【オンリーワンを探せ】戦後初のプジョー大型高級FRセダン
2012/12/11
原稿執筆時点でカーセンサーnetに1台のみ掲載されている希少車を紹介するこの企画。今回、2012年12月6日に発見したのは「プジョー 604」です。1975年から1985年まで生産された、プジョーにとっては久しぶり(第二次世界大戦後初)の大型高級FRセダンでした。フランスの大統領専用車として活躍したのはもちろん、ローマ法王車両としても用いられました。
ベースになっているのは当時のプジョー・ミドルクラスサルーン「504」で、プジョー、ルノー、ボルボが共同開発した、いわゆるPRVエンジンを搭載しています。最近でこそ部品共用化が話題になりますが実は昔から行われていたんです。デザインは、イタリア最大のカロッツェリア(自動車製造所)「ピニンファリーナ」によるもので、きわめて“控えめ”。プジョーとしては、いうなれば“M・ベンツE250のような技術、BMW5シリーズのようなスポーティさ、そしてジャガーXJ6の乗り味”を楽しめる車として売り出したかったようです。
Aピラー、Cピラーの角度はきつめで、車内からの見晴らしは素晴らしく、室内の広さも抜群。ふかふかのシートに腰を下ろすと、この頃のプジョー独特の“癒し”すら感じられる落ち着いた雰囲気に浸れます。ストロークたっぷりめの4輪独立懸架式サスペンションは、まさに元祖“猫足”。柔らかくしなやかに路面の凹凸を吸収しながらも、粘り強く路面に吸い付くような走りを満喫できます。商業的にはイマイチでしたが世界中が絶賛する乗り味でした。
販売店のホームページを見ると、この604はかつてプジョーの輸入元だった西武自動車がミュージアムを作るためにコレクションしていた車両だったようです。しかも販売店が引き取ってから10数年間、保管され続けてきたとのこと。輸入車販売店がコレクションに値すると見越していた車なんて、今後中古車市場に出回る機会もそうそうないでしょうし、見つけたときが購入のチャンスと言っても過言ではありません。
老若男女問わずどんな方が乗っても、オシャレでユニークなネオクラシックカーと周囲の目に映ることは間違いありません。個人的には、1980年生まれの方が「生まれ年の車買ってみました」という“粋”なノリが素敵だと思います。
Text/古賀貴司(自動車王国)