【伊達セレクション】異端の中古車評論家・伊達軍曹、BMWの「Mスポーツ」を推す
2014/03/18
「車に詳しい人」が陥りがちなひとつの罠
中古車を買うならスポーツグレードはやめたほうがいい?
いわゆる「車に詳しい人」がよく言うセリフに、「中古車を買うなら、なるべくショボいグレードのほうががいい」というのがある。たとえばBMW3シリーズでいうならば、ワイドなタイヤとハードめのサスペンションを組み込んだMスポーツパッケージではなく、細めのタイヤとコンフォートめのサスを採用した素の4気筒モデル、ということだ。
なぜ、いわゆるカッコいいスポーティグレードではなくてオッサンくさい(?)グレードを勧めるのかといえば、車に詳しい人の言い分はこうだ。
「Mスポーツとかはさ、新車のうちはいいんだけどさ、距離を乗っているうちにハイグリップなタイヤとか硬めのサスとかの影響でボディやら何やらがヤレてきちゃって、結局はイマイチになっちゃうんだよね。機械としての旬は短いというか。その点ショボいグレードのは元来非力なもんだから各部がヤレにくくて、本来の乗り味を長く楽しめる。だから俺は断然そっちを選ぶし、Mスポーツとか中古で買うなんざ、俺から言わせりゃド素人だね」
この「車に詳しい人」の言い分には、たしかに一理ある。筆者の取材経験からいっても、現在流通しているMスポーツがどれぐらいヤレているかはさておき、一般論としてはショボいグレードのほうが、ド中古車となって以降は確実に地力のようなものを発揮する。
仕事で試乗する際にも「この車、年式的にはかなり古いけど、いいね!」と思うのは、たいていオッサンくさいグレードだ。だから筆者も「車に詳しい人」の言っていることは理解できる。
しかし、「車に詳しい人」は、ひとつの重大な事実を見落としている。それは「人は車のみにて生きるにあらず」ということだ。より正確に言えば、人は車の“走行性能”だけを気にして生きているわけではない、ということだ。
そもそもドライビングプレジャーとは何なのか?
しっとりとしたステアフィール。いわゆるリニアなハンドリング。路面からの入力をしなやかにいなす足回り。……自動車雑誌の試乗評価などでしばしば触れられるそういったポイントも、当然重要ではある。しかし決してそれだけではないのだ。
駐車場に行き、愛車を眺める。
BMWの、ちょっと車高の低いMスポーツパッケージだ。
「……何度見てもやっぱカッコいいな、オレの車……」とひとりごちるプレジャー。
乗り込んで走り出し、足回りがちょっとゴツゴツした感じになり始めたかな……などと思いつつも、前方を走る大型ガソリントレーラーの背面に映る自車のフォルムに「やっぱ買って良かった……」と見とれるプレジャー。
そのまま人に会い、「○○君のビーエム、やっぱカッコいいね」と言ってもらえるプレジャー。
ドライビングプレジャーとは、そういった広義のものを含めてのプレジャーであるはずだと、筆者は確信している。
であるならば、仮に「車に詳しい人」が言うとおりMスポーツなどのヤレが若干早かったとしても(実際は一概には言えないと思いますけどね)、それでもあえてMスポーツならびにそれに類するグレードを選ぶ価値は大いにあるはずなのだ。
前置きが長くなってしまい申し訳ない、本稿の趣意は以下の1行である。
「車に詳しい人」の話など気にせず、欲しいモノを買いましょう。
ということで今回の伊達セレクションはずばり「BMW3シリーズのMスポーツパッケージ」だ!
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