「きっと、あなたのココロが走り出す。」“Your Heart Will Race.”そんなテーマをもつ東京モーターショー2015の見どころとして各メーカーのコンセプトカーたちは外せない。コンセプトカーは今すぐには手に入らないけれど、今買える車たちだって、その時代時代の人々が考えた素敵な未来を具現化するために生まれてきたのだ。今回は最新のコンセプトカーがもつテーマに通ずる「今、手に入る車たち」をセレクトした。

▲東京モーターショー2015で展示されたホンダ プロジェクト2&4 powwered by RC213V

二輪車の開放感と四輪車の運動性能のいいとこ取り

今年9月のフランクフルトモーターショーで世界初公開となった話題のコンセプトモデル「ホンダ プロジェクト2&4 powered by RC213V」が東京モーターショーで日本初公開される。

こちらは世界中のホンダ二輪および四輪デザインスタジオから80名以上のデザイナーが参加して行われた社内コンペ「グローバルデザインプロジェクト」で選ばれたコンセプトモデルで、1960年代のF1マシンをモチーフにしたデザインがその大きな特徴。ミッドシップエンジンレイアウトを採用する四輪車でありながら、二輪車のようなフレームとボディカウルによって構成されるボディ構造や、全身でオープンエアを体感できる運転席など、二輪車の開放感と四輪車の運動性能を兼ね備えたモデルに仕上がっているという。

搭載エンジンは、MotoGP(FIMロードレース世界選手権)参戦マシンである「RC213V」の公道仕様車「RC213V-S」に搭載されている最高出力215ps/13000rpmのV型4気筒999cc。二輪車ならではの超高回転エンジンであり、そこに専用開発の6速DCTを組み合わせている。

英国の「セブン」とある意味似た部分も?

当然ながらこの車には未試乗であるゆえ、コックピットからどのような風景が見え、何を感じるのかは、現時点では「想像」をしてみるほかない。しかし、むき出しのフロントサスペンションが動く様がしかとドライバーの視界に入り、そしてドライバー自身も(ある意味)むき出しとなっているその雰囲気は、何かに非常によく似ている気がする。

いや当然、前述のとおり「1960年代のF1マシンをモチーフにしたデザイン」ゆえ、60年代のF1マシンに似ているのは当たり前なのだが、それではなく、市販車の何かに似ているような気が……とうなっていたときに思い出したのがコレだ。

英国ケータハムの「セブン」である。

名門ロータス・カーズが製造販売していた「ロータス セブン」の生産中止が決定した際、英国の小規模自動車メーカーであるケータハムがその製造権を取得し、エンジンや前後サスペンションに独自の小変更を加えながら現在に至るまで製造販売しているのが「ケータハム セブン」。それに、ホンダプロジェクト2&4 powered by RC213Vは何となく似ているのだ。

▲「ロータス セブン」の権利を譲渡されたケータハム社が作る、当時とほぼ同じ形状のクラブマンスポーツである「ケータハム セブン」。写真は1.6Lエンジンを搭載する仕様であるセブン270 ▲「ロータス セブン」の権利を譲渡されたケータハム社が作る、当時とほぼ同じ形状のクラブマンスポーツである「ケータハム セブン」。写真は1.6Lエンジンを搭載する仕様であるセブン270

ある意味気軽に買えるのは「黄色ナンバーのセブン」

理想を言えばホンダプロジェクト2&4 powered by RC213Vがそのままの形で市販され、それを手に入れるのが一番なわけだが、実際ははなかなか難しいだろう。そもそも市販されるかどうかが謎であるわけだからして。仮に市販されるとしても、ずいぶん先になる可能性が高いはず。

それゆえ、もしもあなたが「今すぐホンダプロジェクト2&4 powered by RC213Vが欲しい!」と思ったとしたら、それはいさぎよくあきらめて「ケータハム セブン」を買うしかないのだ。

長きにわたって作られているセブンだけあってその中古車は年式も価格も千差万別だが、ある意味もっとも気軽に買えるのは「軽自動車のセブン」であるケータハム セブン160だろう。

セブン160はサイズ、エンジン排気量とも日本の軽自動車規格に合うよう特別に設計されたモデルで、エンジンはスズキ製の660cc直列3気筒。それを乾燥重量わずか490kgの車体に搭載しているのだから、その走りはホンダプロジェクト2&4 powered by RC213V並みで……とまではたぶんいかないはずだが、まあ「近い」何かは絶対に感じられるはず。

また「軽のセブン」というのがそもそもネタとしてかなりおいしいため、チャレンジ精神あふれる諸兄ならびにウケを取りたい諸兄は、ぜひ「軽のセブン」に注目していただきたい。

▲なんと日本の軽自動車規格に収まるセブンである「セブン160」。エンジンの最高出力は自主規制値の64psを上回る80psだが、全幅は1470mmにナロー化されている ▲なんと日本の軽自動車規格に収まるセブンである「セブン160」。エンジンの最高出力は自主規制値の64psを上回る80psだが、全幅は1470mmにナロー化されている
text/伊達軍曹
photo/ケータハム、ゆさお(編集部)