▲日産パルサー GTI-R。フロントスポイラーもボンネットに設けられたエアインテークもだてではありません ▲日産パルサー GTI-R。フロントスポイラーもボンネットに設けられたエアインテークもだてではありません

バブル期だから投入することができた?

原稿執筆時点でカーセンサーnetに1台のみ掲載されている希少車をご紹介します。今回、2014年11月21日に発見したのは「日産パルサーGTI-R」です。パルサー自体の歴史は古く、初代は1978年にチェリーの後継車、サニーの弟分として誕生しました。いうなればファミリー向けコンパクトカーとして続いています(日本では絶版、海外では“パルサー”という名称が復活)。

4代目パルサーにラインナップされたGTI-Rは、同車のイメージリーダーとしてコンパクトカーながら“武闘派”に仕上げられていました。フロントスポイラー、リアウイング、ボンネットに設けられた大型のエアインテーク、いずれもだてではありません。

2L 直4ターボエンジンは最高出力230ps、最大トルク29.0kg-mでした。このエンジンは同時期のシルビアにも搭載されたものですが、パルサーGTI-R専用の大型タービンを採用していましたし、同時期のスカイラインGT-Rで培われた吸排気技術が生かされています。

5速MT、フルタイム4WDという組み合わせで、RC参戦が当初からもくろまれていました。GTI-RはグループAのホモロゲーションモデルだったわけです。“WRCで頂点を取ればパルサーが売れ、日産車が売れ、日産のブランドイメージアップにも一役買う”と見込んだのでしょう。ぶっちゃけ、バブル期だったから成し得たことです(笑)。

▲写真で見るかぎり、20年前とは思えないほどきれいな状態に見受けられます。走行5万5000km、ワンオーナーですから大事に保管されてきたのでしょう ▲写真で見るかぎり、20年前とは思えないほどきれいな状態に見受けられます。走行5万5000km、ワンオーナーですから大事に保管されてきたのでしょう

ただWRCでは熱問題がつきまとい、大きな結果を残すことはありませんでした。そして日産は早々にWRCから撤退し、力のそそぐ方向をル・マン24時間へシフトしました。臆測ではありますが、恐らくパルサー4代目がほぼ完成した頃に、後追いでGTI-R開発の話が出たのではないでしょうか。そのためGTI-Rに適した設計をしきれなかったのではないか……、個人的にはそこに因果を感じてしまいます。

そういう意味では、無理に作ったハイパワーモデル、と解釈できなくもありません。今、230psと聞くと大したことありませんが、パルサーGTI-Rは0→100km/h加速5秒台、最高速度230km/hオーバーという性能に世界を震撼させました。当時のスタンダードで言えば、度胆を抜かれるような車でした。

▲全長は4m以下に抑えられ3975mm、ホイールベース2430mm、車両重量はたったの1230㎏です。これに230psの2Lターボエンジンですから凄いです ▲全長は4m以下に抑えられ3975mm、ホイールベース2430mm、車両重量はたったの1230㎏です。これに230psの2Lターボエンジンですから凄いです

当該中古車、新車時価格が240万円前後だったことを踏まえると、新車時登録から20年が経過して総額152.6万円は高く感じるかもしれません。でも、もうほとんど見かける機会はありませんし、ワンオーナー、走行5万5000kmであることを鑑みれば、やむを得ないでしょう。もはや、お買い得か否かではなく欲しいか欲しくないか、という世界です。

バブル期、日本は“踊った”とネガティブな表現がされますが、恩恵としては突拍子もない、こんな弾丸ホットハッチが生まれる土壌があったことも事実です。ノスタルジーに浸りながら、コツコツ手を入れていくのも楽しい相棒となることでしょう。いずれネオクラシックカーとして世界が注目するに違いない、世にも奇抜な車です。

とにもかくにも、まずは物件詳細、ご覧になってみてください!

■本体価格(税込):139.9万円■支払総額(税込):152.6万円
■走行距離:5.5万km ■年式:1994(H6)
■車検:2015(H27)年8月 ■整備:別 ■保証:無
■地域:神奈川

text/古賀貴司(自動車王国)