知的でお洒落な女性のニーズをとらえた プジョー 307SW【懐かしのコンセプトカー】
カテゴリー: クルマ
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2010/03/26
プジョー 307SW(2001年フランクフルトモーターショー)→307SW(2002年)
プジョー307SW(ショートワゴン)は、2001年9月にドイツで開かれたフランクフルトモーターショーにコンセプトカーとして出展された。その後10月の東京モーターショーでも、参考出展されていた。
東京ではプジョーブースで、まさにメインとなるターンテーブルに307SWが鎮座していた。その後2002年にほとんど変わらない形で、市販化となったところを見ると、最初から市販化目的のコンセプトカーだったといえよう
307シリーズの決定打として展示
2001年のフランクフルトでデビューしたコンセプトカー307SWは、続いて東京モーターショーで参考出展された。プジョーブースでは、ほかにもウッド調パネルやベロア地など上質なインテリアのコンフォートモデル307XT、307シリーズのトップグレードである307XSiなど、307シリーズがメインの展示であった。
実はこの東京モーターショー開幕直前に、307シリーズが日本国内デビューしたばかり。なかでもこのSWがメインステージに飾られ、まさにプジョーの目玉車的な存在であった。
開放感のあるパノラミックガラスルーフに、自由なレイアウトができる3列7席モジュールシートなど、どこをとっても「自由の国フランス」を容易にイメージできる、訴求力のあるコンセプトカーだった。とくに、日本ではプジョーが若い女性に人気であることから「国産は庶民臭いけれど、プジョーブランドのミニバンだったら、お洒落でステキ」と、注目を集めていた。展示車は左ハンドルのMT車であったことから、フランス本国仕様車もしくは欧州大陸仕様車だったようだ。
欧米と日本のミニバン作りの差異
2002年8月にコンセプトカーと同名で日本デビューした307SWは、「ショートワゴン」というジャンルになっている。これはわかりやすく表現すれば、ホンダ ストリームやトヨタ ウィッシュなどの「乗用車派生系」ミニバンである。市販化された307SWは、ショー展示モデルと基本的な違いはなく、日本の保安基準に合わせるための細部の手直ししかされていない。
コンセプトカー同様に「パノラミックルーフ」と3列シート7名乗車がウリであったこのSWのほかに、ステーションワゴンの「ブレーク」もラインナップされており、307はハッチバック、ブレーク、SW、そして中国などではセダンもあり、かなりワイドなバリエーションをもつ車であった。
ハッチバックに比べ、ホイールベースがプラス110mm、全長はプラス220mmとなるボディサイズは、全長4420×全幅1760×全高1555mm。2L直4DOHCエンジンに4速ATが組み合わされていた。モノグレード設定で新車時の価格は276.0万円。
当時は、日本車が複数ボディタイプの融合モデルで、世界的に存在感を示していた。融合モデルとは、「クロスオーバー」や「ミニバン」など、セダンやハッチバックといった、それまでの確固たるボディタイプとは一線を画し、複数のカテゴリーをまたいで製造されたようなモデルである。
もともと合理的にパッケージングされていた欧州車では、ハッチバックやステーションワゴンで十分に事足りていた。しかし、欧州でも日系メーカーのクロスオーバー車やミニバンが登場し始めると、消費者も「なかなか便利そう」という発想になるものだ。当時は、まだまだ有望な市場の一つだと認識されていた日本でミニバンが大ブレイクしていたのも、少なからず影響していたはずだ。
日本車と欧米のミニバンの大きな違いはシートアレンジ。当時の日本車はより多くのシートアレンジパターンを確保しようと、シートバックの高さを低めにするほか、座面の幅を短くする傾向があった。つまり、着座感は二の次になってしまう傾向が強かったのだ。一方、欧米のミニバンは、「きちんと座れて、疲労が少ない」ことを第一にパッケージングするので、アレンジパターンは少ないが、大人でも、しっかり座れるシートとなっており、大柄な外国人男性からも評価が高い。
しかし日本では、プジョーにおいてはそれまでのメインユーザーが、知的でお洒落な若い女性であった。そのことから、安定した着座感については注目されにくく、それよりもブランドイメージのほうが勝っていた。なにしろ、80年代後半にはプジョーのカブリオレが日本に入ると、若い女性が購入してあっというまに売り切れになる、という現象もあったほど。例えば206も、コンパクトかつお洒落なデザインで、若い女性を中心に大人気であった。
独身時代にプジョーでお洒落なカーライフを送っていた女性が、家庭をもつ時期に投入されたのも幸いしたのか、またSWは日系メーカーのミニバンに漂う「庶民臭さ」を、プジョーらしく消し去られていることもあって、根強い人気があった。307SWは、2005年末に大規模なマイナーチェンジを行い、顔つきが大きくシャープになるなど、幾度かの変更を経ながら、2008年まで日本で販売されていた。