原稿執筆時点でカーセンサーnetに1台のみ掲載されている希少車を紹介するこの企画。今回、2013年3月6日に発見したのは「日産 ダットサン16型セダン」です。かつて日産の小型車ブランドであり、車名でもあったダットサン。およそ30年前に廃止されたブランドですが、2014年から新興国向けの低価格ブランドとして復活するようです。これでインフィニティ、日産、ダットサンで松竹梅が揃うことになります。

さて、このダットサン16型セダンは1937年式。博物館収集レベルの車です。ちょうどこの年、日中戦争が始まり、自動車産業は時代の波に飲み込まれて(乗用車よりも軍用車生産に重きが置かれた)いったそうです。なおこの車、執筆時点でカーセンサーnetに掲載されている国産最古の中古車です。

車のサイズは全長3120㎜、全幅1190㎜、全高1600㎜、ホイールベース2005㎜、車重630㎏。搭載しているエンジンは722ccで最高出力16psです。まぁ、スペックを羅列してもしょうがないのですが、76年前の車は“この程度”だったようです。

新車時価格は、昭和12年当時で2100円でした。この頃の小学校教員初任給が55円程度だったそうですから、ボーナス抜きで考えれば年収3年強分の価格です。今の感覚で言えば800~900万円くらいでしょうか? ダットサンってリーズナブルな価格帯のブランドなはずですが、当時は高級だったんですね。

気になる当該車両の価格は470万円。高いか安いかは人それぞれでしょうが、現存台数の少なさを考えればやむを得ないのでしょう。歴史的価値から言えば、これでも安い可能性だってあります。ヒストリックカーレースにだって出られるでしょうし、このまま動態保存してもありがたみがあります。それにしても当時の人々は、まさかタクシーとして使われていた車にこんな価値が付けられるとは思ってもみなかったでしょう。

古い車の良いところは何か。それは、歴史の一ページを担っている“重み”があるところです。もちろん、どんな中古車にも歴史があるわけですが、76年前の車ともなると……。日本の自動車産業における黎明期の1台と呼べるでしょう。祖父母たちが見てきた、乗ってきた車です。過去がなければ現在はなく、現在がなければ未来もありません。最近、歳をとってきたのか、そんな当たり前のことに深く感銘を覚える次第です。

もちろん可愛らしいルックスにほれる、というのもアリだと思います。いずれにせよ国産車でこれだけ差別化を図れる車は他にないといっても、過言ではないと思います。

Text/古賀貴司(自動車王国)

日産 ダットサン16型セダン | オンリーワンを探せ

日産 ダットサン16型セダン

本体価格(税込)470.0万円
支払総額(税込)万円
走行距離2.2万km
年式1937年(S12)
車検
整備別(8万5000円)
保証
地域東京