▲1989年、インテグラに初搭載されたVTECエンジン。1.6Lで最高出力160ps、最大トルク15.5kg-mを実現 ▲1989年、インテグラに初搭載されたVTECエンジン。1.6Lで最高出力160ps、最大トルク15.5kg-mを実現

VTECエンジンの歴史は1984年の「NCE計画」から始まった

2015年4月に登場した5代目ホンダ ステップワゴン。リアゲートが上方向だけでなく横方向にも開く「わくわくゲート」が好評で、新車が好調に売れています。中古車流通量が増えてくるのが楽しみなミニバンのひとつですが、ステップワゴンは今回のモデルチェンジでもうひとつ大きな変革を行いました。

それは搭載エンジンが、2LのNAから新開発された1.5L VTECターボに変わったこと。排気量を小さくして燃費性能を高めつつ、ターボで過給し2.4LのNAエンジン並みのトルクを発生させることもできるエンジンです。

VTECという言葉、みなさんも一度は聞いたことがあるはず。これはホンダが開発した可変バルブタイミングリフト機構(Variable Valve Timing & Lift Electronic Control System )の名称です。文字どおり、バルブの開き方を変えてエンジンのパフォーマンスを上げようという発想から生まれました。

4サイクルエンジンは「吸気」「圧縮」「燃焼」「排気」という4つの行程で発生したエネルギーを動力に変換しています。吸気と排気では回転する「カム」を使ってバルブを動かしますが、従来のエンジンは低回転時と高回転時でバルブが動く量を変えることができません。そのためエンジンは低速重視か高速重視、どちらかの設定にする必要がありました。

VTECは回転数に応じて大きさの異なるカムとロッカーアームでバルブを動かし、バルブが動く量を調整。燃料混合気の吸気量を変化させて効率的にパワーを引き出せるようにしたものです。

そんなVTECエンジンは1984年の「NCE(New Concept Engine)計画」で開発がスタート。ホンダの研究員たちは「自然吸気でリッター100馬力」を目指したといいます。そして1989年4月にデビューした2代目インテグラに初搭載。1.6L VTECエンジン(B16A型)は最高出力160psを7600rpmという高回転域で達成しました。

1990年9月に登場したNSXには3L V6 DOHC VTECを搭載。NAエンジンで当時の自主規制いっぱいの280psを実現しました。そして1995年9月には6代目シビックの1.5Lモデルに低回転、中回転、高回転、3つの領域で吸気バルブタイミングとリフト量を切り替える3ステージVTECを搭載しました。

その後もホンダは多くのモデルにVTECエンジンを採用。2000年からはi-VTECエンジンを搭載しています。

そして2013年11月、VTEC技術と直噴ターボによる出力向上で排気量のダウンサイジングを実現するVTECターボを開発したと発表。VTECターボは2L 4気筒、1.5L 4気筒、1L 3気筒の3種類があります。この1.5Lターボが今回、ステップワゴンに搭載されたものです。

▲VTECの搭載で話題となった2代目インテグラ。1.6L DOHC VTEC搭載のMTモデルが160馬力、ATモデルは150馬力となった ▲VTECの搭載で話題となった2代目インテグラ。1.6L DOHC VTEC搭載のMTモデルが160ps、ATモデルは150psとなった
▲大排気量車の馬力競争が激化する中、NSXは3L VTECエンジンでNAながら自主規制いっぱいの280psを達成した ▲大排気量車の馬力競争が激化する中、NSXは3L VTECエンジンでNAながら自主規制いっぱいの280psを達成した
▲1.5L 3ステージVTECが初搭載された6代目シビック。低速域では1バルブが休止状態となって燃費向上を図る仕組み ▲1.5L 3ステージVTECが初搭載された6代目シビック。低速域では1バルブが休止状態となって燃費向上を図る仕組み
▲新型1.5L VTECターボを搭載する現行型ステップワゴン/ステップワゴンスパーダ。2Lが当たり前だった5ナンバーハイトワゴンに新たな常識を持ち込んだ ▲新型1.5L VTECターボを搭載する現行型ステップワゴン/ステップワゴンスパーダ。2Lが当たり前だった5ナンバーハイトワゴンに新たな常識を持ち込んだ
▲イギリスで発売され、日本への導入も噂される新型シビックタイプRに搭載される2L VTECターボ。最高出力は310psに達する ▲イギリスで発売され、日本への導入も噂される新型シビックタイプRに搭載される2L VTECターボ。最高出力は310psに達する
text/高橋 満(BRIDGE MAN)