「きっと、あなたのココロが走り出す。」“Your heart will race.”そんなテーマをもつ東京モーターショー2015の見どころとして各メーカーのコンセプトカーたちは外せない。コンセプトカーは今すぐには手に入らないけれど、今買える車たちだって、その時代時代の人々が考えた素敵な未来を具現化するために生まれてきたのだ。今回は最新のコンセプトカーがもつテーマに通ずる「今、手に入る車たち」をセレクトした。

▲カーゴエリアがオープンになったユニークなスタイルの「スズキ MIGHTY DECK」。軽サイズの中で、4名乗車もちゃんと実現されています ▲カーゴエリアがオープンになったユニークなスタイルの「スズキ MIGHTY DECK」。軽サイズの中で、4名乗車もちゃんと実現されています

オープンデッキを主役に仕立てたデザイン

使い方に応じて可動するオープンデッキ(荷台)とキャンバストップを備えた「遊べる軽」、それがスズキのコンセプトモデル「MIGHTY DECK(マイティデッキ)」。「都会と自然」「ウチとソト」「オンとオフ」など、相反する2つのシーンを自由に行き交う「アーバンアウトドア」をコンセプトとしているとのことで、ちょっと’80~’90年代のRVブームをほうふつとさせる車ですね。

ウッド調のオープンデッキ部分には屋根がなく、開放されています。キャビン内部もウッド調として、デッキと連続性をもたせたデザインに。リアゲートを倒せばベンチのように腰掛けることもできそう。何となく楽しそうな雰囲気を感じさせますが、実際の使い勝手は……。その微妙な実用性に、ピンときましたヨ。あの車の再来なのではないか、と。

▲使い勝手に応じてオープンデッキは自動で昇降。荷台のキャパは小さそうだけど…… ▲使い勝手に応じてオープンデッキは自動で昇降。荷台のキャパは小さそうだけど……

デビュー当初のモデルこそコンセプトに忠実でした

ここでスズキが’80年代に販売していたマイティボーイ、通称マー坊を想像するのは、少々短絡的すぎます。いや実際には「MIGHTY DECK」の開発陣も意識していたとは思いますが……。私がピンと来たのは、かつていすゞが乗用車を作っていた時代に生まれた迷車、Mu(ミュー)。

Muとは「ミステリアス・ユーティリティ」の略で、実用性はともかく、自由に使ってみてね! という不思議なメッセージが込められていました。デビュー当初(1989年)のモデルはBピラーから後ろがオープンになっていて、ソフトトップもしくはピックアップ的なハードカバー、いずれも2名乗車(!)という二択。コンセプトカー以上に振り切った車でした。

もっとも、そのミューもデビュー翌年には4名乗車のメタルトップが、後に5ドアモデルのウィザードが追加され、実用性に配慮した仕様へと変わっていきました。ショートデッキのピックアップって、マリンスポーツを楽しむユーザーなどにとってはすごく便利ですよね。

▲中型クラスのSUVなのに2名乗車、という割り切りが素敵だった「いすゞ Mu」。写真は輸出仕様のAmigo(アミーゴ)で4名乗車仕様 ▲中型クラスのSUVなのに2名乗車、という割り切りが素敵だった「いすゞ Mu」。写真は輸出仕様のAmigo(アミーゴ)で4名乗車仕様
▲トヨタ bB オープンデッキもコンセプトとしては「MIGHTY DECK」に近いかも。デッキの使い勝手は……正直ビミョーです ▲トヨタ bB オープンデッキもコンセプトとしては「MIGHTY DECK」に近いかも。デッキの使い勝手は……正直ビミョーです
text/田端邦彦 photo/スズキ、いすゞ、ゆさお