▲ラジエーターグリル上部が波打つ「フルーテッドグリル」や、メッキドアミラーカバーがデイムラー車のポイント ▲ラジエーターグリル上部が波打つ「フルーテッドグリル」や、メッキドアミラーカバーがデイムラー車のポイント

フェラーリF40よりも生産台数が少ないデイムラー スーパーエイト

原稿執筆時点でカーセンサーnetに1台のみ掲載されている希少車をご紹介します。今回、2014年8月26日に発見したのは「デイムラー スーパーエイト」です。英語のつづりは「Daimler」。ガソリンエンジンの生みの親であり、ダイムラー・ベンツ社の共同経営者でもあったゴットリープ・ダイムラーと同じつづりなんです。

偶然? いえいえ、偶然ではありません。1890年、フレドリック・シムズ(当時29歳)というイギリス人ビジネスマン(エンジニア出身)が、友人であったゴットリープ・ダイムラーおよびダイムラー・ベンツ社の前身であるダイムラー・モトーレン・ゲゼルシャフト社から、イギリスおよびカナダ以外の大英帝国圏でのダイムラーのガソリンエンジンにまつわる特許、製造・販売権を獲得。

そして、1893年、ダイムラー・モーター・シンジケートが設立されましたが、その3年後に別のイギリス人ビジネスマンに買収されてダイムラー・モーター・カンパニーとなったんです。ちなみにフレドリック・シムズはダイムラー・モーター・シンジケート売却後、ダイムラー・モトーレン・ゲゼルシャフト社の役員となりました。

ダイムラーはドイツ語読み、デイムラーは英語読み。深い関係のようで浅い関係ですが、自動車史上における面白い話ではあります。

さて、歴史話でページを割いてしまいましたが、今回ご紹介するのはそんなデイムラーの“最終”モデルです。

▲現在、生産モデルがなく“休眠中”のデイムラーの車ですから、それだけで個性的。この代(XJシリーズ、デイムラー車)から走りも非常に良くなりました ▲現在、生産モデルがなく“休眠中”のデイムラーの車ですから、それだけで個性的。この代(XJシリーズ、デイムラー車)から走りも非常に良くなりました

デイムラーは1960年にジャガー傘下に収まってからは、ジャガーの「バッジエンジニアリング」モデルを投入しています。スーパーエイトは、ジャガーXJシリーズ(旧型)の最上級モデル「スーパーV8L(ロングホイールベースモデル)」がベースの高級仕様車です。

象眼細工が施されたバーウォールナットのウッドパネルや、デイムラーのロゴが配されたヘッドレスト、フルーテッドグリルと呼ばれるラジエーターグリルやホイールに配された「D」のロゴ……。新車時価格は1680万円でベース車両よりも160万円高い設定でした。要はジャガーXJシリーズの最上級モデルをもっと高級にした感じです。

▲象眼細工が施されたバーウォールナットのウッドパネルや、デイムラー車ならではの本革シートのステッチ細工は、工芸品レベルです ▲象眼細工が施されたバーウォールナットのウッドパネルや、デイムラー車ならではの本革シートのステッチ細工は、工芸品レベルです
▲どういうシーンで使うのかいまだ想像ができませんが、ピクニックテーブル付きです。これが英国高級モデルの証かも? ▲どういうシーンで使うのかいまだ想像ができませんが、ピクニックテーブル付きです。これが英国高級モデルの証かも?

搭載エンジンは4.2L V8スーパーチャージャー付きで最高出力406ps。アルミモノコックボディにより、ライバル(M・ベンツSクラス、BMW7シリーズ、レクサスLSなど)よりも軽い車両に仕上がっています。

見栄えは旧型XJかもしれませんが、見る人が見れば分かる超高級モデルです。8年落ちとはいえ、現行モデルの高級車と並んでも見劣りしませんし、走りだって何ら文句のつけどころがありません。300万円台前半で買える新車よりも、満足度は上だと個人的には思います。

ちなみにこのスーパーエイト……。853台しか世に送り出されませんでした。そういう意味ではフェラーリF40よりもレアな車ですし、ぜひ物件詳細をご覧になってください。デイムラーでは珍しい黒外装、黒内装、かなり渋いです。昔ながらのインテリアの集大成のような雰囲気が漂っていますよ。

■本体価格(税込):328.0万円 ■支払総額(税込):---万円
■走行距離:4.9万km ■年式:2006(H18)
■車検:2015(H27)年4月 ■整備:別 ■保証:無
■地域:埼玉

text/古賀貴司(自動車王国)