▲物理的にも精神的にも小回りが利くのが軽箱バンの魅力。写真は80年式スバル サンバー ▲物理的にも精神的にも小回りが利くのが軽箱バンの魅力。写真は80年式スバル サンバー

硬派なブランドイメージ、そして究極のオーバースペック

釣り車の先代ルノー カングーを車検整備に出している関係で、ここ最近は電車で近場のポイントに通っている。それを通じて思うのは「やっぱ電車、不便だな……」ということだ。や、電車釣行には電車釣行の良さがあり、一部ではプチブームになっていることも知っているつもりだ。また筆者の自宅から近場のポイントまではドア・トゥ・ドアでもせいぜい約20分である。結構近いのだ。

しかしそれでもやはり、道具を抱えて駅まで歩き、電車内でジロジロ見られ、現場でガチャガチャとセッティングを始めるのはけっこう面倒くさいものだ。電車釣行を敢行するたびに、例えどんな車であっても「車」があった方が釣りは快適であるし、そしてもしも近場専門であれば「軽の箱バン」およびそれに準ずるワゴン乗用車が、いろいろな意味で最強なんだろうなぁと痛感する。身軽だし、ガシガシ使えるし。

▲ちなみにココが筆者が電車で行く多摩川の某所。向こう側に写っている電車に乗れば自宅からすぐ ▲ちなみにココが筆者が電車で行く多摩川の某所。向こう側に写っている電車に乗れば自宅からすぐ

で、もしも筆者が近場専門の釣り師だったら、数ある軽箱バンの中からどれを選ぶだろうか? 

以前、筆者の個人ブログに「先日、軽の箱バンならぬ『軽トラ』で釣りに来てる人を見かけました。荷台に10本ぐらい長短、様々なロッドを立てて、カッコ良かったですよ!」という意味のコメントを頂戴した。わたくしもそれは超絶カッコいいと思うが、ロッドやその他道具の盗難問題を考えると、都市部では残念ながら実現困難なスタイルと言えるだろう。ここはやはりルーフ付きの箱バンでいきたいところだ。

スズキのエブリイ、ダイハツのアトレーおよびハイゼット、ホンダのアクティ……。世の中には様々な軽箱バンおよびそれに準ずる乗用ワゴンがあり、そのどれもがそれなりにステキな使い勝手と乗り味を誇っている。それゆえ基本的にはどれを選んでも可だと思うのだが、あえて1台を選ぶとすれば、個人的には「旧型スバル サンバーのスーパーチャージャー付き」だろうか。

▲1961年から続くスバル サンバー。写真は旧型(6代目)の07年式サンバーディアスワゴン ▲1961年から続くスバル サンバー。写真は旧型(6代目)の07年式サンバーディアスワゴン

現行の7代目スバル サンバーはダイハツ ハイゼットカーゴのOEM供給版となったが、スバルの自社開発だった時代のサンバーは、軽商用車としては非常にレアな「直列4気筒エンジン」をリアに搭載し、そして後輪を駆動させるというリアエンジン・リアドライブを採用。そしてクラス唯一だった「四輪独立懸架」を採用したことで、特にその軽トラ仕様は「農道のポルシェ」とも評された伝説の名車だ。

4気筒エンジンが後方にあるため運転席まわりは軽商用車としては異例なほど静かであり、そしてその走りは四輪独立懸架の恩恵により路面に吸い付くような感触で……と、まさに軽商用車というジャンルを飛び越えたオーバースペックな逸品だったのである。

▲さすがは技術にこだわるスバル。軽商用車なのに直4エンジンをリアに搭載し、四輪独立サスも! ▲さすがは技術にこだわるスバル。軽商用車なのに直4エンジンをリアに搭載し、四輪独立サスも!
▲後席をたたんで荷室をフラットにすれば、小さいボディでもかなりいろいろな道具類を積載可能 ▲後席をたたんで荷室をフラットにすれば、小さいボディでもかなりいろいろな道具類を積載可能

で、そのスーパーチャージャー付き仕様は意外に、というかなんというか結構な韋駄天マシンで、軽商用車で感じがちな“かったるさ”のようなものはほとんどない。

パワフルな分だけ、同ジャンルの他車と比べて燃費がイマイチなことも考えられるが、遠征用ではなく「近場スペシャル」としてとらえるのであれば許容範囲なはずだ。特に3ATではなく5MT仕様を選べば、燃費もそう悪くはない。さらにいえば「スバル」という硬派なブランドイメージも、孤高を気取りたい我々釣り師にはベストマッチかと思っているのだが、どうだろうか。

軽自動車新規格適合車となった旧型(6代目)サンバー系各モデルの中古車相場は、モデルや年式により上下に幅広いが、スーパーチャージャー付きの物件であっても基本的には総額100万円以下で十分探せる(2015年6月10日現在)。「近場スペシャル」な1台として、ぜひご注目いただければ幸いだ。

text/伊達軍曹