクトにいつまでも乗れるなら、それに越したことはない。しかし、何にだって限界や潮時というものはある。もしも何らかの理由により限界/潮時を感じているのであれば、F-X(次期主力戦闘機)としてぜひ100万円ぐらいのフォルクスワーゲン up!にもご注目いただきたいのだ。フツーの町衆には理解しづらい部分もある車だが、自動車変態道のエリートたる往年のヨーロピアンコンパクト愛好家諸君にとっては、そのあたりは逆に「勲章」であるはずだ。
ということで、この文章がほんの少しでも刺さったエリート諸君は、ぜひ前向きにご検討を。車自体は、ある種の人には絶対に刺さる出来栄えですから……!
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